「原爆の父」と言われ、原爆開発に携わった人のお話なので、日本公開が危ぶまれた作品ですが、アカデミー賞授賞したので公開されて良かったです。

 

オッペンハイマー

ちょっとネタバレます。

 

アメリカのハーバード大学で化学を専攻したオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、留学したイギリスのケンブリッジ大学では座学の成績は良いものの、実験が上手くできないアメリカから来た彼は教授から嫌われていた。

一人だけ居残りを命じられ激怒した彼は、教授の机にあったリンゴに青酸カリを注射するが、次の朝後悔して、急いで教授の部屋に行くと、そこには物理学のニールス・ボーア(ケネス・ブラナー)がいて、彼の勧めでドイツの大学で博士号を取り帰国する。

 

若い頃のオッペンハイマーは、当時の若いインテリ層の大半そうだったように、左翼的な思想を持ち、女性に対し軽率で浅慮だった。

あるパーティで共産党員のジーン(フローレンス・ピュー)と知り合い、すぐに関係を持つが上手くいかず、夫のいるキティ(エミリー・ブラント)と付き合い、妊娠を機にキティは夫と別れ結婚する。

しかし、オッペンハイマーはその後ジーンとも関係を続けてしまう。

関係はずるずる続くが、ジーンが徐々に精神を病み、オッペンハイマーに別れを切り出されたのちに、自ら命を絶ってしまう。

自分のせいでと悲嘆にくれるオッペンハイマーに、妻は面白くないまでも優しく接し、それに甘えてしまう。

 

オッペンハイマーは大学で教鞭をとる事になり、大学に着くとルイス・ストローズ(ロバート・ダウニー・Jr.)が出迎えてくれる。

オッペンハイマーは、ストローズの話の途中に、窓の外の池の畔にいる旧知の仲のアインシュタイン(トム・コンティ)を見つけ、ストローズにかまわず会いに行き、何かを話すが、ストローズが二人の所に向かうと、アインシュタインはストローズを無視して帰って行く。

オッペンハイマーがアインシュタインに、自分の事を無視する様に言ったと誤解したストローズは、オッペンハイマーを恨むようになる。

 

当時のアメリカは物理学を軽視していたために学生が来なかったが、戦争に向かう世界情勢に、物理学が注目されて、学生も増えていく。

アメリカ政府はナチスドイツの核開発に焦り、マンハッタン計画を立ち上げて、その責任者レズリー・リチャード・グローブス准将(マッド・デイモン)はオッペンハイマーに全権を託す。

オッペンハイマーは、彼の思い出の地ニューメキシコのロスアラモスを研究拠点に決定し、ヒトラーに迫害されたユダヤ人の科学者たちを集め、家族も暮らせるように整備する。

オッペンハイマーの元、集められた科学者たちは研究の成果を試すために実験を重ね、7月にとうとう原爆の最終実験を成功させる。

雨の為に実験が朝方になったが、カウントダウンを行い、ボタンを押す人の手が震え、その時が来ると、眩しい光が視界を覆い、爆発の後に大きなきのこ雲が上がり、爆風に実験の成功を感じる人達の歓声が起きる。

 

実験は成功したが、ヒトラーは死んで、瀕死の日本が残っているだけで、原爆を使うかは政府が決めることで、オッペンハイマーはロスアラモスで連絡を待つが、8月6日に広島に使った事をラジオで知る。

広島だけでなく長崎にも原爆を落としたことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、トルーマン大統領(ゲイリー・オールドマン)に謁見した際、核兵器の管理を呼びかけるものの、けんもほろろに帰されてしまい、水爆開発に反対の立場を取る彼は、赤狩りのターゲットになり、密室の査問委員会にかけられることになる。

査問委員会は小さな部屋で、裁判でも取り調べでもなく、一方的にオッペンハイマーの女性問題や、交友関係などを突きつけ、彼を追い詰める、ストローズが仕組んだ出来レースだった。

結果、オッペンハイマーは国家機密へのアクセス権限更新は却下された。

 

一方1958年に上院で公聴会が行われ、ストローズが出席して商務長官就任の為に質問に答えたり、証言者の話を聞く、

すると、デヴィッド・ヒル(ラミ・マレック)が彼の商務長官就任反対の証言を行う。。。

 

いい映画でした。

 

ドキュメント風に淡々と描かれて、原爆被害者の精神を逆なでしないようにしたのでしょうか。

 

広島や長崎の地名が出てきて、戦後、当時記録した映像をオッペンハイマーが観てショックを受けるが、それは当然映らない。

やはり今はアメリカの若者が原爆は良くなかったと思う傾向にあるし、被爆者は日本だけでなくアメリカにもいるからなのか。

 

そして、登場人物の顔のアップが多く、表情の変化を描きたかったのかも。

 

それと印象的だったのが、オッペンハイマーが主軸に描かれる時はカラーで、オッペンハイマーを目の敵にして、彼をハメようとするストローズが主軸の時がモノクロで、それぞれの物語が交互に描かれていて徐々に二人の心の中が見えてきて面白い。

 

やはりアメリカ映画はヒーローとヴィラン、善と悪を描くのが好きだなと思い、こちらの方が好きで、楽しみやすいです。

 

以前の化学の進歩は戦争の歴史と聞いたことがあります。

ノーベル(ダイナマイト)もそうだったけれど、化学者は戦争に使うことを想定しがらも、研究開発の魅力に駆られて止めることをしないで、結果を知り後悔するものの後の祭りの繰り返しですね。

 

化学は良い事に使えば人の為になるのですが、それより欲の方が強いのが人間なんでしょうか。

某番組で必ず出てくる言葉に「化学は誘惑する。」とありますが、その通りだと思います。