鏡の前でやや放心状態の俺を尻目に、おじさんは俺の頭をブラシで撫でて頭に残った髪を払いのけていく...その、ブラシの毛が地肌に直接当たる感触に、またしても俺は泣きそうになった。

そして白いケープを外し、前の洗面台に頭を差し入れて頭を洗ってくれたのだが、お湯が直接頭皮に当たる感触が、心地良さもあるがやはり情けない気持ちでいっぱいだった。そして洗い終わり、今までだとタオルで髪を拭いていたのに、これまたタオルが直接地肌に当たる感触が、ああ、俺はもう完全に今までの自分とは違ってしまったんだな...と嫌でも自覚せざるを得なかった。

でもおじさんは非常に上機嫌で、タオルで俺の頭を拭き終わると、俺の耳の穴もタオル越しに指で拭ってくれながら、「いやあ、テツヤ君はきっと丸坊主が似合うと思ってたけど、やっぱりいいねえ! 坊主頭だと少し大人になったようで、男らしいし精悍に見えるよ! 男前だとどんな頭でもやっぱり男前なんだねえ...!」と、坊主頭の俺をあながち商売文句だけとは思えない口調で、やたら絶賛してくれた。

でも、椅子から降りてシャンプー用のケープも外され、いつもの服装に戻った自分の姿は、服は今まで通りのアメカジ風のシャツでも、頭は青いクリクリの坊主頭で、服装が同じだとその頭の変わりようが一層強調されて見えた。

そして、店を出ようとすると、入れ違いに入ってきたのが、よりにもよってセイジ君だった...。こんな恥ずかしい頭の俺を、親にもまだ見られていないのに真っ先に見たのが、彼になるとは...!