第333回【北原照久さんの一言から学んだ松下幸之助の凄さ】
松下幸之助さんの側近として23年間つかえ、PHP研究所の社長を務めた江口克彦さんは
ある時、松下さんから「何かないか」と電話がかかってきた
何も報告することが思いうかばず
「今日は編集部のA君が風邪で休んでます。風邪が流行っているみたいですね」
松下さんはA君のことを知っているわけではない
つまらない話しをしてしまったと思ったが、松下さんはこういう話しも真剣に聞くのだという
そして、「そうか。君な、その子に身体を大事にするように言っておいてくれるか」
となんとも温かい声が返ってきたという
出社したA君に「松下さんが、身体を大事にするように言っていたよ」と伝える
もうA君は大感激したという
『松下幸之助相談役追悼集』に松下電器で松下さんの秘書をしていた人の証言がある
本社の前で松下さんが外出するため車を待っている時に、顔見知りの社員とばったり会うことがよくあった
どんなに急いでいる時も必ず声をかけるのだという
「君元気か・・・」「最近どうや」
とにかく心から声をかける。部長、所長であれ、課長であれ、例外なく声をかける
声をかけられた社員はみんな大喜びしていたという
世界的なコレクターとして有名な北原照久さん(ブリキのおもちゃ博物館館長)とは昨年の9月に偶然にも偶然にお会いしてから交流をさせていただいています
北原さんをみていると、人の喜びが何よりも自分の喜び
このようにお見受けする
北原さんはテレビやCMにも出演していることから見知らぬ人に声をかけられることがよくあるそうです
その際は「どうしたらその人が喜ぶかいつも考える」のだそうです
そこで、北原さんに
「江口克彦さんが当資料館に来られた時の第一声が、『松下さんは何よりも人の喜びが自分の喜びだった』」
とお話ししたところ
「やっぱり松下さんもそうですか」
「でも松下さんは無意識にそう思うそうですよ」
というと北原さんは
「無意識に。やっぱり松下幸之助さんは凄いね」
「僕は喜ばそうと意識しているからまだまだだね。経営の神様には足元にも及ばない」
私から見れば北原さんも凄い人なのですが
改めて松下さんの凄さを認識したのは、何の計算もなく自然と心のこもった温かい言葉がでてくるところである
私の松下幸之助研究は松下さんの心の探究といってもいい
松下さんの言葉はあまりにも平易であるがために、その言葉の奥にある心を見落としてしまう
この松下さんの心を伝えていけるようにしていきたい
※北原照久さんと旧竹田宮様の別荘で