最後の証人 保安官の証言2 | 法律翻訳ネタと変人観察日記

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洋書に出てくる英語表現を使って、法律英語とアメリカの法体系について解説したり、変人観察日記に使える英語表現を紹介しています。
その他、食事日記やどうでもいいネタもあります。統一感のないブログですがよろしくお願いします。

昨日の記事 の続きです。


検事の証人に対する尋問です。


"What happened when the hearing was over?"

審問会が終わってからづいうことがありましたか?


"We immediately handcuffed Cobb and Willard and got them outta here. We took them to that little room over there and waited a second or two, and Prather walked on down the stairs."

我々はすぐさまコッブとウィラードに手錠をかけ、ふたりをこの法廷から連れ出しました。それから、ふたりをあちらの小さな部屋に連れて行き、そこでちょっと待っていたんです。その間、プラザーは先に階段を降り始めました。


"Then what happened?"

それからどうなりました?


"We started down the back stairs. Cobb first, then Willard, then me. Like I said, Prather had already gone on down. He was out the door."

我々は裏の階段を降り始めました。先頭がコッブで、次がウィラード、その後ろが私という順番です。先ほども申し上げましたが、プラザーは一足先に階段を降りてドアから室外に出ていました。


"Yes, sir. Then what happened?"

わかりました。で、そのあとは?


"When Cobb was near ´bout to the foot of the stairs, the shootin´ started.

I was on the landing, fixin´ to go on down.

I didn´t see anybody at first for a second, then I seen Mr. Hailey with the machine gun firin´away.

Cobb was blown backward into Willard, and they both screamed and fell in a heap, tryin´ to get back up where I was."


コッブが階段の一番下に達する寸前に銃声がはじまりました。私は踊り場にいて、次の一歩を踏み出そうとしているところでした。最初の一秒ほどは誰の姿も見えませんでしたが、それから銃を乱射しているミスター・ヘイリーの姿が見えてきました。コッブは後ろ向きに飛ばされて、ウィラードの方に倒れこんできました。ふたりは同時に悲鳴をあげ、もみくちゃになりながら、私のほうへと逃げてきました。


"Yes, sir. Describe what you saw."

何を目撃したか、話してください。


"You could hear the bullets bouncin´ off the walls and hittin´ everywhere. It was the loudest gun I ever heard and seemed like he kept shootin´ forever. The boys just twisted and thrashed about, screamin´ and squealin´. They were handcuffed, you know."


壁に跳ね返っては、いたるところに激突する銃弾の音が聞こえました。あんなに大きな銃声を耳にしたのははじめてです。ミスター・ヘイリーが、永遠に銃を撃ち続けているように思えました。二人の男はのたうちまわるばかりで、甲高い悲鳴を上げていました。二人とも手錠をかけられていましたからね。


"Yes, sir. What happened to you?"

わかります。で、あなたはどうしたのですか?


"Like I said, I never made it past the landing. I think one of the bullets ricocheted off the wall and caught me in the leg. I was tryin´ to get back up the steps when I felt my leg burn."

先ほども言いましたが、私は踊り場から下へはおりていませんでした。そのとき、どうやら壁に当たって跳ね返った弾丸が、私の足に命中したようです。とってかえして階段を上がろうとしたとき、足に焼け付くような激痛を感じました。


"And what happened to your leg?"

その足はどうなりましたか?


"They cut it off."

切断されました。


"Did you get a good look at the man with the gun?"

銃を持っていた男の顔ははっきりと見えたのですね。


"Yes, sir."

はい


"Can you identify him for the jury?"

陪審員の方々のために、その男の名前を教えていただけますか?


"Yes, sir. It´s Mr. Hailey, the man sittin´ over there."

はい。あそこに座っているミスター・ヘイリーでした。


【解説】

直接証拠と状況証拠


「私はミスター・ヘイリーが銃を乱射するのを見た」という証言は直接事実を示している直接証拠(Direct Evidence)です。

それに対して、「私が銃声を聞いたとき、ミスター・ヘイリーが銃を持って飛び出してきたのを見た。下の方を見ると、2人の男がのたうちまわり甲高い悲鳴をあげていた」という証言は、周辺の事実から間接的に事実を示している状況証拠(Circumstantial Evidence)です。


直接証拠の場合は、陪審や裁判官が、その証拠から究極的事実(ミスター・ヘイリーが銃で男を撃った)を確信できますが、状況証拠の場合は、その証言から間接的な過程を経て事実が証明されます。


状況証拠だけでも、陪審や裁判官を納得させることさえできれば、真の事実を証明することは可能です。