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MAG2 NEWS:解散総選挙なら自民大敗「衝撃の予想議席数」…政局マニア岸田総理が上川「うまずして」発言の揚げ足を取るしかない理由2024.05.22より転載します。
 
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https://www.mag2.com/p/news/599380
 
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多くの有権者から政権交代を望む声が上がる中、岸田総理がそれでも衆院解散・総選挙に打って出る可能性は現時点でどの程度か?その場合、各陣営の議席数はどう変化するか?米国在住作家の冷泉彰彦氏が、直近の政局分析をもとに予想する。一方、解散は当面できないと情勢判断した場合、岸田総理にとっては自身の延命と保身が課題に。そこで注目されるのが上川外相の「うまずして」発言だ。自民党内で麻生氏を牽制したい岸田氏の“秘策”を探る。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本の政局を考える

ポイント1:自民の派閥や裏金は嫌われても、地盤は維持される

あまりバラバラに考えても仕方がないので、今回は現時点(2024年5月20日時点)での日本の政局について考えてみます。具体的には、解散総選挙の可能性と、その場合の結果の予想、そして当面描けるシナリオという順で議論してみましょう。

まず、全体を考える上での留意点を3つ確認しておきたいと思います。

1つ目としては、当分の間は自由民主党という看板、そしてそのサブブランドとしての旧清和会安倍派とか、志帥会二階派という名前、あるいは裏金議員といった名指しは、有権者からは強く嫌われるでしょう。

ただ同時に、この裏金問題の本質である、地方組織のタカリという問題、つまり宴席でのオゴリから冠婚葬祭、観劇や桜を見る的なイベントに至る「地盤側」の収賄構造が暴かれることもないのだと思います。

ということは、裏金議員たち本人は強烈な被害者意識と居直りの姿勢を維持、一方で問題の本質を突いた改革もなしということで進むと思います。

【関連】日本人が知らない自民党議員の大義と「被害者意識」なぜ彼らは世論をいとも容易く無視できるのか?

ポイント2:有権者は政権交代の意欲あり、ただし世代間で温度差も

2つ目は、これに対して有権者は「乗り換え意欲満々」という感じであることです。これは、細川内閣を誕生させた1993年や鳩山内閣を誕生させた2009年の総選挙時と類似の状況があります。選挙前の雰囲気ということでは、自民党に政権奪還をさせた2012年の選挙とも似ています。

どうして政権交代を期待しているのかというと、これはアメリカや欧州の選挙とはやや異なる事情があります。

まず、多くの有権者は現役世代か年金受給者です。現役世代の中で終身雇用が保証されている層は、政策の変更により解雇されるとか構造不況業種に陥るという危険よりは、雇用先で出世できるかという組織内の「政治」のほうが直接の利害に繋がります。そのため、選挙での「浮気」が可能です。

年金世代も収入はほぼ確定していますので、こちらも投票行動には自由度があります(物価問題は別ですが)。この間、自民党は年金世代の利害を意識した政策を採ってきましたが、だからといって年金世代が恩義を感じているとは限りません。

一方で、もしかしたら政策で大きく利害が変わるかもしれない非正規雇用の若年層などは、集結する政党もイデオロギーも持たないし、そもそも政治への期待値が低いので投票率は低く、今後も低いままと考えられます。

状況の変化という問題もあります。93年や90年と比較すると、人口問題も、財政もかなり行き詰まっており、政策の自由度の幅は狭まっています。ということは、本当は「まとも」な政党に入れないといけないという心理になるはずですが、もしかしたら政策の幅が狭いという感覚があるのなら、かえって自由度が高いと思う層もありそうです。

ポイント3:円安・物価高が大胆な投票行動を招く可能性

3番目は、単に裏金問題による自民党への怒りや反発というだけでなく、一向に回復しない日本経済、そして下がり続ける円と上がり続ける物価という状況の中で、「不連続な変化」を期待する心理はありそうです。ということは、より大胆な投票行動へ動くような深層心理もあるかもしれません。

岸田総理が解散総選挙に踏み切ると何が起こるか?

さて、こうした前提を考えた時に、それでも岸田総理は解散に踏み切るのかという問題があります。この問題に関しては、次のようなa~fの多元連立方程式(不等式?)が想定できます。

a)この夏に解散して勝利すれば、9月の総裁選で無風再選が可能で長期政権が視野に入る。そのためのリスクが取れれば早期解散。

b)とはいえ、中の人の「何も考えていない感」というのは時間が経過すると出てくる。「原理原則とか政治思想と現実を繋いで行き来するという回路が切れている人」というのは、喋らせれば一目瞭然で隠せない。他派閥の敵失と、外交で稼いだポイントがあるのが現在で、結局は真水の支持率は何もしないとゆっくり低下すると考えると、周囲も含めてその前に解散したくなる。25年の任期満了(10月)あるいは衆参同日(7月)まで引っ張るのは怖いと考えている可能性はある。

c)裏金スキャンダルについては、何か別の問題が起きて上書きされたり、時間の経過によって風化すれば自民党には有利。ただ、旧安倍派の復権につながるので、岸田としてはプラマイを計算しているところか。

d)25年の万博が開催できずに混乱すれば、維新は更に地盤沈下するが、政権与党の自民党も傷つく。その意味では維新が呆れられて、政府が救済している構図の今のほうが岸田には有利という見方も。

e)団塊世代が刻一刻と投票所から遠ざかっている。その速度を考えると、もう少し待った方が一般的に保守政党には有利

f)何よりも自民党の現職議員は「議席を失う恐怖」が全ての動機となっている。

他にも色々ありますが、この間の動きとしては、小池百合子氏の「側近の裏切り」とか、上川陽子氏の「言葉の切り取りテロ被災」という事件も看過できません。

例によって結果論ですが、どちらのエピソードも、岸田文雄という政治家には微妙にプラスに作用しています。運がいいのかもしれませんが、同時にこういう意外な事件が起こると、ウッカリ「解散してもいいのかも」という判断に流れる可能性は出てくるでしょう。

ということで、岸田総理が解散をする可能性はゼロではありません。その場合ですが、どのような結果が考えられるのかということを、考察してみたいと思います。

自民党とその他保守陣営が、比例議席を激しく奪い合う展開

まず、総選挙の見通しですが、選挙区ごとに分析する作業というのは、恐らく選挙アナリストたちが今日現在、あれこれとパラメーターをイジりながら計算に忙しいのだと思います。そこで、今回は、あくまで概算をすることで、大きな見取り図を描いてみたいと思います。

その場合の前提条件ですが、様々な報道を受けて考えてみると次のようなストーリーが描けるようです。

  • いわゆる保守の側では、候補者調整などの選挙協力はほぼ進まない。原因としては、まず維新と保守党の場合はどう考えても「有権者の反自民モメンタム」のうち、保守票を思い切り狙って来るということがあります。ですから、自民との協力はマイナスです
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  • また自民だけでなく、維新も保守党も必死になって小選挙区の全289選挙区に候補を立てようとしています。つまり保守党の場合は「比例は日本保守党、小選挙区はヒャクタ」というような選挙戦をするわけです。維新も同じです。本当は維新と保守党は連携するとかなりの効果が見込めるはずですが、どうもそうはならないようです
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  • 保守の中では公明は自民との選挙協力はこれまで同様に行うと思います。但し、反自民のモメンタムは、反与党ということにもなるので、例えば都市部の小選挙区でこれまで公明が勝ってきた選挙を維新に競り負ける可能性はあるかもしれません
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  • 一方で、左派の側では「立憲と共産、れいわは候補者調整がある」「立憲と国民もそうだし、恐らく国民は立憲が共産票と合体していても反発は控えるだろう」「国民の小選挙区議席には共産はチャレンジするかもしれないが、票が割れて自民が勝つまでは行かない」ということで、ある程度のまとまりになりそうです


つまり、保守陣営から見ると「自民党が大逆風」という要素プラス「保守大分裂で小選挙区では一気に不利に」という流れになる可能性があります。

ですが、さすがにそうなると本当に左派政権ができてしまうので、最終的には保守は自公連立に呼んでもらえるという密約をして、自民はコッソリ保守と選挙区調整をするかもしれません。

そこに維新まで乗っかって裏で票割りをするかというと、それをしてしまうと、自民は大阪を中心に関西では不戦敗になってしまうので、表向きは不可能でしょう。

ただし、関東の維新(一部は渡辺喜美グループなどアンチ官公労派)は、自民と裏取引をするかもしれませんが、岸田としてはあくまで保守連立の場合も首班は握って離さないと思うので、音喜多を閣僚にとかそういう話になりそうです。

裏取引のようなことをして、果たして有権者が納得するかというと、多分怒るだろうと思います。

そうなると自民としては八百長的な不戦敗を選択するとか、作戦はありそうですが、それはあくまで小選挙区の話であって、やはりどう考えても現時点では、比例の方は「保守政党同士でガチンコで戦う」ことになります。その場合は、左派以上に票の奪い合いは激しくなりそうです。

自民大苦戦。現在の選挙情勢から議席数を予想する

では、まずその比例について考えてみるために、政党支持率を比較することにします。現時点での(本年2024年5月)のNHK世論調査による政党支持率と、岸田総理が解散して勝った21年10月の選挙直前を比較してみます。順番は「21年10月 ーーー>24年5月」です。ちなみに、21年10月の調査は「選挙トレンド調査」となっています。

自民 38.8% ーーー>27.5%
立憲  6.6% ーーー> 6.6%
維新  2.3% ーーー> 4.5%
公明  3.9% ーーー> 3.1%
共産  2.8% ーーー> 3.0%
国民  1.0% ーーー> 1.1%
れいわ 0.6% ーーー> 1.2%
(以下略)


まあ、こんなものかとも思いますが、よく考えるとNHKの世論調査というのは、国会に議席がないとカウントしません。ですから、今回の調査でも日本保守党は入っていなかったりします。また、無党派層が無回答を含めると21年で45%、今回24年は51%もある中では、その無党派層がどう動くのかは、投票率を含めて極めて不透明です。

そんな中で、この調査の中で大きく浮かび上がっているのは、自民党の支持率低下です。岸田内閣発足直後から見て、現在は38.8から27.5へと10%以上落ちているのですから、これは大変です。

この10%ダウンに加えて、無党派層の自民離れという現象が大きく乗っかる中では、どう考えても支持が大きくスイングするというのは避けられないと思います。

では、日本の選挙の場合にどのぐらいスイングするのかという傾向を見てみることにします。

まず、1993年の宮沢自民党の下野、細川連立政権が成立という政権交代の選挙は、実は中選挙区制で行われているので、小選挙区と比例の比較対象になりません。また、自民党の場合は、選挙前に離党者が相次いでいるので党勢の前後比較というのは、直前の比較も、その前の総選挙との比較もあまり応用が効かないのです。

そこで、今回は、2009年と2012年の政権交代を見てみます。

保守系(自民党系)
2009選挙前  332
2009選挙後  140(小 64、比例76)

2012選挙前  139
2012選挙後  325(小246、比例79)

左派系(旧民主党系)
2009選挙前  127
2009選挙後  320(小228、比例92)

2012選挙前  325
2012選挙後   58(小 28、比例30)


衆議院の定数は465ですから、過半数は233です。そんな中で、2009年には自民党系は332議席から140議席へ、民主党系は127から329へと大きなスイングが発生しました。

反対に、2012年には、自民党系は139議席から325議席へ、民主党系は325議席から58議席へと大きく転落しています。

つまり、日本の有権者はこのぐらい激しいスイングができてしまうのです。この2回の政権交代選挙では民意は明確であり、その結果も極めてドラスティックなものでした。

その一方で、そこまで大きく振れないとしても、制度的には次のようなことが言えます。

「小選挙区の289から200を取り、比例の176の2割にあたる34を取ると、合計は234で過半数を制して政権が取れる」

ということです。そうした前提で見てみますと、現在の選挙情勢から考えてみると、

保守分裂の中で仮に保守系が小選挙区で大苦戦、一方で左派系が緩い選挙協力に成功すると、ヘタをすると200を取ってしまう

「自民に大逆風、維新も万博で逆風、保守は全くの新人ばかりとなると、立憲+共産+国民+れいわで現在のNHK調査支持率の合計は11.3%あり、無党派層を抱き込んで倍増させ、比例の20%イコール34議席はそんなに難しくない

ということで、どう考えても左派系が有利になります。そこまでは簡単な予想ができるわけです。そのぐらいのことは、岸田もその周辺も考えているのに違いがありません。

岸田総理に一発逆転の奥の手はあるのか

では、岸田としてはどういった作戦を考えているのでしょうか?

1つの可能性は、6月告示の東京都知事選に小池でも石丸でもない、「保守系無所属の超大物」を擁立できて、これに「自民党が推薦して足を引っ張っても、それでも勝てる」という計算(岸田の思い込みを含む)が成立した場合です。この場合には、解散による都知事選と衆院選の同日選挙ということは、ストーリーとしては成立するかもしれません。

2つ目は、一連のスキャンダルを有権者が忘れてしまいそうな、派手な公約を掲げて、そこで保守陣営をまとめてしまって強引に解散するという考え方です。それはズバリ憲法改正です。この憲法改正という錦の御旗を掲げてしまうと、保守分裂選挙への強い牽制になります。また左派陣営への強い圧力になります。

ですが、国際情勢はそれを簡単には許さないと思います。中国やロシアが態度を硬化するというのは、何とか計算して織り込むことができます。ですが、日本の憲法改正に対して、韓国が激しく反応して政権が再び左派になったり、折角作ったフィリピンとの連携が崩れたり、とにかく向こう側の分断工作の餌食になる危険がかなりあるわけです。

トランプ陣営の中でも元民主党員のトルシ・ギャバードなどは、防衛費2%は太平洋における日本の脅威拡大だなどとデマを流しており、ハワイで反日感情を煽ったり悪質です。得てして保守ではない岸田が保守政策に踏み込むような時には、国難を引き起こす可能性は高くなると思います。

岸田としては、党是だからということで、今のような言い方で憲法改正に乗り気な姿勢を見せる以上のことはできないと見ています。反対に、岸田がやりそうなのは皇室改革ですが、争点化するのは憲政の常道を壊すので、サクッと実績を出して民意を問うようにしたいのでしょう。ですが、時間はかかる話で難しいです。

ということで、この2つの作戦がどちらも成立しないとなると、やはり早期解散は難しくなります。その場合ですが、岸田としては「解散なき9月総裁無風続投」というのが、何としても狙いたい当面の作戦になります。

上川外相の「うまずして」発言を利用し麻生氏を牽制

そう考えると、この間の上川外相に関する騒動は、非常に政治的だったと言わざるを得ません。順序としたら、まず「女性の手で女性知事を生む」という発言の一部を切り取る悪質な報道が発生したわけです。あたかも上川氏は女性は子どもを産めと言っているかのような悪質な切り取りです。

これに対して、まず野党が騒ぐと、上川は発言を撤回しました。これに対して、岸田は5月19日に、「発言を撤回したと報告を受けている。いずれにせよ誤解を招く表現は避けるべきであると思う」と述べました。その上で林官房長官は、20日になって「上川続投」という念押しのコメントをしています。

何と言うか陰湿というか、表現が見つからないのですが、上川は全くの被害者であるにもかかわらず発言を撤回することで「自分は罪を認めて総理候補から降りる」と言っているに等しいわけです。これに対して、岸田は「発言撤回を承知した」としつつ「誤解を招く表現は避けるべき」という言い方で、上川を強く牽制、そして林の口から「更迭しない」と伝えて屈服させた格好です。

これは、非常に絶妙なタイミングで発生しました。これで静かに上川を屈服させて、同時に麻生をも牽制できたわけですから、あくどいとは言え、知恵としては回っています。もしかしたら、これで、解散なき無風総裁続投という岸田の当面のシナリオが、少しずつ見えてきたのかもしれません。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2024年5月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。


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