「白光」 朝井まかて
明治5年、15歳の山下りんは絵師になると決め家を出て東京を目指すが、兄に連れ戻される。その後幼馴染の死を経て母に認められ、改めて東京で師匠について絵を学ぶ。南画の師匠・中丸精十郎のもとで、りんは西洋画を知る。
日本初のイコン(聖象画・聖人の姿や聖書の物語などを描いた絵)画家・山下りん、なんてまったく知らずに読み始める。
師匠の中丸が入学した工部美術学校に自身も入学し、そこで出会った政子に誘われロシア正教教会を訪れ、ロシア正教の宣教師・ニコライ司教に出会い、聖象画を学ぶためロシアに留学し…とその流れを見ていると、もうこれはそうなるようになっていたんでしょう、としか思えない。
もちろん順風満帆とはいかないもので、読んでいて胸がつまるような苦しさ、恐ろしさ、くやしさや情けなさに打ちのめされるようなできごとは起こるけれど、心の底が燃えていて熱いから、完全になぎ倒されるということがない。
そうして生きていれば、つらく屈辱的にも思えたロシアの修道院でのことも、ああそういうことだったのかと腑に落ち、心が信頼と愛で満たされる瞬間もやってくる。
心から好きと思えるものがあれば力が自分のなかから湧いてくるんだろう。
もしも何もできなくなっても、好きを味わいつくした思い出が淡く白く光って心を温めてくれるから、生きていけるんだろう、と思う。
