八咫烏シリーズ 外伝
烏百花 白百合の章

ちょっとネタバレます。
 
亡くなった勁草院時代の親友茂丸の家に、久々に訪れた雪哉の緊張した様子に、応対した茂丸の妹のみよしは、初めて雪哉がこの家を訪ねてきた時の様子を思い出す。
最初は北領の郷長の息子と聞いて、なぜこんな辺鄙な所へと思ったが、兄が友人と言い、あっという間に雪哉は家族に馴染んで楽しい時間を過ごした。
あの優しかった兄が亡くなった家族のやりきれない気持ちとみよしと雪哉を描いた…「かれのおとない」
 
北領の地方貴族の三男で勁草院で雪哉の一年年上の市柳は、腕っぷしが強く、ケンカばかりしていたが、そんな市柳に彼の父、長兄、次兄は一柳を貴族としての将来を考えるように諭す。
そして隣り合う垂水郷の郷長の次男雪哉が若宮殿下(奈月彦:真の金烏)の側仕えになると聞き、納得がいかないまま年に2回ある武道会に臨む。
優秀な成績を収めた市柳は、武道大会後に雪哉に戦いを挑まれ、彼の本当の実力を知る…「ふゆのことら」
 
大貴族西家の御曹司明留の仲立ちで、宗家の近衛の千早の妹と彼氏のシンを前にして、当の千早はそっぽを向いて何も話さない。
なんとかうまく話を進めたい明留だったが、千早の態度に結も怒りだし、散々な顔合わせだった。
後日、明留の下にシンが訪ねて来て、話すうちに竹刀でやり合うことになり、散々やられたシンが本音を話すうち、明留は彼が悪い奴ではないと思うようになる…「ちはやのだんまり」
 
西家次期当主顕彦の正室、楓の方に目通る事になったは、夫が亡くなった後、嫁ぎ先から追い出され、乳飲み子を抱え途方に暮れていた時、夫と少し縁のある顕彦に誘われ、彼の十八番目の側室になるしか道はなかった。
緊張する環は、楓の方や他の側室に会い、「きっと幸せになれる。」という親切な言葉を信じられないでいたが、暮らすうちに自分の心のわだかまりがほどけていく…「あきのあやぎぬ」含む計8話。
 
本編より気持ち的に読みやすかったです。
 
暗い方向に進む八咫烏シリーズですが、この外伝は少し報われるようなお話です。
 
奈月彦や雪哉に関わり合いのあった人達の、その外側にいる人たちの物語で、本編には登場しない人たちの気持ちを描いています。
 
本編を読んだ時、山神様によって被害を被った人の家族はどうなったのか気になったので、「かれのおとない」はあ~そうだったのかと思わせてくれたし、今までずっと目の見えない妹の結を守ってきた千早の気持ちもわかるし、短編一つ一つが納得のいく結末になっていました。
 
そして、先代の金烏代の妻の紫の雲の方(大紫の御前)の権力欲がハンパなくて、もう皇后ではないのにしがみつき、現皇后の浜木綿とその子の紫苑の宮を亡き者にしようと策略を巡らしているのはなかなかに執念深くて怖いです。