ある日の午後7時
稽古場
着替えてる者
ストレッチする者
そして
音楽が流れている
いつもと変わらぬ
稽古前の風景
ふと
誰かが
何かを言った
音楽にかき消されて
よく聞こえなかった
いや
それとも
誰も
何も言ってなかったのか
空耳?
回りの劇団員は特に変わらず自分事を続けている
やっぱり気のせいかと思った瞬間
音楽がフェードアウトして谷へ向かったすぐ後から
今にも消えそうな声が聞こえてきた
松田の声だ
「楽釜行ってきた」
楽釜?今、楽釜って言った?
楽釜だ
劇団員瀬戸と塚本が
イナズマのような早さで
反応した
そう
楽釜とは彼らがよく足を運ぶという
うどん屋
(つづく)