商売往来の世界 | 右岸だより

右岸だより

 歳を取り、ヒマになりなり、昔やりたかったことを手掛けようと思っていますが、思うようにできません。そんな中で出来ることを探したり、出来るように工夫したりしてもがいている毎日を綴ってみたいと思っています。

商売往来の世界 三好信浩 NHKブックス

 「往来」とは往復書簡(手紙)のこと。寺小屋で模範になる手紙を書写させ、練習させた。「商売往来」は都市部の寺小屋で使われていた教科書だ。本書はその概要を紹介している。本書を書き写させることにより、文字を覚え、習字の練習をし、商売に必要な知識、心構えが学べるように工夫されている。

 元禄時代から明治時代まで使われていた。著者はこれが日本商業のレベルを上げたことを指摘している。例えば総合商社の機能は世界に類を見ない。ポイントは証人に読み書きの能力を必須のものだと指摘し、その取得法を明示した。さらには 「始末」と表現されているが高い倫理性を要求した。

 職人の「納得のいく仕事をする」伝統が高いものつくり能力を作ってきたと思っている。これはあきんどの働きがあって初めて実現できたのだと納得した。

 著者は教育学者だ。教育史に立脚してここまで考察されたことに敬意を表したい。