■極めて“不適切”な2つの点。文科省「重大事態いじめのガイドライン」 | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:極めて“不適切”な2つの点。文科省「重大事態いじめのガイドライン」改定案を“いじめ探偵”が厳しく指摘2024.06.25より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/news/602122
 
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「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」とされる「重大事態いじめ」の定義。文部科学省は先日、このいじめ重大事態の調査に関するガイドラインの改定素案を公表し各メディアが大きく報じましたが、識者はこれをどう見たのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、「不適切と断定できる点がある」としてその部分を指摘。さらにこのままでの「改悪」を許さないために、いじめの被害当事者サイドが取るべき行動を提示しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:文科省、命にかかわる重大事態いじめのガイドライン改悪か?

黙っていればこのまま改悪?文科省が公表した「重大事態いじめのガイドライン」改定素案

6月19日、いじめ防止対策推進法に基づく「いじめ重大事態の調査に関するガイドライン」の改訂素案が公開されニュースとなった。

日常的に「重大事態いじめ」に対応している私にとっては、常に触れるガイドラインであり、不正や隠ぺいが頻発する環境下においては、被害者の拠り所ともなる重要なガイドラインである。

ちなみに「重大事態いじめ」とは、生命や財産などの被害といったまさにニュースになるような酷い被害が生じた疑いがある「いじめ」のことを指し、多くの場合は犯罪行為が確認されたり、著しい人権侵害行為が発生しているもののことだ。

当初のものは、平成29年3月版のもので、表紙を含めて18ページであった。簡素にまとめられており、読んだ印象としては、国がちゃんとやろうぜと言っているのに、なぜ隠蔽をするのだ、いい加減にしろというものであった。例えば、いじめの調査をしていないのに「いじめではない」と言ってはならないという内容が記載されていたりする。一方で、年間1,000件を超える相談や100件近い重大事態いじめの対応をする私からすれば、ガイドラインではやってはダメと具体例で示されている行為を学校が行っている率はかなり高い。

当然、自らの仕事に直結する僅か18ページのガイドラインに目を通していない教職員は存在しないであろうし、管理職ともなる校長副校長、指導や監督をする教委の職員が知らぬはずもないという前提から、率直に「日本語読めますか?」と質問してしまうのだが、浮き彫りとなるのは、読んでいない、知らないという率が圧倒的に高いのだ。

だから、はじめて重大事態いじめに関するガイドラインを見た教育側の職員は、自らの言動を事前に予見していたマジックショーを見るように、唖然として押し黙ってしまう。

一方で、知っていますという者は、わかっていながらダメだと書かれている行動をしているのだが、「ガイドラインはガイドライン、破っても罰はないし、法律ではない」と開き直るのだ。

「3.6倍のちゃんとやれ!」というメッセージか

さて、改定素案はといえば、そのページは表紙目次を含めると66枚もある。内容もかなり細かく分類されており、当初の18ページのものと比べれば、「3.6倍のちゃんとやれ!」というメッセージではないかと思われるほどだ。

ただし、文科省のホームページで公開されているとはいえ、探しづらい。ホームページ内の検索機能を使ってやっと多辿り着けたという印象だ。

念のため、リンクを貼っておく。

いじめ防止対策協議会(令和6年度)(第1回) 配付資料

特に被害当事者やその関係者の方は、本記事を読んだら、すぐに読んで、これはダメだというところをチェックし、以降予定されているパブリックコメントで指摘をしなければならない。

「これまでの意見のまとめ」に覚えた違和感

各報道機関のニュースでは、平時における準備や警察との連携、自治体における第三者委員会の予算確保など新たに加わった項目に着目して報じているが、ガイドラインの中で新たに言及された改悪があるのだ。

その部分指摘の前に、まずは、文科省ホームページで確認できる「これまでの意見のまとめ」を見てみよう。

概ね「これまでの意見のまとめ」は広範囲にこれまで起きていた問題を取り上げているもので、全体としてはガイドライン改定に盛り込んだ方が良いだろうとおもわれるものだが、私がこれを読んでいて違和感を覚えたのは「調査委員の第三者性の確保」という項目だ。

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「PTAの役員」が調査員になるという言語道断

PTAの役員が重大事態の調査委員を行う場合、地域の中で新たな対立を生んでしまうのではないかと考えられる。
(↑「これまでの意見のまとめ」より抜粋)

まだPTAの役員を専門委員にする自治体があるのか…委員となる場合の基本的な柱は「専門性」「第三者性の担保」だ。一般の業界でトラブルが発生し、これに第三者委員会を設置して原因追及などの調査を行う場合、「専門性」「第三者性の担保」がないという委員はいない。理由は専門性が無ければ調査ができないし、第三者性が担保されていなければ第三者とは言えないわけで、成立しないからだ。

そこにきて、「PTAの役員」をという専門性が無い者が調査員になるというのは、そもそもで言語道断だろう。一方で、実際にPTAの役員をやっている方が指名されたらどう思うのだろうか。おおよそ「できません」の一択ではないのだろうか。そうでなければ、断れない柵があるか、そもそも無責任な人であると言わざるを得ないだろう。

「えっ、いじめに法律あるの!」と驚いていた民生委員を専門委員にしてみたり、地域の顔役をとりあえずの委員にして、会議で昔話をするというとんでもない事態が起きている自治体がある中だから、こうした非専門の委員がいることが問題に上がるのは良いが、国の施策の会議でこうした意見が出たのは、いかに教育界が第三者委員会を軽く見ているかわかるのではないだろか。

ちょっとなにいっているかわからない意見も

我々の団体にも他の県から推薦してほしいという依頼がくるが、同じ県内に住んでいるからといって当該自治体の利益を守るスタンスに立っていると見られてしまうのは実態にあっていないと考える。弁護士であれば、自治体を相手に訴訟を起こす場合もあり、住んでいると学校や自治体の利益を考えるようになるから公平・中立でないと思われてしまうのは違う。一般的には、他の県でないと公平性・中立性が保てないということはないので、ガイドラインにもしっかり書き込んでいく必要がある。
(↑「これまでの意見のまとめ」より抜粋)

事実として、県外から第三者委員会の委員を選出してほしいという要望はかなりある。しかし、これには根拠があるのだ。そして地域差がある。例えば、東京や神奈川、大阪など大都市圏の都道府県においては、多くの専門家がおり、自治体からの圧力は大した影響を及ぼさない。一方で、地方になると専門家を見つけるのは厳しいものになるのだ。

例えば、四国地方の事件で、私が地域の専門家に依頼ができないものかと探し回ったことがあるが、いるにはいても隠ぺいをした教育委員会の仕事をしているとのことで断られた。当然、利害関係者になる者に依頼は出来きようもない。数日滞在して様々な会にも当たったし、地元の議員さんに協力を仰いで探したが、同様の事情ですべてダメであった。

つまり、同じ県内だからダメと言っているわけではないのだ。地方であればあるほど専門家となる者が少なく、ここで弁護士さんを事例に挙げているが、自治体の顧問弁護士になっていたりスクールロイヤーになっていたら、利益相反で被害側からの依頼は受けるのは憚られるのではないか。

また、第三者性で重要なのは、事実第三者であるかよりもその担保である。委員がどんなに良い人で、中立で公正な人物であっても、僅か関係性がある場合は、関係性がない専門家を選任すべきであるのだ。

つまり、この意見は前提が各第三者委員会の設置で起きる問題と異なるし、根本は、学校と教育委員会が不誠実でガイドライン違反を侵しまくり、被害側との信頼関係が崩壊して対立関係を起こしているからに他ならない。

文科省素案内で「不適切」と断言できる2点

「いじめ重大事態の調査に関するガイドラン」(素案)で訂正すべきところはいくつかあるが、その中でこの記載は不適切であると断言できる点を2点あげる。

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・不登校重大事態については、これまでも詳細な事実関係の確認や再発防止策の検討だけでなく、対象児童生徒の学校復帰や学びの継続に向けた支援につなげることを調査の目的として位置付けており、学校内の様子や教職員・児童生徒の状況は対象児童生徒が在籍する学校が最も把握していることを踏まえて、引き続き、原則として学校主体で調査を行うこととする。

・ただし、従前の経緯や事案の特性、対象児童生徒又は保護者の訴えなどを踏まえ、学校主体の調査では、調査目的を達成できないと学校の設置者が判断する場合や、学校の教育活動に支障が生じるおそれがあると学校の設置者が判断する場合には、学校の設置者主体として調査することを妨げるものではない。

(↑いじめの重大事態の調査に関するガイドライン_素案からの抜粋)

 

不登校重大事態というのは、いじめの申告など疑いがあって不登校定義となる年間通算30日間の休んでいる状態(あくまで目安)などのことを指すが、不適切ないじめ被害指導があるケースも散見される。

例えば、クラスの大半から仲間はずれや無視をされ、一部加害者から暴力的行為や物壊し物隠しなどの事実被害を受けていた被害者が担任教員に助けを求め、その保護者もいじめを正確に申告し、その対応を求めたところ、なぜか被害者が指導を受けてしまったケースなどでは、被害者の安全と心のケアのために不登校となることがある。

こうしたケースで、学校が主体の調査となることが原則となれば、学校は加害者側と被害者が単に学校が嫌でさぼっているだけという結論を導きかねないし、そもそも学校は不登校を起こす原因になっているから第三者ではなく当事者であるのだ。

ガイドライン素案では、「ただし書き」をいれて、その限りではないとしているが、但し書きを入れるくらいであれば、この記載は必要ないだろうし、もっと事案を研究すべきであろう。

ガイドラインに明記するのは危険な項目も

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職能団体等からの推薦は、公平・中立に行われるものであり、職能団体等からの推薦を経て、調査組織に加わる者については第三者性が確保されていると考えられる。
(↑いじめの重大事態の調査に関するガイドライン_素案からの抜粋)

大まかに異論はないとも言えるが明記すべきではない。理由は、第三者委員会の委員が交代することは事実あって、推薦を受けていながらも調査対象と利害関係があったケースがあるからだ。つまり、正確に書くのであれば、「職能団体から推薦があったとしても、第三者性が確保されているとは限らない」となる。

域内の他の学校を担当するスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、地域で活動する弁護士や医師、学識経験者等が、職能団体等からの推薦を受けて“第三者”の立場からも調査組織に加わる場合について、直接の人間関係又は特別の利害関係がなければ、当該重大事態が発生した学校と同じ地方公共団体内で職務に従事していたとしても、第三者性は確保されていると考えられる。
(↑いじめの重大事態の調査に関するガイドライン_素案からの抜粋)

これもガイドラインに明記するのは危険な項目なのだ。理由は極めて単純で、調査対象はいじめ自体の当事者のみならず、重大事態いじめという極めて酷い状況を作り出してしまった学校や教育委員会、学校法人にも及ぶケースがほとんどであって、調査対象となる個人及び組織との利害関係を考察する上で「同じ地方公共団体で職務に従事」していたら、その段階で利害関係者と言える状態になるからだ。

例えば、本紙で取り上げた小平市のケースでは、市教委が調査対象となっている状況下で市の関係者とも言える者が第三者委員会の委員となっていたり、調査対象である市教委が第三者委員会の調査報告書の試案を作成するとして問題となった。

これに市長は特に問題がないと発言し市報でもその発言が公開されているが、自分の頭でいかにおかしなことを言っているのか考えられないというのは、政治がガバナンスを失い市民の声が届かない百害あって一利なしだろう。小平市民の教育問題についてはもはや地獄そのものなのだ。とはいえ、小平市民には責任はない、そもそも現代選挙はよりマシな不幸を選ぶ外れくじだらけの罰ゲームが選挙なのだから。

【関連】ほとんど詐欺師の手口。いじめ被害者を泣かせる役人が跋扈する独裁都市「東京都小平市」の隠蔽工作

「重大事態いじめのガイドライン」に大きく足りない前提要素

「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(素案)に大きく足りない前提要素は、「学校」「教育委員会」私学の場合は「学校法人」までもその調査の対象に及ぶことがあるということだ。

この要素が足りないから、結果的に「予算問題」「人選の難しさ」を解消としようと安易な方法を推奨してもよいのではないかとなってしまっているのだ。

そしてその理由は、いじめ防止対策推進法成立の後、立法した国会議員が「ここまで教委が法律を守らないとは思わなかった」と口をそろえて言うほど隠ぺいや不正が横行し、法律施行後もあからさまに教職員が読む専門紙にいじめ防止対策推進法など守らないと豪語する校長がコラム執筆をするなどの反対運動が起きるなど、法律を守らない、ガイドラインを守らない問題があるからなのであり、本来は問題解決の要となり得る第三者委員会の設置権限が、法に依って「学校」と「学校の設置者」(公立では市教委、私学では学校法人)になっていることに尽きる。

つまり、法を守らないと反対している一部勢力がある学校や教委組織が第三者委員会の設置権者であり、その設置者が調査対象になりやすい傾向が鬼くそ強いという歪な立法問題がある。

だから、首長が再調査を指示することがあるのだし、いじめ問題の対応を教育委員会から分離する自治体もあるのだ。

実はこれを文科省関係者に話したところ、そんなことは当然わかっていると私は言われている。本来の意味でいじめに関わる環境を変えるには、いじめ防止対策推進法改正であり、この改正でより強化していかないと問題の打開の道はない。

今回のガイドラインの改訂は、パブリックコメントを募集して意見を取り入れるという。

前述の関係者は、被害側からの問題指摘については、今回の改定素案には本音では取り込まれていないことを薄々認めた上(被害関係団体は会議に参加していない)で、パブリックコメントを多くに被害者側から寄せて頂いてその意見を取り入れられればと考えている様子であった。

被害者及び保護者、関係する団体や専門家の皆さんは、特に本件パブリックコメント募集の際は、自らの意見をSNSに表明するのではなくきちんとパブリックコメントに送ってもらいたい。

ガイドラインを守らないのがそもそもの問題

今回、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」、現行のものと改訂素案を3回読み、比較のために再度読み返しました。見直したり確認したりというのを入れたら、もう何度読んだか…。

その上で、確かに記事の通り、直さないといけない部分や削除した方がよいという部分はありますが、それ以外のほとんどはより詳しく、より具体的になっており、よくやってくれたなという印象です。初等中等教育局児童生徒課生徒指導室においては、限られた人員でよく頑張ったねと言いたいところです、直すところ直せばですが。

だいたい官僚の働き方は、この人数じゃ絶対無理でしょという人員数で無理やり押し切る働き方をしますから担当室が鬼ブラック企業化していたのは想像つくんです。

さて、一方で、やはり被害当事者側などの人たちは、SNSでつぶやくだけではなく、きちんとパブリックコメントをしないと後で不満を言っても、本当に後の祭りなので、このくらいはみんな一致団結してもらいたいと思います。

それにしても、ニュースの直前に公表されるよという話を聞いたのですが、このガイドライン、文科省のホームページから探すのがそりゃもう大変でした。見つけてほしくないのか?と思ったほどです。また、あまり良くない方向に向かっているよという情報も聞いていましたから、どこまで改悪するのだろうかと思っていました。

ハッキリ言って、そもそもガイドラインを守らないところが問題を起こしているので、守らないのが問題なんじゃないと思うのです。であれば、守らないところは公表しろよとおもうのですが…まあ、決めている人たちがいますからね、ダメでしょうね。

いかりや長介風に言えば、「ダメだこりゃ」なんですよね。まあ、次いってみようですね。

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image by: 7maru / Shutterstock.com

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社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。

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