さて、前回までで自分が初めて丸坊主にされていった日の衝撃と、自分の同級生のうちイケメン君の思い出を語ったが(イケメンじゃない子は記憶にも残っていない...って、鬼畜だ、俺は...!)、高校受験というものがあるので自分もそのうち塾なるものに通うことになった。

結局、結論から言うとお公家さんの血を引く、斎藤佑樹似のケンゴ君と同じ高校に行くことになるのだが、意外にケンゴ君とはその後、交流は無かった。小1で同じクラスになって以来、結局、大学まで同じ学校になったのに...。

話を戻すと、西宮北口にある阪神間では当時最大手で、神戸・阪神地区の私立高校に最多合格者を輩出していた塾が、まあ無難だろうということで通うことにした。
が、ここが盲点で、神戸市以外の地域は別に丸刈りの校則では無かった(学校によっては丸刈りだったが少数派)ので、西宮や宝塚、芦屋などの生徒はみなフサフサの黒髪だった...!

最初に登校した日、俺の五厘刈りの頭を見た他の子は、「君は神戸から来たんやな?」と一発で見抜かれた...なんで三宮や元町など、県で一番の都会の神戸がこんな田舎臭い頭にされて、高級住宅街ではあるが(実は西宮や宝塚、芦屋もそうではない地区も多いことをこの後知るが)、特に高層ビルもない都市の連中に引け目を感じなあかんのや! と内心思ったが、まあ、いい奴が多かったし、基本は勉強に来ているところなので授業が終わるとさっさと帰る場所なので、そう苛められることも無かった。

その時、自分の前の席に座っていた男の子は、セイジ君とまたタイプの違う顔ではあるが、目つきは鋭く、唇はむしろ分厚く、顔のパーツ一つ一つは決して繊細に整っているわけではなかったが、鼻は高く通っていたし、耳は俺ほど大きくはないけれどいわゆる立ち耳で、肉厚の耳で、顔全体としては不思議に端正にまとまっていた、男らしい精悍な顔立ちの少年だった。髪は黒くサラサラの髪で、真ん中分けで、でも耳の周りは刈り上げて、いつ見ても決して耳にかからず(後で知ったが、彼の家は何と床屋さんだった...いつも綺麗に散髪し立ての髪でいられるわけだ!)、服装もGジャンが多かったが、中学生だしそう高い服を来ているわけではないが、いつもセンスのいい服でなかなかお洒落だった。

タカノリ君というその男の子と、この塾は2ヶ月ごとに成績順にクラス替えがあって、自分も3年の終わり頃にはかなり上の方のクラスに上がっていたが彼も最後も同じクラスで、結局、3年間の殆どの時期を彼とは一緒に過ごすことが多かった。
自分としては、野性的でありながらとても都会的な香りのするその男の子に憧れて過ごすことになる...。

だが、自分やケンゴ君、セイジ君らはが高校に上がると髪を伸ばし始めた(但し、セイジ君はその後も部活で何度か丸刈りにさせられることがあった)のに対し、そのタカノリ君の進んだ高校は、全寮制で何と高校も全員丸刈りの校則の学校だった...!

本当は、タカノリ君はその学校よりも1ランク上の学校に進みたかったようだが、合否ギリギリのラインだったので泣く泣く安全圏のその学校を選択したらしい...。

俺達にとっては12の春が丸刈りの試練を味わう時期だったが、タカノリ君にとっては15の春が、丸坊主の辱めを味わう時期だった。
しかも中3ともなるとそれなりにお洒落もしていて、特にイケメンでお洒落で、地元の中学では成績も学年トップクラスで、スポーツマンで女子にも人気の高かったタカノリ君がいきなり丸坊主になるのは、さぞ辛かったことだろうと思う(というか、二人で話していると本人はいつもはっきり「坊主になりたない!」と俺に愚痴ってた...)。

しかし、その高校に合格して、でもプライベートでも仲良くなった俺達は春休みにも会う約束をしていたので会うと、タカノリ君は服装はいつものGジャンのままだったが、頭は見事なクリクリの青い頭に変身していて、大きな耳が丸出しで、3年前にセイジ君が初めて丸坊主になった日以来の興奮を感じた。この時、最後に刈った日から2ヶ月近く経った俺は既にスポーツ刈りくらいの長さまで伸びていて、今までと逆転したのが明らかだった。

でも、俺がタカノリ君の精悍な青いクリクリの五厘坊主頭を絶賛し続け、頭を撫で回しているとタカノリ君もやや安心したようだった。
「タカノリ、坊主の方が前より男前やん!」とあながちお世辞ではなく、本心から俺が言っていることは彼も分かっていたと思う。

自分とケンゴ君が進んだ学校は、レベルは実は彼の高校と同じくらいだったが、髪型どころか制服も無い、自由な校風だった。
同じくらいの成績なのに彼がそういう目に遭うのが不憫なのと、でも彼の凛々しい坊主頭がこれから続く、いけない歓びもあって、自分も複雑な思いだった。

ちなみにタカノリ君はその後、東大に合格したのだが、3年間は本当に未練を髪と共に断ち切って、勉強だけに打ち込んだのだろうなあ...。自分としては、セイジ君と並んで今でも絶対に忘れられない友達である。
(友達というか、セイジ君とこのタカノリ君は、肉体関係も持ったので恋人でもあった。もちろん、親友というのも嘘ではないし、親友と言えるのは今までの人生においても、セイジ君とタカノリ君の他は、社会人で同僚となった1人だけである。なお、セイジ君はマグロの養殖で有名な、関西私大のK大にその後進学し、今も神戸に住み、働いている)

もちろん、高校生の彼の坊主頭もまた、未だにオカズにさせてもらっているが...。
あのプライドの高い彼が、親父さんの手で黒髪を刈られていくとき、俺やセイジ君とはまた違った苦悩を味わいながら、バリカンの感触を感じていったのだろうなあ...と思う。

高校時代は五厘どころか、自ら進んで剃刀で頭をツルツルに剃ってもらうことも度々あったようで、何度か自分もツルツルのスキンヘッドの彼に会ったことがある。
もっとも、ツルツルに剃られた坊主頭の彼は、非常に格好良かったし、セイジ君と並んで絶品の美坊主で、自分の中ではセイジ君とタカノリ君が未だにベストの坊主頭で、オカズにさせてもらっている...。