■平気でデマ情報を拡散したり歴史を改竄する人たちは「何を」守ろうとしているのか? | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:トランプ、マスク、安倍晋三。平気でデマ情報を拡散したり歴史を改竄する人たちは「何を」守ろうとしているのか?2024.08.22より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/news/615042
 
km20240821
 

7月末に発生しイギリス全土に広がった移民排斥の暴動。ネット上で拡散された悪質なデマがきっかけとされますが、誰がどのような目的を持ちかような情報を拡散させたのでしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、イーロン・マスク氏も深く関わる暴動の背景を詳しく紹介。その上で、デマや誤った情報を流通させる人々の意図を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:デマで大衆を扇動する極右たち

狙いはどこにあるのか。デマで大衆を扇動する極右たち

日本ではあまり大きく報じられなかったみたいだけど、7月末から2週間ほど、イギリス各地で極右系の思想を持った人たちによる「反移民」「反イスラム教徒」のデモが頻発し、そのデモが暴動に発展し、イスラム教のモスクや難民申請中の人たちが滞在してる複数のホテルが放火されるという事件に発展した。あたしは現地のニュース映像を観たけど、放火されたホテルの外壁には、ラッカースプレーで「Get out ENGLAND(イギリスから出て行け)」と大きく書かれてた。

また、こうした暴動にありがちな便乗犯罪として、移民やイスラム教とは無関係の商店を襲って商品を強奪したり、一般車両を破壊するなどの犯罪も頻発した。逮捕者は1000人近くに上り、今日までに少なくとも470人以上が起訴された。

その大半は2年から8年の実刑になる見込みだけど、イギリスでは刑務所の過密化が問題になってるため、刑務所の収容能力が確保されるまで、被告らは警察署の留置場に勾留され、一審公判は開始しないという緊急措置が取られた…というわけだけど、どうしてこんな暴動が起こったのかと言うと、ことの発端は、7月29日にイングランド北西部のサウスポートで発生した殺傷事件だった。

この日、サウスポートにある子どもたちの通うダンス教室を、突然、17歳の少年が襲撃した。少年はダンスの練習をしてた子どもたちやインストラクターを、持参した大型のサバイバルナイフで次々と切りつけて行った。6歳から9歳までの女の子3人が刺殺され、他に子ども9人と大人2人が負傷した。

容疑者の少年は、駆けつけた警察官にその場で逮捕された。少年はウェールズの首府カーディフの生まれで、6歳の時に両親とともにサウスポート近郊の町に引っ越して来たという。犯行の動機などはまだ分かっていないが、イギリスではここ数年、青少年がナイフで不特定多数を襲撃する殺傷事件が急増しているそうだ。

で、ここまでは「よくある話」…と言ったら申し訳ないけど、アメリカで頻発してる「青少年による学校などでの銃乱射事件」のイギリス版といった事件だろう。未成年者でも簡単に銃を入手できるアメリカでは「銃」、簡単に銃が入手できないイギリスでは「ナイフ」、使用する武器が違うだけで、不特定多数の学生や子どもなどの弱者を襲撃するという悪質さは酷似してる。

でも今回は、ここから先が違った。この事件のニュースで、容疑者の少年の両親が「アフリカ中部ルワンダの出身」だと報じられると、X(旧ツイッター)などのSNSで「サウスポートの事件の犯人はドーバー海峡をボートで越えて来た違法移民のイスラム教徒だ」というデマが広まったのだ。日本でも、無差別殺傷事件などが起こるたびに「犯人は在日朝鮮人だ」という関東大震災から100年経っても1ミリも進歩してないデマを流すバカがいるけど、子どもでも普通にネットを利用する現代では、こうしたデマは雪玉のように転がりながら大きくなって行く。

「英国での内戦は避けられない」と煽りまくったイーロン・マスク

そして、このデマに目をつけたのが、極右団体「イングランド防衛同盟(EDL)」の創設者で極右活動家のトミー・ロビンソン(本名スティーブン・ヤクスリー・レノン)だった。まだ41歳、今年11月で42歳になるトミー・ロビンソンは、これまで傷害罪や詐欺罪や他人のパスポートの不正使用などで4回も実刑を食らってる上に、執行猶予がついて実刑を免れたものも入れると、違法薬物の所持や脅迫やストーカー行為や裁判所の命令違反など前科は軽く10を超える。

そんなロビンソンは、この7月にも難民に関する虚偽の主張を繰り返したことで、法廷侮辱罪にも問われてた。そして、その審理が7月にあったんだけど、ロビンソンは出廷せずにイギリスからトンヅラし、今は地中海のキプロス島に潜伏してる。で、ロビンソンは、潜伏先のキプロス島から、100万人近くいる自分のX(旧ツイッター)のフォロワーたちに、今回のサウスポートの殺傷事件の容疑者の少年を「ボートで入国した違法移民のイスラム教徒だ」とするデマを拡散した上で「行動を起こせ!」と煽ったのだ。

以前から「移民、特にイスラム教徒はイギリスにとって害悪でしかない」と主張して来たロビンソンのXのフォロワーは、その大半がロビンソンの主張に同調する「反移民」や「反イスラム教徒」という思想を持った極右勢力だ。そのため、ロビンソンの「今回も不法移民のイスラム教徒によって何の罪もないイギリスの子どもたちが犠牲になった。一体どれほどの事件が起これば、お前たちは怒りの行動に出るのか?」という煽りに、多くのフォロワーが簡単に乗せられてしまった。

まるでドナルド・トランプに扇動されて議会を襲撃したトランプ信者たちのように、ロビンソンのフォロワーたちはイギリス各地で「移民排斥デモ」を行なった。それは事件が起こったサウスポートの周辺だけでなく、イングランド北部のロザラムや中部のリバプールなど、少なくとも35もの都市で「反移民」「反イスラム教徒」のヘイトデモが行なわれた。

しかし、日本で在日コリアンに対するヘイトデモを繰り返す恥知らずどもを見れば分かるように、そもそも排外主義者に常識など通用しない。ネット上の極右サイトには難民申請中の人たちが滞在するホテルの一覧が表示され、冒頭に書いたように、暴徒化したデモ参加者たちはそれらのホテルに放火して回った。

そして、この暴動をさらに煽ったのが、X(旧ツイッター)の私物化が批判されてる米実業家のイーロン・マスクだった。イギリス各地での暴動がエスカレートして行く中、マスクは8月4日、自身のXに「イギリスでの内戦は避けられない」と投稿し、暴動が内戦にまで発展する可能性を示唆して煽りまくった。イギリスのスターマー首相の報道官は、マスクの投稿を厳しく批判し、ロイター通信は「イーロン・マスク氏がイギリスの暴動を掻き回している」と批判的に報じた。

で、ここで少し前に戻るけど、極右で反イスラム活動家のトミー・ロビンソンは、さっき書いたように数々の前科があるだけでなく、罪には問われてなくても、SNS上でのイスラム教徒や移民に対する過激なヘイトスピーチやデマの拡散を繰り返して来たため、2018年にはツイッターのアカウントを規約違反で「永久停止」されてた。

だけど、2022年10月、ツイッターを買収したイーロン・マスクは、ドナルド・トランプを始め、それまでに悪質なヘイトスピーチやデマの拡散などでアカウントが停止されてた悪質ユーザーたちを、2023年から「恩赦」と称して次々と復活させたのだ。BBCが追跡調査したところ、マスクが復活させた約1100のアカウントのうち、少なくとも190のアカウントが過去以上に憎悪と暴力的表現を助長させており、その筆頭がトミー・ロビンソンだったという。

ハリスのディープフェイク動画までリポストした挙げ句逆ギレ

ちなみに、反ヘイト運動団体「ホープ・ノット・ヘイト」の最高責任者のニック・ロウズは「トミー・ロビンソンのアカウントを復活させるということは、イーロン・マスクが彼の運営するXに憎悪に満ちたヘイトスピーチとデマ情報が流れることを許可したということになります」と指摘した。そして、トミー・ロビンソンのアカウントを復活させた1年後の今、今度はイーロン・マスク自身がデマを拡散して問題視された。

ドナルド・トランプの熱烈な支援者で、毎月70億円ずつトランプ陣営に寄付してるイーロン・マスクは、7月27日、ジョー・バイデンに代わって11月のアメリカ大統領選に出馬予定のカマラ・ハリスのディープフェイク動画をリポストしたのだ。これはカマラ・ハリスの実際の声を使用して生成AIで作成したもので、合成音声は次のように発言してる。

「私、カマラ・ハリスは民主党の大統領候補になりました。ジョー・バイデン氏が討論会でついにその老人性痴呆症を露呈したからです」

「私が選ばれたのは女性であり有色人種だからで、究極の多様性による採用です。だから、もしあなたが私を批判するなら、私はあなたが性差別主義者であり人種差別主義者だと主張します」

人並みの判断力のある人なら、カマラ・ハリスがこんなこと言うわけないと思うだろうけど、カマラ・ハリスの実際の声で流れるから、生成AIとか良く分からない人とかは騙されちゃうと思う。日本でも昨年11月、大阪府の25歳の男性が岸田文雄首相のディープフェイク動画を生成AIで作成し、Xに投稿して大問題になったことが記憶に新しい。

今回の場合は、動画を作った人は「カマラ・ハリスの政治広告のパロディー」というコメントを添えて投稿したので問題ないけど、パロディーであると書かずに「これは凄い!」というコメントを添えただけでリポストしたマスクは、自身が定めたXのプラットフォームポリシーに違反した。それなのにマスクは、批判が殺到すると「パロディーはアメリカの文化だ!」などとトンチンカンな開き直りで逃亡した。

自分で「選挙運動に使われる政治広告のパロディーを、パロディーだと明記せずに投稿してはいけない」というルールを作り、全世界のユーザーに押しつけておきながら、自分が真っ先にルールを破り、批判されたら開き直りって、サスガはトランプ支持者だよな(笑)。

で、イーロン・マスクはこんな人物だから、同じ過ちを何度も繰り返す。8月4日に「イギリスでの内戦は避けられない」などと投稿してスターマー首相の報道官から批判されたばかりなのに、5日後の9日、今度は極右政党が流した「デモ隊の逮捕者が増え過ぎたため、逮捕者用の収容キャンプが造られる」という捏造されたデマ情報を、マスクは意気揚々とリポストしたのだ。

以前のツイッター時代の「リツイート」、略して「RT」に当たるリポストは、他から回って来た投稿を自分のフォロワーたちに拡散する操作なので、そのユーザーが何人くらいのフォロワーを持っているかによって、拡散の規模が違って来る。そのため、誰にも迷惑の掛からない投稿をリポストするぶんには何も問題ないけど、誰かが流したデマ情報などを安易にリポストしてしまうと、フォロワー数の多いユーザーの場合は大変なことになる。

で、極右政党が流したデマ情報をホイホイとリポストしちゃったイーロン・マスクのXのフォロワー数は約1億9000万人、日本の人口より遥かに多い。そして、この約1億9000万人にデマ情報を拡散しちゃったマスクは、その後、その情報がデマだったと気づいてリポストを削除したけど、特に謝罪も説明もしていない。だから、今もそのデマ情報を「真実」だと信じたままのフォロワーが数えきれないほどいるわけだけど、マスクにとってそんなことはどうでもいいらしい。

暴動のきっかけとなったデマを最初に流した人物の正体

…そんなわけで、ここで話を極右活動家トミー・ロビンソンに戻すけど、日本でもネトウヨを始め保守系や右翼系の多くは「南京大虐殺はなかった」「従軍慰安婦は存在しない」「在日コリアンは在日特権で優遇されている」などのデマを垂れ流し続けてるけど、これは欧米でも同じこと。ドナルド・トランプは、今も安倍晋三のようにデマを垂れ流し続けてるし、つい先日も「日本の福島は放射能汚染であと3000年は人が立ち入りできない」などと発言した。

そして現在は、あたしの愛するテイラー・スウィフトがトランプを支持してるかのように捏造されたフェイク画像を自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿して問題になってる。テイラーは以前から「反トランプ」なのに、テイラーに似た女性がテイラーのファンを意味する「スウィフティーズ」にトランプへの投票を呼び掛ける画像や、「トランプを支持するスウィフティーズ」というメッセージ入りのTシャツを着た女性の画像などを次々と拡散してる。

そんなドナルド・トランプは、毎月70億円も寄付し続けてくれるイーロン・マスクと相思相愛で「次々と従業員をクビにして企業を黒字化させているマスク氏は素晴らしい経営者だ」と称賛してる。そして、自分が大統領に返り咲いたら、イーロン・マスクを大臣として迎え入れると宣言した。もう完全にイカレてるよ、アメリカの極右は…。

ま、それはそれとして、ネトウヨから極右活動家に至るまで保守系のスタンスの人たちの多くは、その情報が真実でも捏造された嘘でもどうでもいいのだ。重要なのは、自分たちが「敵」と設定して憎悪してる相手に対して、より多くの大衆が憎悪と排除の目を向けるようになることであり、そのための着火剤としての情報は、真実でも嘘でもどうでもいいのだ。だからトミー・ロビンソンは、以前からデマ情報の拡散に余念がなかった。

たとえば、今から6年前の2018年、トミー・ロビンソンは極右ユーチューバーとグルになり、自分がイタリアのローマで黒人男性に襲われている動画を作成し、その動画に「私は旅行先のローマで、アフリカからの違法移民に襲われた」というキャプションを付けて拡散した。この動画はイギリスで260万回も再生され、移民排除の機運の盛り上げに一役買った。

こんなことばかりしてる人物なので、今回のサウスポートの事件でも、どこからか流れて来た「サウスポートの事件の犯人はドーバー海峡をボートで越えて来た違法移民のイスラム教徒だ」というデマに「待ってました!」とばかりに飛び乗って、大衆を暴動へと煽り立てたのだ。

ちなみに、今回のデマを最初に流したのは、イギリス中部に住む55歳の女で、アパレル会社の役員だという。移民の流入によって仕事を奪われた貧困層ではなく、生活には余裕のある人物だ。この女は、すでに8月8日付で警察に逮捕されたけど、17歳の容疑者の名前を捏造し、デマ情報をXで拡散したことを認めたという。

日本でも何年か前に、安倍政権を持ち上げて野党議員に関するデマ情報をセッセと流してた人物が、自民党によるネット工作の内情について告白したことがあった。その記事によると、自民党のネット工作員の多くは50歳以上で生活が安定してる富裕層だという。その告白をした人物自身も、1000万円を超える年収のある50代半ばの男性だった。そして、自分は特に保守的な思想を持ってるわけじゃないけど、ネット上で匿名で他人に嫌がらせをするとストレス発散になるので参加していたと打ち明けた。

今回のイギリスの女が、どんな理由でデマ情報を拡散したのかは分からないけど、移民の流入によって仕事を奪われ、生活が苦しくなって移民を逆恨みしている人物でないことだけは分かった。だから、後は思想的に排外主義者なのか、もしくは日本の自民党のネット工作員と同じく、単なるストレス発散として他者への嫌がらせを繰り返してた人物ということになる。

日本人の誰もが「はぁ?」と首を傾げた安倍氏の発言

で、肝心のイギリス各地でのデモは、「容疑者の少年が違法移民だ」という情報自体がデマだったと報道されてからも、収まる様子がなかった。しかし、実際にイギリスで世論調査をしてみると、移民を嫌悪してる国民は約5%ほどで、完全にマイノリティーなのだ。そのため、ヘイトスピーチが連呼される移民排斥デモを見てられなくなったマトモな市民らが、ネット上で連携して、イギリス各地で7日、カウンターデモを行なった。

「NO TO RACISM(人種差別にNO)」などのプラカードを掲げたカウンターデモは数千人規模で、ロンドン北部やブリストル、ニューカッスルなど、移民排斥デモが予想されていた場所で開かれ、参加した市民らは「われわれは難民を歓迎する」と合唱しながら行進した。

日本でも、極右の排外主義者の集団が在日コリアンに対する排斥デモを行なうと、それに対抗したカウンターデモが行なわれるようになって来た。だけど日本の場合は「右翼 VS 左翼」という前時代の化石的な概念から卒業できない中途半端なインテリたちがカウンターデモの中心なので、マトモな一般市民たちが平和的に行なうイギリスのカウンターデモとは乖離してる。その一方で、移民排斥にしろ在日コリアン排斥にしろ、排外主義者のスタンスは欧米でも日本でも酷似してる。

…そんなわけで、さっきもちょっと書いたけど、他民族の排除を掲げる排外主義者にとっては、憎き相手を攻撃する口実などどうでも良いのだ。日本でも在日コリアンに嫌がらせを繰り返してるネトウヨを始めとした排外主義者たちは、攻撃のために掲げてる口実の大半が事実無根のデマなのだ。

たとえば、東京都知事が現在の小池百合子に代わってから、毎年9月1日に行なわれてる関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典への都知事からの追悼文が、ピタリと廃止された。これは、小池百合子が都知事に初当選した直後、自民党都議の中の極右思想の持ち主が「関東大震災での朝鮮人虐殺は左翼による捏造だ」という内容のトンデモ本と「追悼文を廃止せよ」という申し入れ書を自民党都議の連名で小池百合子に提出したからだと言われてる。

今年7月の東京都知事選では、ヤタラと「私は保守ですから」と自民党支持層へのリップサービスを繰り返してた小池百合子だけど、自民党系の保守派は、この「関東大震災での朝鮮人虐殺は捏造だ」という事実の改竄を始めとした歴史修正が大好きだ。そして、何でも自分の都合に合わせて過去を書き換える「歴史修正」のトップランナーが、自民党の安倍晋三だった。

毎年8月15日に日本武道館で行なわれる「全国戦没者追悼式」で、内閣総理大臣の式辞から「反省」という言葉を排除したのは安倍晋三だ。そして、安倍晋三が「反省」という言葉を排除したことに呼応するかのように、天皇陛下のおことばに「反省」という言葉が使われるようになった。菅義偉も岸田文雄も、安倍晋三に右へ倣えで式辞に「反省」という言葉を使わずに来たけど、今年も岸田文雄の代わりに天皇が「深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い」と述べてた。

で、どうして安倍晋三が過去の戦争について「反省」という言葉を排除したのかと言うと、安倍晋三は過去の戦争について反省してない…つーか、反省する必要などないと思ってたからだ。ちょっと古い話だけど、2005年の小泉政権下で、当時、自民党の幹事長代理だった安倍晋三は、月刊誌『Voice』7月号の誌上対談で「ポツダム宣言」について、次のように述べてる。

「ポツダム宣言というのは、アメリカが原子爆弾を二発も落として日本に大変な惨状を与えたあと、『どうだ』とばかり叩きつけたものです」

中学校の「歴史」の授業の「第二次世界大戦」のとこを、居眠りしないでちゃんと聞いてた人なら、この安倍晋三の発言に、誰もが「はぁ?」って首を傾げたと思う。だって、時系列がデタラメだからだ。

安倍氏はポツダム宣言を一度も読んだことがなかった?

あたしが中学校の「歴史」の授業で教わった昭和20(1945)年の終戦に向けての流れは、まず、日本に対して「ポツダム宣言」が発せられたのが7月26日で、日本が「ポツダム宣言」を受諾しなかったから8月6日に広島、9日に長崎に原爆を落とされた。そして、圧倒的な軍事力の差を見せつけられた日本が白旗を揚げて降伏し「ポツダム宣言」を受諾したのが8月14日で、翌15日に昭和天皇による玉音放送、そして9月2日に公式調印。これは1ミリも動かすことのできない歴史的事実だ。

それなのに安倍晋三の脳内では、「ポツダム宣言」は広島と長崎に原爆を落としてから「どうだ」とばかりに突きつけて来たものってことになってたのだ。ま、百歩ゆずって一般市民なら、こんなふうに間違った歴史認識の人がいても特に問題はない。だけど、敗戦国の政権与党の政治家が、自国の敗戦までの流れを知らなかっただなんて、シャレにもならない。

だけど、安倍晋三はこんな認識だったから、2012年12月の総選挙で政権に返り咲き、第2次安倍政権をスタートしてから、2013年8月15日の「全国戦没者追悼式」での式辞を皮切りに「反省」という言葉を排除したのだ。そして、このトンチンカンな歴史認識を問題視した日本共産党の志位和夫は、2015年5月20日の通常国会の党首討論で、安倍晋三に質問した。

志位和夫は、「ポツダム宣言」が発せられたのは何月何日、原爆投下は何月何日と何日、だから「原爆を落としてからポツダム宣言を突きつけて来た」という総理の認識は事実誤認である‥‥と、明確に間違いを指摘した。そして「日本の戦争は侵略戦争であり、誤りであったとポツダム宣言は指摘しています。総理は戦後政治の出発点となるこの宣言を認めないのですか?」と詰め寄ると、安倍晋三は耳まで赤くして次のように答えた。

「私はポツダム宣言をつまびらかに読んでないので、今ここで答えられません」

野党席から「どよめき」が起こった。まさか日本の首相が「ポツダム宣言」を読んでいなかったなんて…。そもそも「ポツダム宣言」はわずか13カ条で、レポート用紙2枚ほどの内容。中学生でも5分もあれば読めるものだ。逆に「部分的に読む」ことのほうが難しい。それなのに「つまびらかに読んでない」と言うことは、結局「一度も読んだことがない」という意味に他ならない。

志位和夫から「総理の最大の政治信条は『戦後レジームの打破』ですが、戦後政治体制の原点中の原点は『ポツダム宣言』です。それをよく読まないで『打破』を言うのは政治家として根本的な資質が疑われます」と指摘された安倍晋三は目が泳ぎ始め、意味不明なセリフを繰り返すことしかできなくなった。あたしは当時、この党首討論をネット配信で何度も繰り返して観たので、安倍晋三の狼狽した姿を良く覚えてる。

結局、「ポツダム宣言」も読まずに「戦後レジームの打破」を旗印に掲げ、自分の都合に合わせて歴史的事実を勝手に書き換え、毎年8月15日の「全国戦没者追悼式」での総理大臣の式辞から「反省」という言葉を排除した安倍晋三という歴史修正主義者の本丸は、「改憲」を踏み台にした戦前回帰だったんだろう。そうとでも考えなければ、あまりにも稚拙で無理があり過ぎる安倍晋三のトンデモ発言の数々に理由が見出せない。

安倍晋三は、誰もが知ってる歴史的事実でさえも平然と書き換えてしまうような人物だったので、保身のために森友学園に関する公文書の改竄を部下に指示することなどビフォー・ブレックファスト、朝飯前だった。これは加計学園問題も桜を見る会の問題も同様で、安倍晋三が疑惑の中心にいた問題の数々は、そのすべてが全容解明に至る前にウヤムヤにされて行った。

保守派を自称する人々が第一に優先して守りたいもの

…そんなわけで、保守派を自称する人たちが何を守りたいのか?…それは人それぞれだと思うけど、安倍晋三しかり、ドナルド・トランプしかり、トミー・ロビンソンしかり、目的のためなら平然と歴史を改竄したりデマ情報を拡散するような人たちに共通してるのは、まず第一に優先して守ろうとしているのが自分自身、つまり「保身」だという点だ。

今回、イギリスで起こった暴動にしても、1000人近い人々が逮捕され、500人近い被告が有罪判決を受けて何年間も刑務所へ送られるのに、その暴動を扇動したトミー・ロビンソンは、キプロス島のリゾート地のプールサイドでバカンスを満喫してる画像を投稿した。百歩ゆずって、キッカケとなったサウスポートの殺傷事件の容疑者の少年が、本当に違法移民でイスラム過激派だったのならともかく、その発端は捏造されたデマ情報だったのだ。デマ情報などに踊らされて何年も刑務所へ行くことになるなんて、これほどバカバカしいことはない。

2021年1月6日にアメリカで発生した議事堂襲撃事件にしても、ことの発端は前年11月の大統領選挙でジョー・バイデンに負けたドナルド・トランプが、自分の敗北を認めずにデマを吹聴したことだ。議会でバイデンの次期大統領就任が正式に確定されるこの日、ホワイトハウスに隣接した広場で支援者を集めた集会を行なったトランプは「私の選挙での勝利は極左の民主党の奴らによって盗まれた!」と何の根拠もないデマを繰り返し、支援者らを「今から議事堂へ行くぞ!」と扇動した。

そして、その支援者らの大行進に、ネットでこの情報を知った極右勢力やQアノン信奉者などが次々と加わり、議事堂襲撃へとエスカレートした。この暴動では、警察官3人を含む計10人が死亡し、これまでに1000人以上が起訴され、すでに多くの参加者が刑務所へ送られた。中には18年の禁固刑を言い渡された者もいる。だけど、デマ情報を拡散して暴動を扇動したドナルド・トランプは、複数の罪状で起訴されつつも、この起訴すらも「民主党による選挙妨害だ!」と、これまた何の根拠もないデマで批判し続けてる。

でも、もしも今年11月の大統領選挙でトランプが勝てば、たとえすべての罪で有罪判決を受けたとしても、ドランプは自分自身に大統領令で「恩赦」を出し、自身の犯罪をすべてチャラにすると見られてる。つまり「都民ファースト」と連呼してた小池百合子の実体が「自分ファースト」だったように、「アメリカファースト」と繰り返すドナルド・トランプも、その実体は「自分ファースト」だったというわけだ。

トミー・ロビンソンやドナルド・トランプと同類の安倍氏

そして、自分の保身のためには自殺者を出しても公文書の改竄を強行したと見られてる安倍晋三も、例に違(たが)わずトミー・ロビンソンやドナルド・トランプの同類だ。どんなにご立派な政策や目標を掲げても、そんなものはあくまでも選挙で大衆を騙すための撒き餌であって、本気で達成する気など毛頭ない。2007年の第1次安倍政権で発覚した「消えた年金問題」にしても、安倍晋三は「来年の3月までに、最後の1人まで、最後の1円まで解決します!」と連呼したけど、「最初の1人」も解決せずに後の民主党政権に丸投げした。

同じく2007年、安倍晋三は夏の参院選で「私の内閣で北朝鮮の拉致被害者を最後の1人まで取り戻します!」と連呼したけど、結局「最初の1人」すら取り戻せなかった。ちなみに、2013年に日本維新の会から参院選の比例に出馬して政界復帰を果たしたアントニオ猪木は、当時の首相だった安倍晋三に「力道山のパイプを使った北朝鮮との水面下の接触」を打診したけど、安倍晋三はこれを拒否したという。

この一件だけでも、安倍晋三が選挙のたびに思い出したように繰り返してた「拉致問題の解決は安倍政権の最優先課題です!」という言葉が、集票のための撒き餌だったと良く分かる。安倍晋三にとって拉致問題は、選挙の時に自分のナショナリズムやリーダーシップをアピールするための便利な道具であって、決して本気で解決する気などなかったのだ。

選挙のためなら拉致問題も利用し、集票のためなら組織的に裏金を作って脱税もする。政権維持のためなら韓国のカルト教団とも手を結び、自分が首相であり続けるためなら公文書ですら改竄する。これが安倍晋三の確立した「新しい保守」の姿であり、この延長線上にあるのが、デマで大衆を扇動するトミー・ロビンソンやドナルド・トランプなど「新しい極右」なのだ。

…そんなわけで、今年は世界的な「選挙イヤー」で、1月には台湾総統選、2月にはインドネシア大統領選、3月にはロシア大統領選、4月には韓国総選挙、5月にはインド総選挙、6月にはEU議会選挙とメキシコ大統領選が行なわれた。そして、日本でも夏までに複数の補選と東京都知事選が行なわれ、来月にも自民党総裁選とその後の衆院選が行なわれ、11月にはアメリカ大統領選も行なわれる。

これらはすべて「新しい保守」や「新しい極右」によるデマ情報が拡散されるには十分過ぎるほど肥沃な土壌であり、自民党のネット工作員たちもトランプを支持するQアノン信奉者たちも、ここぞとばかりに敵対勢力を貶めるデマ情報を垂れ流して来るだろう。そしてそれは、生成AIで作成した一見フェイクとは思えない精巧なデマである可能性が極めて高い。どうか皆さん、選挙を狙ってピンポイントで攻めて来る悪質なデマに踊らされないように、十分に注意してほしい。

(『きっこのメルマガ』2024年8月21日号より一部抜粋・文中敬称略)

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