「嘘 Love Lise」 村山 由佳
34歳の刀根秀俊は、小学生のころ母親の男に暴力を受けていた。
そのころから面倒を見てもらった九十九からの依頼はことわれず、左官業のかたわら組事務所とのつながりをもっていた。
刀根と幼馴染みたちとの中学時代の光景はキラキラしていて
さすがの村山さん、とうっとりさせてもらったが
キラキラが一転どろどろになるのだった。
度々「これをしてもらうなら、同じだけのことを返す」という意味の言葉が出てくる。
それはそうだろうとは思う。
平等ってことだから。
でもなんでもそんなふうに同量を、平等に、ってわけられないとも思う。
傍から見て同じに見えても本人たちにとってはぜんぜん違う。
それは受け取り方がひとりひとり違うのだから。
じゃあどうするかって
どちらかが「もう十分だ」と思うことなのかな。
その渇望の浅い人、つまり自分で自分を満たせる手段を持つほうの人が
もう十分もらったよ、もういらないよって言わないと
奪い合い、お返しのしあいは永遠に終わらないんだろうなと、思った。