■異例人事で炙り出された「思惑」 日本初の女性検事総長 | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:異例人事で炙り出された「思惑」。安倍政権に“好都合な結果”で出世を重ねた「日本初の女性検事総長の夫」の名前2024.07.04より転載します。
 
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https://www.mag2.com/p/news/602896
 
km20240703
 

6月28日、検察トップに日本初となる女性を起用する人事を決めた政府。メディア各社もこれを大々的に報じましたが、その裏には岸田政権の「思惑」が存在するようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、このタイミングで女性検事総長を誕生させた岸田政権の意図を解説。その上で当人事を、「安倍氏譲りの権力の私的流用」と厳しく批判しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:岸田につける薬はない

岸田首相につける薬はあるのか。政府が検察トップに初めて女性を据えた思惑

新聞社が報じるニュースには、各社の記者が独自に取材した個別のニュースと、政府が記者クラブに垂れ流した世論誘導のニュースがありますが、今は新聞各紙がネットでもニュースを配信してるので、後者のニュースは簡単に判別できるようになりました。政府が何らかの意図を持って垂れ流す後者のニュースは、どの新聞社の記事も文面と内容がほとんど同じだからです。

で、6月28日(金)の午前10時過ぎ、各新聞社が一斉に報じたのが「検察トップが初めて女性に!次期検事総長に畝本直美(うねもと なおみ)東京高検検事長を起用する人事を閣議決定」というニュースでした。そして、その内容はと言えば、新聞もテレビもすべてのメディアが、ヤタラと「女性」を強調した次のような内容でした。

初の女性検事総長が誕生します。政府は7月9日付けで検察トップの検事総長に畝本直美氏(61)を起用する人事を閣議決定しました。畝本氏は、最高検の総務部長や公判部長を務めた後、広島高検の検事長を経て、2023年1月からは東京高検の検事長を務めています。検事総長に女性が就くのは初めてです。

日本のジェンダーギャップ(男女格差)は何十年も前から先進国の中で最低水準で、先日6月12日に発表された世界経済フォーラム(WEF)の「グローバル・ジェンダーギャップ・レポート」の2024年度版でも、日本は世界146カ国中118位でした。前年度の125位から小幅に上昇したとは言え「先進国の中で最低水準」であることに変わりありません。

日本は特に、政治・経済分野での女性進出が低迷しており、旧態依然とした男性社会であることが国連からも指摘され続けて来ました。そして、その大きな原因とされて来たのが、政権与党である自民党や、その自民党の巨大スポンサーである保守系や右翼系の団体の前時代的な思想であることも指摘されて来ました。

このような背景で、今回の「初の女性検事総長が誕生」というニュースは、自民党政権にとってプラスの効果をもたらします。だからこそ「閣議設定」という政権内部の者しか知りえない情報を岸田政権はドヤ顔で垂れ流し、すべてのメディアに一斉に報じさせたのでしょう。そして、このニュースを見聞きした多くの国民は「岸田政権もたまには良いことをするんだな」と思ったことでしょう。

それにしても、突然「8月から3カ月間の電気・ガス料金を補助する」と言い出したり、もはや崖っぷちどころか絶賛沈没中の岸田首相なので、なりふり構ってられないのは分かりますが、あまりにも意図が見え見えすぎます。そのため「初の女性検事総長が誕生」という本来は喜ぶべきニュースも、多くの人は懐疑的に見てしまい、中には「岸田政権が初の女性検事総長に抜擢した畝本直美氏は、自民党の裏金議員たちをカタッパシから不起訴にした張本人だ!」などと言い出す人まで出て来る始末。

「日本初の女性検事総長の夫」が森友事件で果たした役割

こういう勘違いをしている人たちに簡単に説明しますが、自民党の裏金事件を捜査し、85人もの裏金議員たちをカタッパシから不起訴にしたのは、東京地検特捜部であり、東京地検の現在のトップは山元裕史検事正です。一方、岸田政権が検事総長に抜擢した畝本直美氏は、東京高検の検事長なので、今回の自民党の裏金事件には関わっていません。

ザックリ説明すると、検察庁は裁判所に対応して設置されていて、地方検察庁は地方裁判所に、高等検察庁は高等裁判所に対応しています。自民党の裏金事件を捜査した東京地検特捜部は、東京地裁に対応した組織であり、畝本直美氏が検事長をつとめる東京高検は、東京高裁に対応した組織なので、同じ事件を同時に扱うことはありません。

つまり、東京地検のトップである山元裕史検事正が、さらに上のポストに昇格したというのであれば「裏金事件で自民党に便宜を図ったご褒美の人事」と言われても仕方ありませんが、無関係な畝本直美氏への批判はスジ違い…ということなのです。

しかし、畝本直美氏には、こうした誤解が生まれてしまう土壌があったのです。畝本直美氏の2歳年上の夫、畝本毅(うねもと つよし)氏は、東京地検特捜部の副部長、東京高検の検事、大阪地検特捜部の部長、金沢地検の検事正などを歴任して、2017年には大阪地検の次席検事に就任しました。

2017年と言えば、当時の安倍晋三首相の妻の昭恵氏を名誉校長にした小学校の建設のために、9億円以上もする国有地がタダ同然で払い下げられた「森友学園問題」で、国会が紛糾していた年です。この問題を巡って財務省理財局の局長だった佐川宣寿氏や、近畿財務局が行なった公文書の改竄や隠蔽などの捜査を担当していたのが、大阪地検特捜部の山本真千子部長でした。そして、その直属の上司が、大阪地検の次席検事だった畝本毅氏だったと言われています。

翌2018年3月7日、近畿財務局の職員だった赤木俊夫氏が自殺し、上司から公文書の改竄を命じられていたことが発覚しました。そして同年5月31日、大阪地検は大阪中之島合同庁舎で「森友学園問題の捜査終結」の記者会見を行ないました。会見には、告発された財務省関係者38人全員を不起訴処分とした山本真千子部長、新河隆志副部長らとともに、直属の上司である畝本毅氏も同席しました。

しかし、山本真千子部長は「真相を解明するため慎重に検討した」と述べるばかりで、どうして関係者全員を不起訴処分としたのかについての具体的な説明はありませんでした。また、安倍首相など政治家の関与についても「お答えを差し控える」と、国会で良く聞くセリフを繰り返してお茶を濁し、9億円を超える国有地がタダ同然になった理由についても、まったく説明されませんでした。

そのため、野党からは「何も解明されていないのに安倍政権が検察とグルになり強引に幕引きを図った」と強く批判されたのです。しかし、安倍政権にとっては百点満点の結果となり、畝本毅氏は、翌2019年には大阪高検の次席検事へ、2021年には大阪地検の検事正へ、2022年には高松高検の検事長へと順調に出世し続け、2023年7月に定年退職しました。

この1年ごとの出世というバタバタした人事には、毎年莫大な退職金が貰えるというスーパーボーナスがもれなく付いて来るので、毎月の電気代やガス代にも苦しんでいるあたしのような庶民には、本当に羨ましい限りです…なんて愚痴もこぼしてみつつ、今回の畝本直美氏の検事総長就任のニュースと同じタイミングで報じられたのが、4年前の「東京高検の黒川弘務検事長の定年延長問題」に関する大阪地裁の判決のニュースでした。

大阪地裁が出した自民党に忖度なしの「真っ当な判決」

今回の自民党の裏金問題を告発した神戸学院大学の上脇博之教授は、裁判に出廷するためにスーツを着ていても、トレードマークの頭のバンダナは外さないという徹底したバンダナ愛好者ですが、それはそれとして、上脇教授は、こちらの黒川弘務氏を巡る疑惑についても、自らが原告となって訴訟を起こしていました。

安倍首相が嘘と虚勢だけで8年近くも政権を維持して来られたのは、2014年に設立した「内閣府人事局」によって国家公務員の人事権を人質にし、各省庁の高級官僚たちを思い通りに操ったからですが、それは検察にも及びました。当時の東京高検検事長だった黒川弘務氏は、菅義偉官房長官と極めて近い関係で、安倍首相の希望は菅官房長官を通して黒川検事長へと伝達されていました。

安倍首相はこの便利な飼犬を失いたくなかったため、2020年2月に定年を迎える黒川検事長の定年を延長し、検事総長に就かせようと目論んだのです。そして、長年にわたる「国家公務員法の定年延長制は検察官には適用されない」という政府見解を、法務省に指示して2020年1月までに「検察官にも適用される」と変更させたのです。

この法務省内での協議に関する記録が開示されれば、安倍首相が人事権を人質にして法務省に圧力を掛け、白いものを黒と言わせた悪事の証拠が白日の下に晒される可能性もあるのです。そのため上脇教授は、2021年9月、その協議記録の開示請求を行ないました。しかし、法務省は「文書は作成していない」と嘘をつき、不開示とされたのです。そこで上脇教授は「公文書管理法で文書の作成が義務づけられている」と異議を唱え、2022年1月に提訴しました。

すると法務省は、定年延長制を検察官にも適用されるように変更した文書の存在は認めたものの「黒川氏のケースとは無関係」などと、これまた苦しい嘘をつき、開示請求の棄却を求めたのです。「無関係」だと言うのなら、それこそ堂々と開示すればいいじゃないですか(笑)。

そして、昨年12月には、当時の法務事務次官だった辻裕教(つじ ひろゆき)氏が証人として出廷し、「定年延長は当時の安倍首相が重用していた黒川氏を検事総長にするためだった」という上脇教授の主張に対して「そのようなことはない」と否定しました。こうした流れから今回の判決に至ったわけですが、大阪地裁の徳地淳裁判長は次のように述べました。

「当時の安倍晋三首相が閣議決定を行なった日は、黒川弘務氏の定年退官予定日のわずか7日前であり、黒川氏の他に該当者が1人もいないことから、検察官の定年に関する解釈変更は、黒川氏の定年延長が目的だったと考えざるをえない」

そして、徳地裁判長は法務省に「文書の開示」を命じたのです。ただし、安倍首相が法務省に指示したとされる文書の開示は、証拠がないとして退けられてしまいました。ま、どちらにしても、法務省はナンヤカンヤと屁理屈を並べて、毎度お馴染みの「海苔弁」を開示するのでしょうが、それでも、最近は沖縄の辺野古の新基地に関する訴訟など、司法たるものが自民党政権におもねった不当判決ばかり連発していたので、久しぶりに真っ当な判決を見て胸がスッキリしました。

それにしても、時の首相がここまで法を捻じ曲げて自分の飼犬を東京高検の検事総長にしようと目論んだのも束の間、肝心の黒川弘務氏本人が、新型コロナ禍で外出が制限されていた時期に、身内の新聞記者らと賭け麻雀を打っていたことがバレちゃって辞職って、あまりにもアッケない幕切れでしたよね。

「バカにつける薬はない」という言葉しか浮かんでこない現状

そして、安倍首相の負の遺産をそのまま受け継いだ現在の岸田文雄首相も、安倍首相と同じく「閣議決定」で、畝本直美氏を東京高検の検事総長に抜擢しちゃったのです。畝本直美氏本人には何も問題がないとは言え、検察トップの検事総長を、支持率が20%にも満たない崖っぷち政権が「閣議決定」だけで決めるなんて、とんでもない話です。それも、下落が止まらない支持率に歯止めを掛けるための「国民へのアピール人事」なのですから、もはや完全に「権力の私的流用」としか言いようがありません。

安倍首相の場合は、自分が悪事を働いている自覚を持ちながら「閣議決定」を連発していたのですから、ある意味、スジだけは通っていました。しかし、岸田首相の場合は、自分がやっていることが悪事なのか何なのかも分からずに、すべてその場の思いつきで権力を乱用しているのです。

その最たるものが、能登半島地震には半年が過ぎた今も補正予算すら組まずに予備費だけで小規模に対応しているくせに、海外にはバラ撒き放題という「税金私物化」なのです。そして、これもまた「外交成果による支持率回復」が狙いなのですから、まったくもって何をか言わんやです。岸田首相を見ていると、もはや「バカにつける薬はない」という言葉しか浮かんで来ません。

(『きっこのメルマガ』2024年7月3日号より一部抜粋・文中敬称略)

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