■Google社員の働き方に仕組みやルールよりも大事なことが隠されている | タマちゃんの暇つぶし

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マネーボイス:ニッポンよ、邪悪になるな。Google社員の働き方に仕組みやルールよりも大事なことが隠されている=辻野晃一郎氏2024年6月23日より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/money/1458472
 

世界各国から優秀な人材が集まるGoogle(以下・グーグル)。彼らは日々どのように働き、何を成長のエンジンとしてきたのでしょうか。そこには近年、国際的な産業競争力を急速に失いつつある“日本の行き詰まり”を打破するヒントはないのでしょうか。過去の記事では私が経験したグーグルの働き方を具体的に紹介してきましたが、皆さん自身や会社の働き方をより良くしていくためのヒントが1つでも2つでも見つかることを願っております。(『 「グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中」~時代の本質を知る力を身につけよう~ 』辻野晃一郎)

【関連】なぜGoogleは採用も最強なのか。面接官が「自分よりも優秀な人を採用しろ」と叩き込まれる納得の理由=辻野晃一郎

※本記事は、『「グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中」~時代の本質を知る力を身につけよう~』 2023年6月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にご購読ください。

プロフィール:辻野晃一郎(つじの こういちろう)
福岡県生まれ新潟県育ち。84年に慶応義塾大学大学院工学研究科を修了しソニーに入社。88年にカリフォルニア工科大学大学院電気工学科を修了。VAIO、デジタルTV、ホームビデオ、パーソナルオーディオ等の事業責任者やカンパニープレジデントを歴任した後、2006年3月にソニーを退社。翌年、グーグルに入社し、グーグル日本法人代表取締役社長を務める。2010年4月にグーグルを退社しアレックス株式会社を創業。現在、同社代表取締役社長。また、2022年6月よりSMBC日興証券社外取締役。著書『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』(2010年新潮社、2013年新潮文庫)など多数執筆。

「悪事を働かなくてもお金は稼げる」

「Wisdom of crowds(集団の叡智)」は、インターネット時代の重要な概念であると同時に、民主主義の存立根拠でもあります。過去に配信したメルマガ(2023年5月19日配信号)では、グーグルがホームページに掲載する「グーグルが掲げる10の事実」という10ヵ条の行動規範の中に、「ウェブ上の民主主義は機能する」という項目があることと、グーグルでの物事の決め方や進め方が極めて民主的だ、という話をしました。

さらに、その「10の事実」の中には、「悪事を働かなくてもお金は稼げる」という項目もあります。あるいは、在籍当時しばしば使われた言葉に、「Don’t be evil(邪悪になるな)」というものがありました。まるで、小さな子どもに親が言って聞かせるようなことが、あえて行動規範の中に盛り込まれて大切にされてきたのは、一体なぜなのでしょうか。

出典:Google公式サイトより

出典:Google公式サイトより

民主主義とは、上意下達やトップダウンではなく、「民」が「主権者」という仕組みです。すなわち、物事の良し悪しを、民が主体的に話し合って判断するのが本来あるべき姿です。その反対が、専制主義や全体主義です。

以前に、東芝の不正会計や財務省の公文書改ざんを例に出しましたが、これら組織ぐるみの犯罪に共通するのは、民主主義的なプロセスが機能する余地がほとんどなかった、ということでしょう。トップダウンでの命令に現場が抗することがほぼ不可能な環境の中で、これらの悪事が発生したのです。

すなわち、当時の東芝や財務省などの組織は、民主的に機能していたのではなく、全体主義的に機能していたということが言えると思います。「Wisdom of crowds」がまるで機能していなかったのです。この状況は今でも何も変わっていないでしょうし、日本の組織のみならず、このようなスタイルの組織が未だに多いのが世の中の現実だと思います。

これに対して、グーグルでは、たとえトップからの指示であっても、それが不正につながるようなものであったり、現場が納得できないようなものであったりした場合、現場では「Wisdom of crowds」が正常に機能して抵抗するのが当たり前でした。

あるいは、自分の周囲で何か良からぬことをしている人を見つけたら、黙認することはなく、あなたは何かおかしなことをやっているのではないか、と周囲が騒ぎ出して、そこから自浄作用が自然発生的に機能していました。

具体的な事例を挙げると、グーグルは、同社のAI技術を米国防総省の「Project Maven」という、ドローンを使った軍事技術の開発プロジェクトに秘密裏に提供していました。しかし、「Don’t be evil(邪悪になるな)」にこだわる社員がこれに気付き、多くの社員を巻き込んで「グーグルの技術を軍事転用すべきではない」と猛反発。CEOのスンダー・ピチャイに抗議声明文を突き付けました。

抗議声明文には数千名の社員が署名し、抗議退社した社員も多く出ました。このため、2018年、グーグルは同プロジェクトからの撤退を余儀なくされました。たとえCEOプロジェクトであっても、現場の社員たちのWisdom of crowdsが機能して、会社の方向性を軌道修正した事例といえます。

別の事例としては、筆者の在籍中に日本法人のマーケティング担当社員が、外部インフルエンサーに見返りを渡して、新製品について好意的な記事を書かせる、という事案が発生したことがありました。グーグルは、ステルスマーケティング、いわゆる「やらせ」を固く禁じていましたので、ポリシー違反にあたります。この時にも、それを見つけた現場社員がすぐに騒ぎ出して、自浄作用が健全に起動しました。

それを受けて、我々日本法人の幹部も直ちに事実確認や全社への情報共有、再発防止アクションの検討などを進め、最終的には、米国本社のコンプライアンス部門も巻き込んだ問題解決を図りました。当時、日本法人を預かる立場としては大変残念な事件ではありましたが、内心、グーグルの自浄能力の強さに舌を巻く思いがしたものです。

社内には、人一倍正義感が強く倫理意識の高い人たちが多かった印象です。これら多くの人たちが、違反や不正に気付くと必ず声を上げるのです。仕組みやルール以前に、内部統制に必要なプリンシプルに対する意識が高かったということが言えると思います。

Next: 中期計画も事業計画もないグーグル、一体なぜ?

OKRによる目標管理を最大活用

「OKR(Objectives and Key Results/目標と主要な結果)」は、もともと経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した「Management by objectives」という目標管理の仕組みが源流と聞きます。インテルの3代目CEOだったアンディー・グローブが好んで用いたとも言われています。グーグルでは、それをグーグル流にアレンジして、OKRと呼ぶ組織運営の仕組みとして全社的に活用していました。

数値目標など、できるだけ定量的な目標(Objectives)を明確にした上で、目標の達成を評価するための指標(Key Results)をいくつか設定し、その達成度を定期的に検証しながら軌道修正を繰り返していく仕組みです。これを使って、いわばソフトウェア開発におけるアジャイル的なスタイルで経営や組織マネジメントを行っていました。

日本企業では、3年越しや5年越しの中期計画を策定し、それをブレークダウンした単年度の事業計画に基づいて事業運営するのが一般的ですが、グーグルには、中期計画も事業計画もありませんでした。理由は、世の中の変化があまりにも激しいので、3年越し、5年越しの中期計画を策定したところで、あまり意味を持たないどころか、場合によっては有害にさえなると考えていたからです。

VUCA(ブカ)とも呼ばれる予測不能な時代に、綿密な計画を作ること自体に価値を見出していなかったのと、一度計画を作ってしまうと、それに囚われて硬直化してしまうことを嫌ったのでしょう。実際に、ここのところ、米中覇権争いの激化や、新型コロナによるパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻など、短期間にさまざまな不測の事態が発生して世の中が大きく変動しています。

グーグルのOKRは、何項目かにわたる全社レベルの大きなOKRに基づいて、各部門が部門ごとのOKRを策定し、最終的にはそれに沿う形で個人個人が自分のOKRを策定し自己申告します。それを上司とのやり取りを経て調整したものが各人のOKRとなり、3カ月周期で上司と共にレビューします。レビューの結果は、本人の業績評価に反映されると共に、さまざまな状況変化も踏まえて、次の3カ月間のOKRの軌道修正に活用されるというものです。

会社全体の大きな目標を常に認識しながら、それと紐づけて自分自身の目標とその達成具合を意識し、達成度や状況の変化に合わせて柔軟に軌道修正を掛けていくことを習慣づける上で、とても有効な手法であったと思います。

日本でも、最近の新興企業などがこのOKRを真似して導入するところが出てきているようですが、一般企業ではまだまだなじみが薄い仕組みだと思います。しかし、思考停止状態で旧来の中期計画策定をルーチン化しているような企業にとっては、予測不能な時代の目標管理手法として、学べる点もあるのではないでしょうか。

グーグルの世界最強の働き方

以上、まだまだ書き足りないこともありますが、「グーグルが最強の企業になったわけ」と題して4回にわたり紹介してきました。

実は、グーグル急成長の秘密は、本稿でも幾度か触れた「グーグルの掲げる10の事実」の中に余すところなくすべて公開されている、と言っても過言ではありません。グーグルは随時このリストを見直し、事実に変わりがないかどうかを確認しているそうです。私のメルマガと合わせて、この「10の事実」の各項目をじっくりと読み解いていただければ、業態や規模の大小を問わず、どのような企業や組織にとっても、きっと有益なヒントがいくつも見つかるでしょう。

さらには、最新の取り組み含めて、情報開示に積極的な企業でもあるので、公式ブログなどでその動向にアンテナを張っておけば、今後の世の中のトレンドについて見えてくることも多いと思います。

ここ数年、日本では「働き方改革」が声高に叫ばれてきました。そこにコロナも加わって、在宅ワークやオンライン会議などもようやく普及し始めました。しかし、働き方というのは、政府や経団連の旗振りに合わせて、みんなで横並びのルールを作ってそれに合わせることなどではありません。

企業の働き方は、その企業の競争力に直結しています。グーグルが世界最強の企業になったのは、テクノロジーやデータを味方にして、クラウドやデジタルの力をフルに生かしたユニークで世界最強の働き方を、グーグルがさまざまな試行錯誤を繰り返しながら自助努力で構築してきたからに他なりません。

「より優れた働き方とは何か」を常に他社に先駆けて真剣に追求し続け、日々進化させていく……グーグルの働き方に対する向き合い方は、そのようなものであったと思います。

この記事の著者・辻野晃一郎さんのメルマガ


※本記事は、辻野晃一郎氏のメルマガ『「グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中」~時代の本質を知る力を身につけよう~』2023年6月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に購読を。
 


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