ようやく文庫になりました。

 

追憶の烏

「八咫烏(やたがらす)」と呼ばれる、人と烏のどちらの姿にもなれる存在が暮らす異世界「山内」という場所で、繰り広げられる和風ファンタジー。

ちょっとだけネタバレます。

 

雪哉は、金烏になった奈月彦の妻である皇后浜木綿と内親王の紫苑の宮に新年のあいさつをする。

本来今上金烏奈月彦の内親王は、中央山の女屋敷で教育されるが、奈月彦の兄長束の母、前大紫の御前が代替えを認めず居座り続けたため、中央山の隣の凌雲山紫苑寺に皇后と留まり続けている。

そして雪哉は現在、宗家近衛隊の山内衆として金烏に使えている。

十四の頃、若宮だった奈月彦に使えて早十五年以上になり、金烏となった奈月彦は、愛娘に会うために中央山から足蹴く通い、近習の雪哉は姫と接する機会が多く、彼女からは「雪さん」と呼ばれている。

 

山神に仕えていた猿の一族が攻めてきた大きな戦の後、山神の力は取り返しのつかないほど衰え、山内はいずれ崩壊する事を知る。

金烏は山内崩壊を阻止する為に、四家共々八咫烏が一致団結しないといけない時期が来たと皆に伝え、紫苑の宮を次期金烏に据えることを画策する。

雪哉は紫苑の宮にそのような重責を負わすのはと反対するが、長束が賛成して後見に立つと言い切り、紫苑の宮を日嗣の御子とする準備が始まる。

 

ちょうどその頃、外界遊学中の千早が新年のあいさつに戻ってきて、「ボウネンカイ」「シンネンカイ」から逃げて来たと言う。

金烏の指名で、山内存続の可能性を探るため、山内衆からは初めての外界遊学で、千早は外界を見たものとそうでないものは、意識に天と地の差があると言う。

それは危機感であり、自分は外界で生きていく気にはなれないと言い、それならただの烏の方がましだと言う。

皆は反論するが、金烏は皇后も同じことを言っていたと言う。

千早は外界を見れば、四家も悠長なことを言っていられないと言うと、金烏は雪哉に外界へ行くように話す。

紫苑の宮を女金烏にしようと言う時に何を言うのかと言うと、金烏はこれから山内の状況はどんどん悪くなるから、長い目で見ると八咫烏にとって利益になるときっぱり言う。

そして、外界遊学に行くまでは紫苑の宮の地方行啓の警護に当たる事となる。

 

そして東家より山神の降誕会である花祭りへの誘いがあった。

当日飛車※に乗った紫苑の宮と女官と羽母子(めのとご)は、東家に降り立ち、代替えをした新たな当主青嗣が出迎える。

紫苑の宮は花祭りの儀式を無事終え、お忍びで出かける事になっていたが、警護の雪哉が当主青嗣に呼ばれて出かけたので、女官と茜だけ出掛ける様に言い、文句も言わず一人部屋で待っていた。

雪哉は青嗣と穏やかな腹の探り合いをした後戻ると、紫苑の宮が一人待っていたので、彼女を抱きかかえこっそり夜桜を観に行く。

 

中央に戻った雪哉は外界に行く準備をして、名前を北山雪哉と名乗ることにして、外界では大天狗の下で働くこととなる。

そして山神と大天狗の事情を聴き、外界でのルールに最初は戸惑いつつも、仕事を始めて1年経とうとする頃、山内から急を告げる知らせが来る。。。

 

凄くキツかったです。

 

「楽園の烏」で語られなかった、山内の壮絶な20年間が書かれています。

 

「八咫烏シリーズ」過去巻の主要キャラがどんどんいなくなっていくのは、心に重石が乗ってくるようできついです。

 

もう容赦ない凄惨な表現に、彼等の楽しそうだった時を思い出し、一旦本を閉じてしまいました。

 

前作で真の金烏奈月彦が出てこないのがおかしいと思いましたが、もしかしての事情が分かりかなり心にずしんとキました。

 

今巻は、強かな雪哉がしてやられ、首謀者東家当主青嗣を前にして雪哉は覚醒しますってか、元々黒いものを心に隠している彼が冷徹の部分を前面に出していきますが、これはしょうがないと思います。

 

山内の一大事から10年経った所でこの巻は終わりますが、また新たな登場人物に何か起こりそうな予感がします。