児童ポルノ法改正案の附則について | 狂直の日記

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多摩武蔵守のブログです。
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 5月29日の記事で児童ポルノ法改正案を取り上げた際、附則のことについて若干触れました。 


 改めて説明すると、児童ポルノに類するマンガ・アニメ・ゲーム等と児童の権利を侵害する行為との関連性を調査して、法律施行後3年後に必要な措置を講ずる、というものです。


「第二条 政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの(次項において『児童ポルノに類する漫画等』という。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置(次項において『インターネットによる閲覧の制限』という。)に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとする。

2 児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、前項に規定する調査研究及び技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。」


 この附則については、「表現規制は決定事項。検討するのはその内容だけ」として反対している向きがあります。

 しかし私は、そうした理解も誤りであると考えます。


 まず、「必要な措置」ということは、必要でなければ何もしないということです。調査研究の結果、規制は不要という結論になることも考えられます。実際、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」で附則3条に「法律の施行後三年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」との規定がありましたが、検討の結果「民間による自主的な取り組みに期待」との結論に至りました。(注1)

 また、調査研究だけなら立法措置がなくてもできますし、逆に国民の権利を制限し義務を課す(すなわち新たな規制をする)なら必ず立法措置が必要です。
 さらに、附則があるからと言って将来の立法措置が拘束されるわけではありません。附則に書いてあろうとなかろうと、規制のための立法をすることも、しないことも可能です。「検討結果がどうあれ規制できる」というのは間違っていませんが、それは附則があるからではなく、国会に立法権があるからということに過ぎません。

 なお上記の見解は、下記のTogetterに収録されている名古屋大学・大屋雄裕教授(takehiroooya氏)のツイートを参考にしました。


「児ポ法改正案の附則にある『検討』とは『表現規制自体は決定でその内容を検討する』という意味である by 山田太郎議員」

 http://togetter.com/li/514234


 大屋教授は児童ポルノ法改正案には反対とのことですが、一方で正確な議論をすべきということも常々言われています。反対運動のヒントも与えてくれています。


「特にある立法を阻止したいという場合には継続的な活動が(どんな目的であれ)必要になってくるし、立法されたら決着ではなく、そのあとの議論とか適用で粘るという手段も残されている」
「話題になったときにぱあっと盛り上がるのではなく、粘り強く活動し続けることが大事」


 にも関わらず規制反対派の中に「自民党が規制をするのは既定路線!」と拒絶している向きがあるのは理解に苦しみます。こういった人々は、「自分達の意見が通らないのは民主政治の運営が間違っているからだ」と言いたいだけなのではないでしょうか。 


【参考資料】
(注1)総務省「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会『青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する提言~スマートフォン時代の青少年保護を目指して~』」
 
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_02000051.html