陪審の評決 | 法律翻訳ネタと変人観察日記

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陪審員の評議は意見がまとまらず、かなり難航しています。


以下は、最初に棄権したスー・ウィリアムズの発言です。


"I didn´t vote yesterday. I passed. But I tend to sympathize with Mr. Hailey. I have a daughter, and if she was raped, it would greatly affect my mental stability. I can understand how a parent might crack in that situation, and I think it´s unfair for us to judge Mr. Hailey as if he was supposed to act completely rational."


昨日、私は投票しませんでした。棄権したんです。でも今日は、ミスター・ヘイリーに同情するほうに気持ちが傾いています。私にも娘がいます。もしあの子が強姦されたりしたら、私の精神状態はひどく揺さぶられると思います。そんなことになったら、親御さんの気が変になるというのもよくわかります。ですから、完全に理性的な状態で行動したという理由でミスター・ヘイリーを裁くのは、ひどく不公平なことに思えるんです。



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陪審討議が真っ二つに分かれてしまい、話し合いは全く進みません。お互いに歩み寄りの余地もありません。


メンバーも審理が長引いて疲れが出ています。


そのときに、陪審員長が発した言葉です。


"Right now we are evenly divided, give or take a vote. We could tell Judge Noose that we are hopelessly deadlocked. He would declare a mistrial, and we would go home. Then in a few months this entire spectavcle would be repeated. Mr. Hailey would be tried again in this same courtroom, with the same judge, but with a different jury, a jury drawn from this county, a jury of our friends, husbands, wives, and parents. The same kind of people who are now in this room. That jury will be confronted with the same issues before us now, and those people will not be any smarter than we are.


The time to decide this case is now. It would be morally wrong to shirk our responsibilities and pass the buck to the next jury. Can we all agree on that?"


今現在、私達は1票の違いはあれ、真っ二つに割れています。このままヌース判事に、議論が完全に行き詰ったと報告するのもいいでしょう。判事は審理無効を宣言して、私達は家に帰れます。でも、数ヶ月たてばまた同じ騒ぎが繰り広げられることでしょう。ミスター・ヘイリーは、またもや同じ法廷で同じ判事のもとで裁判にかけられます。しかし、陪審員団の顔ぶれは違います。この郡から集められた人々…私達の友人や夫や妻、それに両親達からなる陪審員団です。そう、今この部屋に集まっているのと同じ種類の人たちです。その陪審員達も、今私達の目の前にあるのと同じ問題に直面することになります。そしてその陪審員団が、私達以上に賢明だという保証はないのです。


今こそ、この裁判に決着をつけるべきです。自分達に課せられた責任から尻尾を巻いて逃げ出し、その重荷を次の陪審員達に押し付けるのは、道徳の点からも間違ったことです。みなさんも賛成していただけますね?


長くなってしまったので、陪審の評決についての解説は、後ほど別記事にて紹介します。