「やがて満ちてくる光の」 梨木 香歩

 

 

デビューから近年までの作品を集めたエッセイ集。

 

 

教会のステンドグラスは外からの光で内側にいる信者に感銘を与えるものと思っていたが、夜の闇に内側から発光するステンドグラスを見て、外の闇に居る者にも光を届けるものだと気づいた話。

なんて美しいイメージの広がる話だろう。

そしてなんと気付きに満ちた言葉だろう。

 

小学生のころ、憑かれたように毎日本ばかり読んでいた。その日もテスト後の空き時間に本を読んでいたら授業を観察する人たちが後ろから入ってきて、何やら耳打ちした後、担任が「あの子はああいう子なんです」と言うのが聞こえた話。

担任の理解により信頼が満たされる、まるごと受け入れられたと感じられるできごと。こんな先生に当たった著者は幸せ者だ。

 

映画「西の魔女が死んだ」に出演したサチ・パーカー「自分にはこういう祖母はいなかった」と話すのを聴いて、彼女の中の老人の魂が彼女の中の少女の魂に微笑み、慈しむビジョンが見えた話。

ひとりの人間の中には80歳の魂も8歳の魂も存在していて、傷ついた幼い自分を自分で慈しむことができる。誰かにしてもらうだけが癒しではない。

 

著者のなかにこそ少女と大人の女性の混在する魂を感じる。

だからいつまでもその世界は瑞々しく、かつ深みがあり、視差に富んでいるのだろう。

うーんとにかく大好き。