■全世界が失望。ハマスが受け入れたガザ戦争「停戦案」を突っぱねるネタニヤフ首相 | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:全世界が失望。ハマスが受け入れたガザ戦争「停戦案」を突っぱねるネタニヤフ首相が国際社会に突きつけたモノ2024.05.11より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/news/598579
 
Displaced,Palestinians,Bid,Farewell,To,Their,Dead,Relatives,,At,Al-najjar
 

仲介国によって示されハマスが受け入れの意思を表明するも、イスラエルが突っぱねたガザ停戦交渉案。もはやこの先、ガザ地区に平穏な日々が訪れることはないのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、イスラエルとハマスの直接交渉こそが停戦のカギとなるとした上で、その実現可能度について考察。さらに調停の実施にあたり障壁となっている二国の実名を挙げています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:終わらない戦争と世界の分断‐出口の見えない混乱の時代

またも停戦交渉決裂。イスラエルとハマスの戦いは世界を分断するのか

「ついにイスラエルとハマスの終わりなき戦いにピリオドを打つことが出来るかもしれない」

主張の隔たりが大きく、双方が必要とする条件がとても相容れないものとの理解から、解決のための糸口は見いだせないだろうと思われていた紛争に一筋の“希望の光”が差したのではないかという見解は、ゴールデンウイーク明けのニュースとして伝えられました。

エジプトとカタールによる仲介努力の成果として戦闘停止と人質解放に向けた合意案が、カタールを通じてイスラエルとハマスそれぞれに提示されました。

アメリカのブリンケン国務長官は4月29日に「これはイスラエルによる非常に寛大な提案」とイスラエルを持ち上げ、ハマスに合意を迫り、いくつかの重要な修正が加えられたのち、ハマスは基本的に受け入れる方針を示しました。

最初の楽観的な認識は、その頃、多くの人たちから提示されました。

しかし、結果としてイスラエル政府は強硬姿勢を崩さず、「イスラエルとハマスの提案の間にはまだ大きな隔たりがある」と合意機運を突っぱね、国際社会が考えを改めるようにイスラエルに迫るラファへの作戦を強行しました。

これでまた緊張が高まり、さらにはイスラエルに対する国際社会からの非難も強まりました。

当初、イスラエルが合意可能とした一時休戦期間は40日間で、その間に“無条件に人質全員の開放を行うこと”が条件でしたが、ハマスは恒久停戦に向けた交渉を視野に、42日ずつの3段階に分け、段階ごとに人質解放を実施するというものでした。

この停戦案が示された際、個人的には「これはイスラエル政府的にはひとまず受け入れることが出来るのではないか」と感じましたが、ネタニエフ首相は「これはハマスの体制の立て直しに利用され、結果、さらなる悲劇をイスラエルにもたらすことになる」として、合意しませんでした。

しかし、これまでと違うのはイスラエル交渉団を引き返させるのではなく、そのまま協議が行われているエジプト・カイロに留め、必要に応じて休戦交渉に臨む姿勢を示しています。

このことから、今回、ネタニエフ首相による合意拒否と、国際社会からの非難の強まりを覚悟してでもラファへの侵攻の継続を示唆したのは、ハマスからさらに多くの譲歩を引き出そうという思惑も見え隠れしているように感じます。

個人的には、今回、イスラエルはハマスから寄せられた合意案への返答内容を一旦受け入れ、少なくとも女性や子供、病人などハマスにとらえられている人質の一部を取り戻すことにつなげ、同時に国内各都市で毎週行われる反政府デモを鎮静化させるきっかけを作れたかもしれません。さらには、ガザ地区における人道危機の深刻化に対するイスラエル批判を和らげ、“同盟国”アメリカの顔を立てることもできたかもしれません。

実際にカイロに派遣されているバーンズCIA長官も同様のことを言っていたようですし、国内大学などでパレスチナ支援および反イスラエルデモが繰り広げられ、国論が二分化されていることに危惧を抱く米議会の面々も、従来のイスラエル支持の姿勢に戻ることが出来たかもしれません。

イスラエルとハマス代表団「直接交渉」の実現可能度

しかし、その期待に反し、ネタニエフ首相はラファへの侵攻の強化を命じ、現時点ではまだハマスの武器や資金の調達手段を断つという限定目的の攻撃に留まっているものの、「ハマスとの間接交渉が失敗したら、即時にラファに全面攻撃を加える」という圧力をハマスとその支援者、そして国際社会に突き付けています。

出口が見つかったと期待し、喜んでみたら、イスラエルに裏切られたと感じるカタールとエジプトは、まだ仲介の労を担っているものの、労力と資金をかけても一向に解決策が見いだせないことに苛立ち、モチベーションの維持が難しくなってきているようで、この国際仲介プロセスの持続性に黄信号が灯り始めたようです。

瓦解寸前の仲介努力ですが、まだ一筋の希望を感じているのが“イスラエル政府が代表団をカイロの留めていること”です。

仲介交渉はこれまでのところ、カタールを通じた間接形式であり、公式にも非公式にも、イスラエルとハマスとの直接的な対話と協議、そして交渉は実現していません。

もしブレークスルーが起こるとすれば、それはイスラエルとハマスの代表団間での直接交渉の実現ですが、それは慣習上、主権国家と非政府組織とが同レベルの交渉を行うことはないというルールを破ることになり、この実現には主権国家たるイスラエルが同レベルでの対話を認める必要が出てきます。

ガンツ前国防相はその可能性に肯定的と言われ、「今は国家的な危機であり、体裁にこだわっているべきではない」と直接対話にも前向きなようですが、イスラエル代表団を派遣したことに否定的な極右勢力を連立政権に含むネタニエフ首相がそれを受け入れることは、彼が命がけで守る自身の政治生命に照らしあわせて決して受け入れられない内容ではないかと推察します。

一応、国際的な調停グループには調停プロセスの実施準備の依頼が多方面から来ており、これにはイスラエル政府も否定的ではないとのことなのですが、即時実施を求めるアラブ諸国や欧州各国と(英国を除く)、調停プロセスを実施するには時期尚早とするイスラエルとアメリカ、そして英国というように、意見の一致は見られていません。

国連については「これ以上の犠牲は払われるべきではなく、ラファへの侵攻による人道的悲劇の拡大と民族の抹殺に繋がるような動きは即時に止めなければならない。イスラエルもハマスも、無条件の人質交渉と、即時停戦をいますぐに決断する必要がある。そのために国際的な調停努力が行われるのであれば、いかなる支援も惜しまない」という立場を表明しており、すでにコンタクトも受けています。

調停を実施するにあたり、今、障壁になっているのが、イスラエルの同盟国であるアメリカの優柔不断な姿勢と不変のPro-Israelの顔と、激しくネタニエフ首相をけなし、通商関係の断絶や交流の一時停止まで宣言して、イスラエルと真っ向から対決する姿勢を取るエルドアン大統領とトルコ政府です。

ロシアと中国による横やり(特にロシアからの横やり)は、意図がはっきりしているため、サイドライン化できると思いますが、アメリカの偏りとトルコの極端な反イスラエル・反ネタニエフ首相の主張は、中立な調停努力に水を差す恐れがあり、進展には困難が予想されます――

(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2024年5月10日号より一部抜粋。続きをお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。


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