坂本弁護士一家殺害事件は1989年11月4日午前3時頃に犯行が行われた。しかし当時は失踪事件という扱いだった。現場にオウム真理教が当時製造していたバッジであるプルシャ(このブログのアイコンと同型)が落ちていたことから、教団の関与が疑われたが教団はこれを完全否定した。
私(筆者)が1987年12月の教団修行セミナーに参加した際に、参加者全員に配られたブルシャ(中川智正が事件現場に落とした物と同型)
テレビ番組でも追及を受けたが、追及する側の姿勢があまりにも甘過ぎた。特に司会者 岸部シローの
「僕はオウムのお弁当屋さんのファンなんですよ!」
という発言は例えそうだったとしても、殺人犯の可能性のある者達に絶対に言ってはならない相手を調子づかせるセリフであったと私(筆者)は考える。弁当屋がどのようであろうと教団が事件に関与していたか否かの追及に役に立つのだろうか?
その後数年間、オウム真理教が坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)についてテレビ番組で追及された所を私(筆者)は見た記憶はない。それどころか教団は選挙に出馬するなど、テレビ的なパフォーマンスをすることにより、坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)への疑惑を巧妙にはぐらかし、それに騙されたのかは不明だが、何とテレビ局はその教団を「朝まで生テレビ」などの生放送の番組にゲストとして出演させたのであった。
それ以来オウム真理教は大手を振って(殺人犯であるにも関わらず)テレビ出演し、特に当時人気だった有名タレントの番組でも話題になった。
その後の展開はまさに教団の目論み通りとなった。それはそうだろう!テレビ局が自分達犯人を、犯人ではなくゲストとして扱ってくれたのだ。おまけに有名人気タレントの番組に出演させてもらうことまで出来て、知名度はうなぎ登り!これに乗じない手はない。
教団は勧誘活動を強化し、大学祭等にも盛んにイベントを企画するようになった。大学祭で麻原彰晃を知ったという方もいるのではないかと思う。それらの活動が実を結び教団はこの時期(1991年~1994年)に勢力を飛躍的に拡大させた。
坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)が追及、検挙されなくなってから2年~3年間にこれだけのオウム真理教の勢力拡大をさせてしまったことが、それから間もなくして起こった松本サリン事件や地下鉄サリン事件を達成する大きな助力となったのは間違いないと私(筆者)は考えている。しかも警察は別件で坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)の実行犯の一人である早川紀代秀を逮捕したにも関わらず、坂本弁護士一家殺害事件については完全に見逃していた。
松本サリン事件直後にはオウム真理教を疑う報道は皆無であり、第1通報者の河野義行さんを犯人と思わせる報道1色となった。テレビ出演(朝まで生テレビ、とんねるずの生ダラ、たけしのTVタックル 等)に続き さらなる教団へのアシストをした警察とマスコミ、この時 教祖麻原や村井秀夫、上祐史浩らの上層幹部共は笑いが止まらなかったに違いない。松本サリン事件の約1ヶ月後に教団は〝雄叫び祭〞という祭典まで開いている。事件の隠蔽がまんまと成功し余裕があったということなのだろう。
坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)には、わずかな解決の糸口があった。
実行犯の一人である岡崎一明(元死刑囚)の書いたいわゆる怪文書である。しかし警察が図面に指定された場所周辺を捜索しても遺体は発見できず解明の機会を逸してしまった。ほんの少しの位置のズレだった。
誠に残念と言うしかないが、これは岡崎一明に大きな責任があると私(筆者)は考える。岡崎がオウム真理教を脱出し、麻原を脅して大金を奪い取り、自分だけ助かろうとしたが故に怪文書などという セコい手段を使ったのだ。当時の警察も怪文書はイタズラや捜索撹乱を目的とするものもあると考えられる訳だから全面的に信用はしていなかったのではなかろうか?
本気で自分のした事の罪の大きさを感じていたなら、怪文書などではなく自ら出頭し正確な場所を示し事件の全てを話せば良いだけだ!岡崎一明は自分の都合しか考えていなかったと言える。教団を脱会していないのと変わらないではないか!たらればを言えばきりがない。しかしこの時点で岡崎が出頭していたなら、その後の事件は確実に防ぐことができたはずであるだけに、非常に重大な間違いだった。
この時坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)の犯行からおよそ3ヶ月後だったという(オウム裁判でわかったこと、残る謎 参照)。本当に大きな事件解決の機会だったが、ここで解明されなかったことがさらに大きく被害を拡げることになってしまった。
1995年 9月、この時期になって坂本弁護士一家殺害事件は失踪事件ではなくオウム真理教が犯した殺害事件であることがようやく解明された。私(筆者)は今さらながらテレビ放送に騙されて教団活動を再開した自分の行いを悔いた。
しかし、一番反省し悔い改める必要があったのは坂本弁護士一家殺害事件(当時は失踪事件)発生後、オウム真理教を追及せずに好意的に放送したテレビ局を中心としたマスコミと文化人・人気タレントだろう!
この事件を見逃し、教団に非常に大きな知名度を与えたたために、オウム真理教は大発展しさらに遥かに大きな被害をもたらす事件まで増発することになったのである。
それらの事件の後になって、実はこれもオウムでした・・・というのは事件の被害者にとってはもちろんのこと、当時のテレビ放送に騙されて興味を持って入信した人や、停止していた教団活動を再開した私(筆者)にとっても大変ふざけた結論だったと思っている。
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