「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 村上 春樹

 

 

計算士の(私)は仕事の依頼を受け出向いた先で地下に移動し、老科学者のもと作業を行う。

一方、高い塀に囲まれ一角獣だけが出入りを許された街で(僕)は頭骨から夢を読んで暮らす。

 

 

謎と暴力があり波乱万丈な「ハードボイルド・ワンダーランド」とやはり謎はあるが静寂と単調な毎日の繰り返される「世界の終わり」、2つの世界が交互に展開する。

 

その壁に囲まれた世界は、新刊「街とその不確かな壁」でも描かれた世界で、著者の思い入れが伝わってくる。

著者も同様な世界を心にもって生まれ、2つの世界を生きているのではないか、などと想像する。

 

毎日を単調に、深く考えず、言われた通りに静かに生きていくこともできるし、何がどうなるかわからず常に動揺したり緊張したりしながら生きていくこともできる。

 

どちらがいいとも悪いとも言えないが、ただひとつ、自分がそこで生きると決めているかどうかが大切なのだと思う。

流れに身を任せるのもいいが、それだけでは物足りなくなるのだろう。

それは「自分は自分の人生を生きている」と胸をはって言えることではないから、かもしれない。