第331回【ついに日本の商人道の源流に到達しました】
昨年の10月に歴史エッセイストの白駒妃登美(しらこま・ひとみ)さんが当資料館にきてくださいました
松下幸之助さんがなぜ松下政経塾を設立したのかをお話ししたら
妃登美さんが、近江聖人(おうみせいじん)と称えられた江戸時代初期の陽明学者、中江藤樹(なかえ・とうじゅ)のことをお話ししてくださいました
私に中江藤樹の知識がなく、なぜ中江藤樹なのかよくわからなかった
そこで私は中江藤樹のことや陽明学のことを知りたいと思い
昨年から近代陽明学の大家である林田明大(はやしだ・あきお)先生の著書を読み始めました
ようやく林田先生の著書『【評伝】中江藤樹』が手に入り読むことができました
この著書の推薦文を書いているのが、なんと白駒妃登美さんでした
推薦文にはこのように書かれています
「世界が賞賛してやまない、日本人の道徳心。そのルーツは神話の世界にまでさかのぼるが、庶民にまで浸透したのは、何と言っても、近江聖人と呼ばれた中江藤樹の功績である。陽明学を真に理解し、中江藤樹を心から尊敬し、そして藤樹の生きた時代を正しく辿ることのできる筆者のみが表現しうる、至高の世界がここにある。私たち日本人の誇りの源泉が凝縮された本書を、すべての日本人に贈りたい」
妃登美さんは私に「日本人の道徳心の源流が中江藤樹にある」ということを伝えたかったのではないかと、今は思っています
江戸時代の思想家で日本の商人道の開祖と呼ばれるのが石田梅岩(いしだ・ばいがん)であるが
この石田梅岩の「石門心学」は中江藤樹の影響をうけて誕生したものであることが
林田先生の著書に書かれています
そもそも「心学」という言葉も中江藤樹が言い出したものなのだそうです
林田先生に石田梅岩だけでなく近江商人も伊勢商人も、大坂の商人もみんな中江藤樹の日本陽明学の影響を受けたと教えていただきました
日本で儒学(陽明学)は公家、貴族、禅僧だけの専有物であったものを
中江藤樹が一般庶民や商人にまで広め、これらが日本人の道徳心、商人の商売道徳の規範になったことを林田先生が研究してくださいました
松下幸之助さんは小学校4年で中退しています
自分は学校に行かなかったが「船場大学を出た」といいます
9歳で大阪の船場で奉公し6年間働き、この時に商売の基本や人情の機微を学んだといいます
松下さんの経営哲学の土台が船場にあるといえます
それで船場の商習慣や商道徳がどこからきているのかずっと探索をしておりました
船場の商道徳の源流が石田梅岩からさらにさかのぼり中江藤樹にいきつく
そして日本の商人道の源流も中江藤樹であると辿り着きました!
※近代陽明学の大家、林田先生と