『や~後姿で、あんたと分かったから入って来たわ~』
と、横に座る大先輩は・・・
日焼けした顔が、チョット色落ちしている。
半年ほど前か、同じように現れたから偶然では無いだろうに・・・
「おやま~お珍しい・・・どうですか釣の方は・・・」
読み始めたばかりの【魚の棲む城】田沼意次の本を閉じて、彼が飯より好きな釣の話から入っていった・・が?
『海水温の加減で、さっぱりきょうらへんわ・・・えらいもんやで!』
ちぬの海と云われ、魚介類の生息に適した海も、海水温の上昇で魚達は遠く沖き合いを通過し、関東の海に行くらしいと彼は云う。
それとなく、昔一緒に遊んだ友のこと、奥さんが心筋梗塞で入院したこと、息子に会社を譲ったが、健康を害して上手く行かないと心配なこと・・・話し!
また一緒に一泊で遊びに行こうな・・・
前回もそんな仮約束をしたが、また同じことを云っている。
兄貴のように、夜の街を闊歩した豪快な先輩だが・・・すっかり好々爺になって・・・
この不景気で、息子が心配らしい。
『おじゃまさんやったな・・・じゃ~またな!』
と、大きな右手を開いて、肩まで上げて帰っていった。
偶然を装わなくても良いのに・・・聞いて欲しかったのだろう・・・近況!
ま~喋って、ホットしたのならそれで良い。
何の助にもならないのだから・・・・!