ハイビスカスを接ぎ木する時は台木と穂木の太さが近い方が接ぎ木が行い易いし活着率もよいですよね。
台木に対して穂木が細い場合は普通の接ぎ木方法で行うと私の場合はウデのせいか、いまいち成功率がよろしくないです。
色々と実験した結果、今回説明する方法(剥ぎ接ぎ)が成功率が非常に高くなるのが確認できたので公開します。ただし、制約がありまして・・・

1.台木が成長期でないと樹皮が形成層部分で剥げないので期間

    が限定されます
  5月末~6月末。9月中~10月中くらいが適期になります
2.穂木は枝の先端をつかった方が成功しやすいです。 
  成長期に接ぎ木をするので成長点を持っていた方が良いのだ

    と思います。

それではご説明します

1.穂木
イメージ 1太さは4mm以下くらいでも十分に接ぎ木できます
今回の穂木は少し短いです。あと5cm位長いとベストな感じです

2.台木イメージ 2
ホームセンターで仕入れてきたばかりの苗です。 ちなみに品種はアマンでした。
台木は年数が経った幹ではなくて若い方が形成層の動きが活発なので適してます

3.台木の処理

 

イメージ 3

地上5cmくらいで切断します。
切断後は数分間待って、切断面から樹液が上がってくるかを確認します。
成長期なので樹液の上がりが多いと接ぎ木テープを巻いた後で内部が樹液で過湿となり腐りやすくなるので、樹液の上がりが多い
場合は、このまま1時間程度放置してから作業に入った方が
良いです。
もしくは前日に台木を切断しておくと待つ手間が省けます。

 

 

 

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台木の切断面を接ぎ木ナイフで切り直し、なめらかにしておきます

4.穂木の処理

 

 

 

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大きな葉は通常の接ぎ木同様に除去しますが、穂木が若い場合は葉を葉柄の基部から無理に折り取ろうとすると芽の元まで
取れてしまう場合があるので
取りにくい場合は葉柄の途中で切り取ります。
(ピーズパープルなどふだんから葉を折り取りにくい品種は要注意ですこれは通常の接ぎ木の場合でも有効です)
穂木先端の小さな葉っぱは残しておきます。

接ぎ木側は通常の接ぎ木同様にくさび形に仕上げます。
切断面の長さは15mmくらいです。
イメージ 6クサビの両側面も樹皮にかかる程度に切り取ります。
今回は穂木の表面がデコボコなので行いましたが、表面がなめらかな品種の場合は行わなくても大丈夫です

5.台木の処理2

 

 

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穂木の幅で縦に2箇所、切り込みます、10~15mm位です

 

 

 

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切り込み終えたら、接ぎ木ナイフの先や爪楊枝などで樹皮を軽く剥がします
この時、簡単に樹皮が剥がれる様でないといけません

6.穂木の差し込み

 

 

 

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穂木を台木の剥がした樹皮の内側に差し込みます
奥までしっかりと差し込んで隙間が出来ない様にして下さい。

ちなみに台木が十分に太い場合は1本目を接ぎ木した反対側にもう一本
、保険
として
接ぎ木しても大丈夫です。
本来は後で伸びの良い方を残して一本を切るけど、お遊びで違う品種を接いでも
楽しいかもしれません。

7.接ぎ木テープで固定

 

 

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写真の様に接ぎ木テープで下から上に向かって巻き上げて固定します。
今回はニューメデール
テープを使用しています

 

 

 

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樹液の上がりすぎが心配な場合は写真の様に台木部分に少しだけ切れ目を入れて樹液が逃げる様にします
そのままでもOKですが、切れ目が気になる方は接ぎ木後、2~3日経過して
樹液の滲み出しがなければ癒合剤で接ぎ木テープの切れ目をふさげばOKです

8.袋かけ

 

 

 

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針金などで支えを作ってから・・・

 

 

 

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袋をかけて湿度を保つ様にします。
支えは割り箸等、水を吸う物だとカビが生えたり腐ったりするので注意して下さい。

このまま直射日光が当たらない暗めで風が当たらない場所で様子を見ます。
水は接ぎ木前日に与えてあれば2週間程度は与えなくて大丈夫です。

穂木に残っている葉柄が黄変して落ちるのは正常な生理現象で順調な証拠なのでよいのですが袋の中でカビが出る場合があるので、その際は慎重に袋を外して該当物をピンセットなどで
取り除き、再び袋をかけます。

接ぎ木後2週間程度で芽が動き出すので、芽が動き出して2週間程度経ってから袋のスミを少し切り取って様子を見ます。
穂木に萎れた感じがなければ、以降は2~3日間隔で袋の穴を少しずつ大きくして外気に馴化させていきます。一月位かけて行うとよいみたいです。

以降の管理は普通の接ぎ木と同じなので、皆さんの栽培環境に合わせた管理をしてあげて下さい。

作業できる季節に制限があるけど成功率が高い接ぎ木方法なので細い枝でも捨てられない方(僕だけ?)はお試し下さい。

 

 

 

 

追記


接ぎ木後の成長過程

第一次成長段階
接ぎ木後はまず台木と穂木の接合部が細胞分裂してカルスで隙間を埋めていきます。
その後、双方の形成層から連絡形成層が伸びていきます。
この段階では台木の導管経由で水分の供給のみが行われているので穂木は自身が持っている養水分に加えて台木からの水分を使い芽が伸び始めます。
つまり穂木の限りある養分は接合部の修復と新芽の成長の両方に使用されている
ので効率が悪いです。ここまでが接ぎ木後の第一次成長です。

そこで落葉果樹など冬季休眠する樹種を接ぎ木する場合は穂木は厳寒期に採穂してビニール等で保湿して冷蔵庫等で低温状態で休眠状態を保ったまま保存します。
そして春になり台木が活動を開始して新芽を伸ばす為に水を吸い上げ始めた時期に冷蔵保存してあった穂木を用いて接ぎ木を行います。
穂木はしばらくは冬眠状態なので穂木の持つ養分は接合部の修復癒合のみに使われます。
2週間程度経過すると穂木が休眠から醒めて新芽を伸ばし始めますがそのころには接合部の癒合が進んでいるので今度は台木の師管経由で供給される養も使い穂木は新芽を伸ばす事が出来ます。
おそらく経験則なのでしょうが、ここまで技術を磨き上げた先人の知恵はすごいですね。


第二次成長段階
その後はお互いの連絡形成層同士が繋がり台木と穂木が一体化し穂木の芽の伸張が進み大きく成長を始める。
この状態になると穂木の葉で光合成して作られた養分が台木側に降下し、台木も根を伸ばし始めます。
この状態が第二次成長でここまでくれば接ぎ木は完全に成功した状態です。

接ぎ木後、穂木からある程度まで新葉が伸びたのにいきなり萎れて失敗に終わる場合は形成層が繋がらず養水分の補給が間に合わず穂木が自身の養分を使い果たし枯れるものと考えられます。(台木側のみが枯れるのは別の原因)


ハイビスカスの場合ですが常緑樹で穂木は休眠状態ではないので穂木の持っている養分は接合部の成長と新芽の成長両方に使用されています。
接ぎ穂が細いと接ぎ木の成績が悪いのは穂木の養水分が少ない上に養水分の
利用効率が悪いからだと考えられます。

細い穂木の場合、自前の養分が少ないので早めに癒合して形成層が繋がらないと穂木が死んでしまいます。
剥ぎ接ぎだと穂木/台木お互いの形成層の接触部が多いので成功率が高いのだと考えています。

下のリンクから参考資料がダウンロード出来ます。
接ぎ木手順(剥ぎ接ぎ)