「片をつける」 越智 月子

 

 

間も無く40歳を迎える夏野阿紗(なつのあさ)は、マンションの隣に住む、噂で癖強めと聞いていた高齢女性・五百井八重(いおいやえ)が、ずぶぬれで部屋の前にしゃがんでいるのを見て思わず声をかける。

それをきっかけに、八重の汚部屋を一緒に片付けるようになる。

 

 

部屋が片付くと頭のもやもやが消えていく。

部屋が汚い人ほど「もったいない」と口にする。

片づけあるあるに苦笑するし、片づけのポイントも分かりやすく出てくる、片づけ小説だった。

 

阿紗は八重の部屋を片付けることを通して、自分の過去や内面にも改めて目を向ける。

八重は八重で片付けることで、過去を清算したり、ずっと気になっていた相手に再会することもできる。

 

片づけをすることで、風穴があき、とどこおっていたものが流れ出すのは、本当にあること。

不思議なんだけど、思いもよらない形ですべてはつながっているのだと思える。

 

そしてさらなるつながりを産み、新しい自分に出会えたりする、この世で最も簡単で効果的な自己理解の方法は、片づけってことなのかもしれない。