【480字シリーズ】書評……ヘレン・ミアーズ『アメリカの鏡・日本』 | 狂直の日記

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 本書は、GHQのメンバーとして占領政策に携わったヘレン・ミアーズが、アメリカと我が国の戦争をめぐる政策を論じたものである。「日本が行ってきた『侵略』『解放』『法的擬制』はアメリカを初めとする西洋諸国も等しく行ってきたことであり、日本は彼らの教えを再現し、その行いを模倣したに過ぎない」としている。ゆえに日本に第二次世界大戦の責任を全て押しつけるのは公正さを欠いていると結論づけている。

 

「当時の日本の行為が東アジアの不安定要因になっていたことは事実であり、国際情勢に原因を求めるのは反論になっていない」との批判については、どうであろうか。

 

 しかし、本書の課題は新たな戦争を防ぎ平和を構築するために議論すべきことは何かということである。それは混乱した国際政治の状況を作り上げた当事国の共通の問題であって、プロパガンダを用いて我が国の実像をねじ曲げ、我が国の行為を誇張し全てを我が国の責任に帰すことが平和に寄与するとは思われない。

 

 このように、本書は第二次世界大戦に対する再評価を促している。また当時の国際情勢を詳述している点も興味深い。

ヘレン・ミアーズ 伊藤延司訳『アメリカの鏡・日本』(原著1948年、日本語訳メディアファクトリー・1995年)