偽作の顛末 永仁の壺 松井覚進 講談社文庫
事件を覚えているので借り出した。
陶芸家が鎌倉時代の瓶に似せたものを作った。自然釉が掛かっている。この瓶には年号を入れたのが間違いだった。年号は考古学、歴史学上大変貴重だ。これを窯跡から出土したことにして売ってしまった。これを補強するために類似の破片を窯跡と称するところにばら撒いたり、破片だけでも売ったりした。ここまでが第一幕だ。
重文に指定されてしまい、問題が大きくなった。再終幕は文化財指定の取り下げだ。こんな話なので登場人物が多い。多くの陶芸家、美術愛好家、学者、そしてお役人、さらにはマスコミが絡んでいる。違った文化が錯綜する。仲たがいも起きたし、悪人扱いされた人も出た。本書はこの顛末をマスコミの立場から負ったものだ。そんなに楽しい読み物ではなかった。偽作者が瀬戸を飛び出し我が家の近くに築窯した。彼の窯の隣で一時期過ごしていたことになる。