「ヴィレッジ」(2023)

横浜 流星   黒木 華

 

 

伝統の薪能をもつ霞門村(かもんむら)に生まれた片山優は、村の産廃処理場建設をめぐって父を失い、今はギャンブル依存の母親の借金返済のため、いじめを受けながらも処理場で働いていた。

 

 

私の職場にも産廃業者が来てあらゆるものを引き取ってくれるが

今や産廃業者なしに仕事は成り立たない。

それでも自分の暮らす場所の近くに処理場が建設されるとなれば

嫌悪感や不穏な気持ちは感じるだろう。

 

自分のそばに汚いものはあってほしくない。

なるべく美しく、正しく、安心安全なものに囲まれて生きていたい。

まったく自分勝手なものである。

 

人間はみんな、体や心のどこかに汚いものをもっている。

それを見ないふりして、なかったことにして生きている。

でも実は生きるために、汚いものは何より必要なんだけど。

汚い、汚い言ってけるど、ほんとうに「汚いもの」って何だろうね?

 

嘘はつきたくない、とあの子は言ったけど

いつかその正直さがあの子を死にたいくらい苦しめることになるかもしれない

と思った。