15日のアジア通貨市場では、シンガポールドルが対米ドルで3カ月ぶりの大幅下落となった。日本の原発事故が一層深刻な状況となり、通貨、株式、商品などのリスク資産が幅広く売られている。

 韓国ウォンはドルのショートカバーを背景に対ドルで2カ月半ぶりの安値をつけた。


 UOB(シンガポール)のエコノミトは「日本の原発事故を受けたリスク回避の動きから、アジア通貨は一段安となる可能性がある。まだニュースは出てきており、どの程度下落するのか予測するのは困難な状況だ」と指摘した。


 アジア通貨は14日、東日本大震災を受けた日本企業によるリパトリエーション(本国への資金還流)が限定的だったことから底堅さを見せていたが、日本政府が15日、被災した原発付近の放射線量が「大幅」に上昇したと警告したことを受け、急落した。


 ディーラーによると、インドネシア中央銀行など一部の通貨当局は、インフレ抑制に向け、自国通貨の下落を食い止めるため介入したもよう。


 インドネシア中銀は1ドル=8785―8790ルピア付近でドルを売ったとみられている。




 シンガポールドルSGD=SGD=D3は対米ドルで0.7%下落。ロイターのデータに基づくと、昨年12月15日に記録した1.2%以来の大幅な下落率となった。


 シンガポールドルは当初、リパトリ絡みとみられる邦銀など外銀の売りで下落していたが、その後、日本の原発事故への懸念によってさらに圧迫された。




 韓国ウォンKRW= KRW=KFTCは、ドルのショートカバーにより1138ウォンと、昨年12月30日以来の安値をつけた。


 ただ、当局がドル売り介入を行った模様で、ウォンの下げは限定的となった。


 


 タイバーツTHB= THB=THは対ドルで0.6%安となり、下落率は1月24日以来最大となった。


 


 インドネシアルピアIDR= IDR=IDは4年ぶり高値を更新した後、ドルを買い戻す動きから下げに転じた。ただ、中銀による介入で下げは限定的となった。


 ある市場関係者は、ルピアは買われ過ぎており、今後一段の調整が出る可能性があるほか、最近の上昇を受けた利食い売りも予想されている、と指摘する。


 

14日のアジア通貨市場では、東日本大震災を受けた日本企業によるリパトリエーション(本国への資金還流)が限定的になるなか、大半の通貨はしっかりと推移した。一方、韓国ウォンはショートカバーから2ケ月半ぶり安値をつけた。

 台湾の市場関係者は、日本へのリパトリの規模はさほど大きくない、と指摘した。


 台湾ドルは、輸出業者の決済需要を背景に、米ドルに対して上昇した。


 インドネシアルピアは、日本企業や投資家による大きな資金の引き揚げの兆しがみられないことから、ドルに対して4年ぶり高値をつけた。




 ジャカルタの日系銀行のディーラーは「リパトリエーションは企業によるものだけで、投資家が円買いに動いているとはきいていない」と述べたうえで、企業の円買いは年度末に関連したもの、との見方を示した。


 地震後には一時リパトリ期待が広がった。ただ、アナリストは、こうした動きが韓国ウォンなどのボラティリティを高めアジア通貨を圧迫する可能性があるものの、その影響は限定的と指摘する。




 日銀は14日、大震災と津波、原発事故で打撃を受けた経済に対する信頼感回復に向け、一連の対策を講じた。


 ただ、投資家はアジア通貨への積極的な投資には依然として慎重になっている。


 CIMBインベストメント・バンク(クアラルンプール)のSuresh Kumar Ramanathan氏は、日本の貿易収支が内需鈍化の影響を受け、アジア地域に連鎖反応をもたらす可能性があると指摘。アジア通貨は「ドルの回復とリスク志向の後退により下落する可能性がある」との見通しを示した。




 ウォンKRW=は対ドルで年初来安値を超えて下落。市場参加者が、ドルのショートカバーに動いたことや、最近の海外投資家の株式売却に絡んだドル需要が背景。


 ウォンKRW=KFTCは一時1%下落し、昨年12月30日以来の安値となる1135.3ウォンをつけた。


 これを受け、インフレ抑制に向けた当局のドル売り介入の可能性をめぐる懸念が高まった。


 ソウルの外資系銀行ディーラーは「当局は外国為替市場の安定化に向けた強い決意を表明しており、ウォンが対ドルで1134ウォンを超えた場合、介入の可能性を排除できない」と指摘した。


 ディーラーによると、輸出業者が決済のためウォンを買ったことなどから、ウォンの下げは緩和した。


 


 シンガポールドルSGD= SGD=D3 は、対ドルで下落。シンガポール金融管理局(MAS)が米ドル買い介入を行ったとみられ、自国通貨の上昇を断固抑制する当局の決意に警戒感が高まった。


 ディーラーによると、MASは1米ドル=1.2690シンガポールドル水準で介入を実施したもよう。


 ただ、4月のMAS為替政策決定会合を控えてファンド勢は依然強気で、シンガポールドルの下落幅は限定的だった。


 日本を襲った大震災がシンガポールの食料インフレを悪化させる可能性があることから、大半の投資家は当局が物価上昇を制御するためもう一段のシンガポールドル高を許容するとみており、依然としてシンガポールドルをロングにすることを選んでいる。

11日のアジア通貨市場では、フィリピンペソとタイバーツが対ドルで下落した。11日午後に起きた東北地方の大地震を受けてリスク資産を圧縮する動きが強まり、両通貨は下げ幅を拡大した。

 2月の中国の鉱工業生産伸び率が予想を上回ったことで、中国経済に対する投資家の懸念は緩和されたものの、東北地方太平洋沖地震の報道を受けて円やアジア通貨は押し下げられた。


 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(シンガポール)の新興国通貨・金利ストラテジスト、Pin Ru Tan氏は「日本の地震がリスク回避を促す別の要因となった」と語った。


 円は地震後にドルとユーロに対して下落した。




 ペソは43.60ペソよりペソ安水準に軟化した。この水準は、これまでフィリピン中央銀行がペソの下落に歯止めを掛けるためドル売り介入を実施していた水準だった。日本の地震後にドルのショートカバーが殺到した。


 


 1カ月物ドル/ウォンNDF(ノンデリバラブル・フォワード)は地震後、一時1130ウォンまで上昇した。


 それより前、スポット相場のウォンはいったん弱含んだが、輸出業者の決済需要や1ドル=1130ウォン付近で当局が市場介入するのではとの警戒感が支援材料となった。


 外国銀行の為替ディーラー(ソウル)は「インフレは現在最大の問題であり、(外為当局は)おそらく1130ウォンに近付いただけでもドル売り介入を行うだろう」との見方を示した。




 タイバーツTHB=は、リスク回避や中銀が10日行った非常に積極的な為替介入により、対ドルで上昇を戻した。


 トレーダーは、タイ中銀が前日の取引中、30.25─30.24バーツで少なくとも5億ドルのドル買い介入を行ったとみている。

9日のアジア通貨市場では、タイ中央銀行の金融政策会合後の発表より前に、タイバーツが対米ドルで約2カ月ぶり高値をつけた。アナリストは、タイ中銀がインフレ警戒姿勢を継続すると市場が確信した場合、バーツ相場はさらに支援される可能性があるとみている。

 タイ中銀はこの日、政策金利を25ベーシスポイント(bp)引き上げ、2.50%とした。




 アナリストらは、会合後のタイ中銀のコメントがバーツ相場にとって重要、とみている。


 ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(香港)のチーフ為替ストラテジスト、クリストファー・ゴサード氏は「われわれは、中銀は最近のコメントのトーンを維持し、一段の引き締めに向かうと市場を確信させると予想する」と指摘。予想通りタカ派的発言が出れば、バーツを支援する、との見方を示した。


 ディーラーによると、タイ中銀はバーツ高抑制のためのドル買い介入を行ったもよう。バーツは2月に入ってから対ドルで1.8%上昇している。




 タイバーツの対ドル相場THB=THB=THは、輸出企業や外資系銀行からの需要を背景に1月13日以来の高値である30.24バーツまで上昇した。


 ただディーラーによると、タイ中央銀行がバーツ高に歯止めをかけるためのドル買い介入を実施し、バーツは30.30バーツよりも安い水準に押し戻された。




 韓国ウォンの対ドル相場KRW=KRW=KFTCは、輸出企業の決済需要やモデル系ファンドなどのオフショアの参加者の需要を受けて1113.5ウォンまで上伸し、2月21日以来の高値をつけた。


 ただ外為当局によるドル買い介入に対する警戒感が続く中、輸入企業のドル買いや投資家によるドルのショートカバーも入り、その後はウォンが上昇幅を削る展開となった。


 ソウルの外資系銀行のディーラーは「市場参加者は依然として1110ウォンを利益確定の水準とみている」と指摘した。




 フィリピンペソPHP=は対ドルで反発。前日の終盤やオフショア市場では不安定な値動きとなっていた。


 ペソは、フィリピン中銀がオンショアとオフショア市場の裁定取引を抑制する措置を検討しているとの見方から、一時弱含む場面があった。


 ドル/ペソの1カ月物ノンデリバラブル・フォワード(NDF)PHP1MNDFOR=は43.43ペソ。中銀が検討する措置の狙いは裁定取引にかかわる投機的取引だけとの認識が広がり、ペソは、ニューヨーク市場でつけた安値の43.60ペソから値を戻した。


 中銀が前回介入したとみられる1ドル=43.25ペソに引き続きペソの上値抵抗線が形成されている一方、43.60ペソとの直近安値の43.90ペソが下値支持線となっている。

8日のアジア通貨市場では、タイバーツと韓国ウォンが対ドルで上昇した。韓国銀行(中銀)とタイ中央銀行は今週、金融政策会合を開くが、市場では利上げが予想されている。

 当局によるドル買い介入への警戒感で、アジア通貨は引き続き狭いレンジで推移した。


 ディーラーによると、タイ中銀とシンガポール金融管理局(MAS)は、自国通貨の上昇抑制のためのドル買い介入を行ったもよう。


 アナリストやディーラーは、エネルギー価格の上昇で世界経済の回復が妨げられる可能性が懸念されるなか、アジアの外為当局は輸出競争力の維持に向け、自国通貨高の抑制を続けるとみている。


 クレディ・アグリコルCIB(香港)のストラテジスト、フランシス・チャン氏は「原油価格が長期間高止まりすれば、経済成長に影響が生じ、中銀は成長を後押しするために自国通貨が引き続き安い状態を望むだろう」と指摘。「通貨はインフレ抑制の主要なツールではないため、アジアの中銀は依然として自国通貨の過度の上昇を望んでいない」と述べた。




 ウォンKRW=は、輸出企業やオフショアのヘッジファンドの買いが上昇要因となった。韓国中銀は10日の金融政策決定会合で金利を引き上げると予想されている。


 ソウルの米系銀行のディーラーは「オフショアの一部のヘッジファンドがまた、利上げに賭けているようだ」と語った。


 韓国の短期の金利スワップはほぼ1年3カ月ぶり高水準をつけている。


 ただディーラーによると、ウォンが1110ウォンの水準を超えて強含むようであれば特に、当局によるドル買い介入に対する警戒感が強まり、ウォンがどこまで値を伸ばすかは疑問という。




 台湾ドルTWD=TPは台湾株式の反発や原油価格の軟化を背景に上昇した。一方、マレーシアリンギは中銀の介入に対する警戒感からほぼ変わらずとなった。


 スタンダード・チャータードは、3カ月物のノンデリバラブル・フォワード(NDF)を通じた米ドル/台湾ドル売りを推奨している。株式への資金流入が安定的になったことや、台湾中銀が3月の政策決定会合で主要政策金利を12.5ベーシスポイント(bp)引き上げるとの見通しを理由に挙げた。


 スタンチャートはリンギについても見通しを上方修正した。コモディティー価格の上昇がマレーシアの成長と対外収支を支援すると見込んでいる。マレーシアの中銀も追加利上げを実施すると予想されている。


 スタンチャートは第1・四半期末時点のリンギの対ドル相場MYR=MYR=MYを3.00リンギ、第2・四半期末を2.95リンギ、第3・四半期末を2.88リンギ、今年末を2.95リンギと予想した。これまでの予想は順に3.10リンギ、 3.18リンギ、3.12リンギ、2.98リンギだった。




 バーツTHB=は対ドルで0.3%上昇。輸出企業からの決済需要や海外銀行の需要で堅調に推移した。


 ディーラーによると、タイ中銀は1ドル=30.35バーツ付近でドル買い介入を実施したもよう。


 プラサーン中銀総裁は、原油高はまだ経済成長を損なうに至らないものの、デマンドプルとコストプッシュの両方が原因でインフレが進んでいると述べた。


 同中銀は9日、政策金利の1日物レポレートを25ベーシスポイント(bp)引き上げ2.50%とするとみられている。




 フィリピンペソPHP=は対ドルで小幅下落。ノンデリバラブル・フォワード(NDF)市場の値決めやドルのショートポジションをカバーする動きに関連し、ドルが買われた。


 8日はフィリピン中銀による為替介入は無かったもようだが、同中銀が前回介入したとみられる1ドル=43.25ペソ付近に引き続き抵抗線が形成されている。