梅見れず五十六億七千万年後を思う


梅の花を見たくて玉島の円通寺に行ってきました。
円通寺は、江戸時代後期の曹洞宗の僧である良寛さんが若き日に修行したお寺です。
純真無垢な子供心を尊び、歌を読み、子供と遊ぶ優しいお坊さんであったと伝えられています。

山門です。

本堂周辺は改修工事中でした。
梅の花は咲いているのかな。

良寛さんの像です。

梅の花はまだ開花していませんでした。
ただし蕾は大きく膨らんでいました。
開花間近です。
見れなく残念でした。


本堂です。
本尊は聖観世音菩薩です。

コロナ禍やこの所の地震災害の収束を願い、身近にお参り出来る様、弥勒菩薩半跏像が本堂外に出され安置されていました。


弥勒菩薩半跏像です。
広隆寺の国宝 半跏思惟像が有名な菩薩様です。
弥勒菩薩はサンスクリットでは「マイトレーヤ」と呼ばれます。
実在の人物でお釈迦さまの弟子と伝えられています。
在世中は人並み外れた尊貴な容貌と資質をそなえ、お釈迦さまから遠い未来に悟りをひらき新しい世界の如来となる事を約束されたと伝えられています。
お釈迦さまより先に入滅した弥勒菩薩は、天上世界の兜率天で修行し、諸天に説法をし、遠い未来にこの世に再び現れて苦しむ人々を救済するとお経に説かれています。
お釈迦さまの入滅後、教えは忘れ去られ世の中は荒れ果て無法がはびこり、人々は苦しみあえぐ時代が永く続いていきます。
お釈迦さまの入滅後五十六億七千万年後の遥か未来に弥勒菩薩がこの世界に降り悟りを開き、多くの人々を救済すると伝えられています。

五十六億七千万年後とは随分先の未来だなあ。
偶然にも最新天文学での太陽の残された寿命とほぼ同じ年数となっています。
御経を編纂した人の研ぎ澄まされた直感と洞察力で、この世の終り、即ち太陽の寿命を察知し、遠い未来の新しい平和な世界を渇望したのかも知れません。

最新の天文学では太陽の様な自ら光る恒星は銀河系のなかでは数千億個有り太陽は銀河系の中ではありふれた星との事です。
恒星内部では、自らの重量で圧縮され超高熱となった中心部でまず水素どうしが激しく動き衝突して、新しい元素がつくられる核融合が発生し、莫大なエネルギーが生まれ光り輝いています。
太陽の質量では中心部に新しい元素が溜り燃え滓となり、やがて大きく膨らみ地球は灼熱地獄にのみ込まれてしまいます。
ある段階で核融合は止り、周りの水素を穏やかに宇宙空間に撒き散らしやがて静かに冷えて永遠の闇に消えて行くと想定されています。

銀河系の中だけでも数千億個の太陽の様な恒星があり、観測技術が進み、生まれたばかりの星や終わりを迎えた様々な星々を観測する事により太陽の寿命と将来の姿が推定されています。

終わりを迎えて中心の星が自らの物質を撒き散らしている実際の様子です。
惑星状星雲と呼ばれています。
中心の白点が星の燃え滓です。(白色矮星)
50数億年後の太陽も同じ姿となると言われています。
その時には地球は太陽にのみ込まれて消滅しているでしょう。

円通寺の弥勒菩薩半跏像を見て宇宙の事、五十六億七千万年後の世界の事に想いを巡らしてみました。
新たな太陽、新たな地球に暮す遠い未来の人々が、穏やかに幸せに暮らせているだろうか。
今の時代に暮らし、苦しんている人々にも光りが当たり癒やされる様に。

なぜだか昔よく聴いた山口百恵さんのラストシングル「さよならの向こう側」のフレーズが浮かんできました。

「何億光年輝く星にも寿命があると教えてくれたのはあなたでした
季節ごとに咲く一輪の花に無限の命 知らせてくれたのもあなたでした」

良い歌詞だなあ。
久しぶりに聴いてみたくなりました。



以上です。