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購買力平価でロシアのGDPが日本を抜いた。これはなぜか日本ではまったく報道されていない。この事実とともに、岸田政権の日本に対する国際的な評価が大きく下がっている。これがさらなる円安の背景にもなっている。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)
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日本のGDPはロシアに抜かれる、日本は大丈夫か?
購買力平価換算でロシアのGDPが日本を抜いた事実、ならびにそれを1つの背景とした岸田政権の統治する日本の国際的評価の低下について解説したい。
6月5日から8日まで、ロシアのサンクトペテルグルブで「第27回サンクトペテルグルブ国際経済フォーラム」が開催された。日本の主要メディアでは、スイスで開催されるウクライナ主導の「平和会議」に対抗する目的で開催された戦略的イベントであるとして報道されているが、現実はグローバルサウスを中心に139ヶ国から2万1,000人が参加し、980件を越える協定が締結された非常に重要なイベントになった。
プーチン大統領は1時間を越えるスピーチでは、ウクライナ戦争で対立している欧米諸国を厳しく批判しつつ、ロシア経済の拡大について次のように述べた。少し長いが引用する。
ご存知のように、ロシアのGDP成長率は昨年3.6%、今年第1四半期は5.4%でした。つまり、世界平均を上回っているのです。特に重要なのは、このようなダイナミクスが主に非一次産業によって決定されるということです。
参考までに、2023年には、私が申し上げたように、基礎産業で45.5%の成長がもたらされたと明記することもできます。それは何か?製造業、建設業、物流業、通信業、農業、電力供給業、その他住宅・共同サービス業。61.6%は、貿易、ホテル・レストラン、金融、その他サービス業である。
私たちは、世界の4大経済大国に入るという目標を掲げている。ところで、世界銀行の推計を含むいくつかの情報源によると、つい先週、世界銀行は追加計算を行い、ロシアを4位とした。日本より上だった。
GDPと購買力平価でロシアは4位。申し上げたように、日本より上です。しかし、申し上げたいことがあります。もちろん、ポイントはGDPの推計や計算のシステムにあるわけでも、形式的に4位ラインに到達することにあるわけでもない。
私たちは近いところにいる。ロシア、ドイツ連邦共和国、日本。その差は小さい。我々は先行しているが、その差は小さい。
しかし同時に、指導的地位は常に確認され、強化される必要があることも理解している。他の国々も立ち止まってはいない。長期的に一貫して高い成長率と品質を確保することが重要なのです。それが今日の我々の課題である。
そして、ドイツや日本の経済規模が私たちの隣にあるだけではありません。事実、他の国々も立ち止まってはいない。インドネシアはそのすぐ後ろにいる。人口は増え、経済は発展している。このことを決して忘れてはならない。
このように、ウクライナ戦争にもかかわらず好調なロシア経済の成長をアピールし、「世界銀行」の最新の統計で、購買力平価換算でロシアのGDPが日本を越え、世界第4位になったことを強く主張した。
ロシアのGDP「日本越え」
これがどういうことなのか、もう少し詳しく解説しよう。
6月初めに発表された「世界銀行」の修正データによると、ロシア経済が日本を抜いて購買力平価(PPP)ベースで世界第4位になったことが明らかになった。ロシアはすでにドイツを抜き、調整後で第5位の経済大国となっていた。
購買力平価(PPP)は別名「ビッグマック指数」とも呼ばれている。これは、例えばマックのビッグマックのように、世界のどの国にも存在している商品の価格を基準にしてGDPを推計する方法だ。例えば日本でビッグマックはだいたい480円する。一方アメリカではビッグマックの平均価格は、1,360円だ。ということは、日本の480円とアメリカの1,360円の価値は等しいということになる。
このような算定をグローバルに流通しているどの国にもある商品を複数指定して、GDPを算定する方法が購買力平価(PPP)だ。この方法だと為替相場の変動を排除できるため、ドルの価値を基礎にした名目GDPよりも正確だと見なされている。
「世界銀行」はデータを修正した結果、ロシアのランキングを改善し、ロシアは2021年に日本を追い抜き、それ以来4位を維持していると発表した。以前の計算は2017年のデータに基づいていたが、新しく発表されたランキングはは2021年のデータに基づいている。
以前、ロシアのプーチン大統領は、世界平均を上回る経済成長を実現するという目標を掲げていた。ウクライナ戦争が始まる前、ロシアの経済成長は世界平均から大きく遅れ、停滞に近かった。しかし、2022年のウクライナ侵攻後、ロシア経済は軍事ケインズ主義とも呼べる経済モデルの後押しを受け、現在、世界で最も急速に成長している主要経済国となっている。
そしてロシアは、予定よりも早く日本を追い抜いた。
Next: 購買力平価で見るとGDP首位は?どんどん落ちていく日本の評価…
プーチンは今年初め、購買力平価(PPP)で世界第4位の経済大国になるという目標を政府に明示し、2025年3月31日までにこの目標を達成するための方策を準備するよう内閣に指示していた。
ウクライナ戦争後、ロシアは経済モデルを変え、数十年にわたる緊縮財政を停止して大規模な投資を開始し、新たな経済成長に拍車をかけている。軍事産業複合体への投資と同時に、プーチンは民間経済にも投資し、平均的なロシア人の生活の質を向上させるために、国家プロジェクト、「2.1プログラム」を立ち上げた。ロシアの最貧困地域がこのプロジェクトの最大の受益者となり、インフレ、失業、貧困の合計である絶望指数は今年、過去最低レベルまで低下した。
「世界銀行」が今回発表した修正は2021年のデータに基づいているが、今後2024年のデータに基づき集計は行われると、ロシアのGDPのランキングはもっと上昇すると思われる。
ちなみに、以下が現在の購買力平価(PPP)によるGDPのランキングだ。
1. 中国
2. アメリカ
3. インド
4. ロシア
5. 日本
6. ドイツ
7. ブラジル
8. フランス
9. イギリス
10. インドネシア
(2024年6月3日、世界銀行発表)
変化する日本の評価
このような結果だが、ロシアが、購買力平価(PPP)のGDPで日本を抜いたことが「サンクトペテルブルグ国際経済フォーラム」のプーチン大統領のスピーチで発表されてから、日本のGDPがロシアに抜かれた事実は海外では驚きをもって報じられている。戦時下にあるロシア経済が予想外に強いことが印象づけられたのだ
一方、それとともに、この結果は日本の停滞をさらに印象づけ、日本への評価を一層引き下げる結果にもなった。ドル換算の名目GDPで日本のGDPがドイツに抜かれ、世界第4位となったことも驚きだったが、購買力平価(PPP)ベースとはいえ、ロシアにも抜かれたことは日本をウォッチしている多くのジャーナリストやエコノミストには一種の衝撃だったようだ。
基本的に、国としての日本の国際的評価は非常に高い。安全と安心、そして清潔さが保証され、医療や交通を含めた社会インフラが充実し、社会的な矛盾が相対的に少ない国としての高い評価だ。しかしながら、政治と経済、それも岸田政権の統治能力に対する評価は恐ろしく低いのが現実である。ロシアのGDPが日本を抜いたことは、この低評価をさらに強化するように作用しているように思われる。
ブラジル出身の国際的なジャーナリスト、ペペ・エスコバルも歯に衣を着せぬ手厳しい評価を日本に与えている。ちなみにペペ・エスコバルは、2001年の9.11が起こる10か月も前にイスラム原理主義運動の動向を綿密に取材した自著で、ニューヨークを標的にした大規模テロを予想し、注目されたジャーナリストだ。現在は、「アジアタイムス」などアジア圏の主要紙で記事を発表している。非常に著名なジャーナリストだ。
そのエスコバルだが、最近ユーチューブのインタビュー番組に出演し、日本に対する分析を聞かれ、以下のように答えた。
「現在の日本の政権は腐敗し切っている。相次ぐ政治スキャンダルへの対応で動きが取れなくなっている。はっきり言って、統治能力はもはやないのではないかと思う。
日本は敗戦のトラウマをまだ乗り越えていない国だ。アメリカに対する恐怖から、アメリカに距離を取ることができない国だ。アメリカのために自国の国益を犠牲にしかねない国が日本だ。日本の将来は、誰がリーダーになるかで大きく異なってくるだろう」
このように手厳しく岸田政権下の日本を批判した。しかしこのような評価は、ペペ・エスコバルに限ったものではない。記事が読みにくくなるので、いちいち引用はしないが、これは海外のジャーナリストやエコノミストでは一般的に見られる日本評だ。
端的に言うと、日本の支持率が低い岸田政権は、海外でも評価されているとはとても言えない状況なのだ。ロシアの購買力平価のGDPが日本を抜いたことは、岸田政権の日本に対するネガティブな評価を一層強化するように作用しているように見える。
Next: 海外は政権交代を期待している?岸田政権の増税へのネガティブな見方
岸田政権の増税へのネガティブな見方
岸田政権の低評価は、政治のみならず経済でもそうだ。
いま日本の主要メディアでは、所得税の定額減税の話題でもちきりだが、実際は岸田政権になってからは増税のラッシュなのである。定額減税というのは、増税の実態から国民の目をそらす材料として使われていると言われても仕方がない。
そしてこの増税は、岸田政権が経済を成長させる景気刺激策には、実は消極的である証拠だと海外では批判的に見られている。
ちなみに以下が、岸田政権は実施した増税である。
・社会保険料、健康保険料増額
・雇用保険料増額
・インボイス増税
・後期高齢者医療費負担増
・森林環境税
・住民税増税
・再生エネルギー賦課金増額
・電気料金値上げ、電気・ガス補助金終了
・子育て支援増税
・国民年金保険料納付、65歳まで延長
・ガソリン補助金終了
・防衛費増税
以上である。
円安の背景と政権交代
数回前の記事で、円安の背景になっているのは、財務省が円安是正の為替介入には本気ではなく、政府も日銀も実は円安を望んでいると国際金融市場には見ていることだと書いた。日本の経済は慢性的に停滞しており、そうした中、政府は景気の高揚を大手製造業の輸出に依存せざるを得ないと海外のエコノミストが見ている。こうした見方の海外のエコノミストは、1ドル、170円程度までは円安が進むと読んでいた。
【関連】1ドル170円までは軽く進む?「日本は円安を望んでいる」と海外エコノミストたちが判断している理由=高島康司
このように今の円安の原因は、日米の金利差だけが原因ではない。日本政府、及び日銀の円安是正の本気度が疑われているのである。
しかし、日本のGDPがロシアに抜かれたことをひとつの背景として多くなっている岸田政権への否定的な評価は、円安をさらに助長させることにもつながるはずだ。つまり、現在の岸田政権が続く限り、日本経済の浮揚は基本的にあり得ないというネガティブな評価である。
言って見ればいまの岸田政権は、超低空飛行でなんとか経営を維持している大手企業のようなものだろう。この企業が外資系であれば、現行の経営陣をまずは一掃して新しいチームに置き換える全面的な刷新を図ることだろう。これが、経営の再建に真剣に乗り出したことの対外的なメッセージになる。
おそらく今の日本には、これと同様のことが必要なのだと思う。つまり、腐敗にまみれた現在の自民党をとにかく政権の座から追い出すことである。もちろん、現在の野党が政権を担えるのか問われることだろう。しかし重要なのは、次の政権がどの政党が担うにしても、とりあえず自民党を追い出したという強いメッセージの発信が必要なのだと思う。
そうしないと、円安はもっと進行し、日本経済の低迷にも歯止めがかからないのではないかと思う。購買力平価(PPP)で日本のGDPがロシアに抜かれたことは、こうした日本の状況を示唆しているようだ。
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※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2024年6月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
貼り付け終わり、