「大人になったら、」 畑野 智美

 

 

都内の飲食チェーン店の一つ、北欧風カフェ「キートス」で副店長として働く独身の葛城命(めい)は、きょう35歳の誕生日を迎えた。

 

 

35歳の独身女性というと、あれかなあ…と思ったのと大体同じような状況のメイ。

 

結婚、妊娠、出産の経験のないことを同級生に見下されていると感じて距離をおいたり、独身の友だちだけとつるんだり、8年前に別れた元カレのことを度々思い出したり、している。

 

職場に毎日来て同じものを食べる客と話をするようになり、仲良くは成りたいけど、これは恋ではない、と断じるあたり、ああそうだろうなあ、と思う。

仲良くなりたいって思うことでもう、それが恋でいいじゃないのと思うんだけど、そこは臆病になるというか、真剣にとらえてしまうだろうなあ。

 

淡々と同じような毎日を送ることは、とても安心。

でも、ひとりの安心と誰かと一緒にいることの安心だったら、誰かと一緒にいることの安心を、ちょっとがんばって選んでみてほしいなあ。

 

この人と仲良くなりたいって思える人って、案外少ないと思うし、それは結構、奇跡的なことだと思う。