こんにちは、初めまして。コスプレイヤーのこっこです。

 正確に言うとこのブログオーナーのたまひ代の別名義です。同じ人です。ご不便をおかけします。

 今日は百合作品用の名義「こっこ」で記事を書こうと思います。

 

 この記事はやが君アドベントカレンダー12/21の記事になります。

 

 日々素晴らしい作品、考察が公開される中かなり異色の記事を公開することになりそうですが、コスプレイヤーならではの視点ということで、皆様とはまた違った切り口のお話を提供出来たらなと思います。

 

 私の記事のテーマは「朗読劇ささつの友澄女子制服のつくりについての覚書」です。

 

 

 

 今秋「やがて君になる 佐伯沙弥香について」の朗読劇を観に行きました。

 内容に触れてしまうと記事に収まりきらないので割愛するとして、偶然良い座席をいただくことが出来ましたので、間近でその衣装の作りをじっくりを確認して参りました。

 

 以前別の作品で舞台のコスプレをすべく舞台衣装を再現 したことがありましたが、二次元を三次元にするコスプレとは異なり製作難度はぐんと上がります。舞台衣装というのは全て「実在する」生地で「実現可能なパターン」で制作されているので、一切ごまかしがききません。

(※パターン:型紙のこと)

 

 そのため舞台の衣装を再現するためにはいかに実物を見て確認できるかというところが肝になってきます。

 今回は特に製作の予定はなかったのですが、良席だったので製作する心づもりで観察してきました。

 

1,全体の印象

 シワになりにくいポリエステル生地が主に使われているようでした。軽すぎず厚すぎず制服らしさがよく出ていて素晴らしいなと思います。完璧です。ありがとう(ありがとう)

 襟は接着芯を使用し身頃と共布を使用しているようです。襟のかっちりした感じも私学の制服っぽくお金かかってそうで最高ですね。ありがとう!

 スカーフ生地は実在する一般的な制服に比べて少し硬めのサテン生地を使用していました。型崩れしないよう意識されていたものと思います。

(※共布:同じ布のこと)

(※身頃:上の服の胴回りを含む部分)

 

2,詳細で気がついたことなど

 まずは身頃から見ていきます。一般的なセーラー服のパターンで製作されているようでした。前身頃、後身頃をあわせてダーツが入っているのは前身頃のバストラインのみ。左胸のポケットはダーツと場所が被っており上から縫い付けられていました。ダーツの上からポケットをつけるのは結構大変なんですがプロの仕事はたいへん綺麗ですね。裾はステッチが見えていなかったので、裏からまつり縫いをしているものと思います。スカーフの中央の留め部分は身頃には固定されていないタイプでしたね。ポケット上の校章か何かは朗読劇では省かれていましたが、全体的に原作がほぼ再現されていました。

(※バストライン:バストトップを通る横のライン。ここでダーツを入れると胸から下が膨らまずスッキリしたシルエットになる)

(※ダーツ:布を折りたたんで詰めて縫う部分。詰めることで以下の部分がスッキリする)

(※ステッチ:表から見える縫製部分)

 

 袖についてです。見たところ袖口が手首にピッタリ沿っていたのでおそらくどこかで開くものだろうと思っていたらやはりそうでした。袖の外側が上になるように、カフスにスナップボタンが2個ついていました。画像には書き忘れましたが、袖口はギャザーにみせかけてタックになっていると思います。ギャザーというのはシワがランダムに入りますが、一定の間隔で綺麗に入っていたので。そろそろ専門用語ばかりでよくわからなくなってきませんか、大丈夫ですか。

(※スナップボタン:ぱっちんするやつ)

(※カフス:袖口の硬めの布のこと)

(※ギャザー:ランダムシワを寄せることでふっくらさせる手法)

(※タック:シワのサイズを決めて縫う手法)

 

 スカートは右の生地が上になるプリーツで、ウェストからヒップにかけてカーブを描く一般的なパターンで縫製されており、腰回りのシルエットが綺麗に出ていました。特に磯部さんのウェストからヒップにかけてのラインが大変綺麗でしたね。採寸した上で製作しているはずなので完璧なシルエットでした。プリーツの本数までは確認できませんでしたが、およそ24本前後ではないかと思います。

 

 スカート裾はステッチされていましたね。そしてプリーツスカートを作る上で大切なのがひだのサイズと深さです。サイズはだいたい図示したとおりです。

 

 その他細かいところ。

 上衣の着脱は左脇のフラットニットファスナーでした。コンシールファスナーじゃないのかと思いましたが、そもそも一般的なセーラー服もフラットニットなんですかね?セーラー服を着たことがある方は是非教えてほしいです。ファスナーが表から見えないでほしいときはコンシールファスナーを使うことが多いです。スカートは影ひだにファスナーがあり、前ベルトが上にかぶるような一般的な縫製かと思います。これは磯部さんが左を向いたときに一箇所だけプリーツが浮いていたので間違いないかと思います。

(※フラットニットファスナー:アウターやパーカーなどに使われる表から見えるタイプのファスナー)

(※コンシールファスナー:刃が布の裏側になる、表からは存在が確認できないファスナー。ドレスやワンピース、スカートに使われる)

 

3,総評

 スタンダートな縫製でより実在性が高まってるなと思いました!!!そしてここまで情報があればいつでも作れます!!

 

4,余談

 ところで前回の舞台やが君の話も少しだけさせてください。

 遠見東高校の制服は原作でその着脱方法やパーツ分けが詳細に説明されていました。舞台の衣装はそれを忠実に再現しているかというとそうではなく、左脇ファスナーで着脱するジャンスカは背中心ファスナーに変更され、ブラウスには台襟がありませんでした。舞台では『早着替え』や『ウィッグを装着したままの着替え』対策で後ろファスナーに変更していたものと思います。台襟の有無についてはどういう理由なのかはっきりとはわかりかねますが、おそらくシルエットを重視したものと思います。胸リボンは原作では棒タイでしたが、こちらもシルエット重視で作り付けのものになっていました。

 これらの変更は舞台衣装にするときに必ず必要な作業であり、ささつでも舞台ならではの工夫があるかもしれないと思って見ていましたが一般的なパターンでしたね。逆にそれが現実みがあってすごく好みでした。

以上です。ここまでお読みくださりありがとうございました!

やがて君になる原作の遠見東高校制服の解釈と製作に関しても記事を書いていますので、ご興味のある方はこちらへどうぞ。