「空色の小鳥」  大崎 梢

 

 

西尾木敏也(にしおぎとしや)は急逝した兄・雄一の隠し子・結希(ゆき)とその母・千秋が暮らす鎌田のアパートを訪ね、膵臓がんで余命少ない千秋に、自分が兄の代わりに結希の親権者となり育てたいと申し出る。

 

 

20代の独身男性が幼児をひきとり一人で育てるなんて、かなり難しいことだ。

そんなことを申し出る敏也の善人振りに絶対裏があるだろうと思ってたら、やっぱりあった。

 

結構大きな企みだし、まあ胡散臭いことでもあるけど、敏也はそれをおぎなってあまりあるほど、長く深く、傷つき続けていたのだと思うと、胸が痛む。

結希や、友人の汐野、元恋人の亜沙子への態度を見ていると、誰に対しても穏やかでやさしくあろうとする敏也を責める気持ちは消えていく。

 

結局は、父・雄太郎と西尾木家にとらわれることから解放され、自立するために敏也に贈られたプレゼントのような出来事だったのではないか。

結希、千秋、兄の雄一を利用しているようで、実は彼らの力で支えられ、背中を押されて長年の問題に取り組むチャンスをもらえたのではないかと、思った。