【480字シリーズ】書評……『共同研究 パル判決書』 | 狂直の日記

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 本書は、極東国際軍事裁判(東京裁判)において判事を務めたラダビノッド・パールが提出した、多数意見に対する反対意見書である。パールは、「日本の行いは当時の国際法や国際情勢に照らして違法・異常とは全く言えない」とし、いわゆるA級戦犯として起訴された日本の指導者達の全員無罪を主張している。また東京裁判は国際法上の根拠を欠いているとし、「法律の外貌を纏った勝者の敗者に対する復讐でしかない」と断じている。

 

「パールはA級戦犯が無罪であると断じただけであって、日本の行為が無罪と断じたわけではない」との批判については、どうであろうか。

 

 しかし、パールは判決書の冒頭において「ここに述べられた行為は全て国家の行為である」と明言している。指導者達は国民の意思を付託され、憲法に従い国家を運営するために権力の座に就いたのであり、その行為は国家の行為であり、彼らの無罪は日本の無罪であるとしている。

 

 このように、本書は東京裁判の否定を基礎としている。また世界平和は事後法で敗戦国に責任を押しつけることで得られるものではないと論じている。

 

東京裁判研究会編『共同研究 パル判決書』(講談社学術文庫、1984年)