「JR上野駅公園口」 柳 美里
1933年、天皇と同じ日に生まれた男は、東京オリンピックの前年、福島から東京に出稼ぎにきて、上野駅に降り立った。
上野恩賜公園のホームレスは東北出身者が多い。
と読んではっとする。
ホームレスになるにはそれなりの理由はあったろうと思うが
どこの出身だとかは考えたことがなかった。
主人公の森ははじめ出稼ぎのために上京し、一度郷里に帰ったものの、ひとりまた上京しホームレスになる。
そうなるまでにいろいろなことがあり、物語として読むとそうなるのも無理はないかとも思う。
自分の存在価値がわからなくなると、
どこかに家をもち、とどまる意味がわからなくなるのかもしれない。
つい「ホームレス」というひと固まりで見てしまうが
みなにそれぞれ物語があるのだ。