■10年以上日本に住んだ外国人が語る日本語の美しい「解離」とは? | タマちゃんの暇つぶし

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GIGAZINE:2024年05月11日 15時00分10年以上日本に住んだ外国人が語る日本語の美しい「解離」とは?より転載します。
 
貼り付け開始、

https://gigazine.net/news/20240511-beautiful-dissociation-japanese-language/

 


日本に住んで10年以上になるというブロガーのマルコ・ジァンコッティ氏は、そのことを海外の人に話すと、尊敬と困惑が入り交じった顔をされるとのこと。なぜなら、日本語は不可解で、その習得は日本で暮らす上で避けては通れない苦行だと考えられているからです。しかし、そんな日本語こそこの国の最大の魅力だと語るジァンコッティ氏が、「The Beautiful Dissociation of the Japanese Language(日本語の美しい解離)」と題したブログ記事で、多言語話者ならではの目線で日本語のユニークな特性を解説しました。

The Beautiful Dissociation of the Japanese Language - Aether Mug
https://aethermug.com/posts/the-beautiful-dissociation-of-the-japanese-language

日本語はよく、漢字を使う点や「お疲れさま」「もったいない」など他の言語に訳せない言葉がたくさんあるなどの点で特殊だといわれますが、それらはすべてジァンコッティ氏が考える日本語のユニークさの本質ではありません。

なぜなら、中国では日本よりはるかに多くの漢字が使われている上に、他の言語に訳せない言葉はあらゆる言語に存在しているからです。


そんな日本語を独特なものにしているのは、その歴史的な経緯だとジァンコッティ氏は指摘します。日本語とはまったく違う言語である中国語の文字を輸入するに当たり、日本人は万葉仮名を経てひらがなとカタカナを作り、これを漢字と併用することにしました。漢字の借用は韓国やベトナムでも行われましたが、現代に至るまで文字体系を維持したまま使っているという点で、日本語は特異的だとのこと。

この表音文字と表意文字の併用や、話し言葉と書き言葉の使い分けによって可能となった多様な表現こそが、ジァンコッティ氏が「解離」と表現している日本語の特徴です。


ジァンコッティ氏は、日本語の解離を6つに分けて解説しました。

◆1:ひとつの漢字に読み方がたくさんある
例えば、「生」という漢字には「セイ」「ショウ」「い(きる)」「い(ける)」など約15通りの読みがあるように、ほとんどの漢字が複数の発音を持っています。この特徴は日本の学生や日本語学習者の悩みの種ですが、地名や日常生活であまり使わない言葉は日本人にさえ読み方がわからないことがあるため、日本語ではふりがなが使われるようになりました。


このふりがなの存在が、この後で説明される「創造的な解離」につながることになります。

◆2:ひとつの名前に何通りもの書き方がある
複数の読み方があるという都合上、日常会話でもどの漢字のことを話しているのか説明しなければならないことがあり、この点はジァンコッティ氏からするとクリエイティブだとのこと。これは特に人名でよく発生します。

自分の名前の漢字を説明する苦労を表す場面として海外の人に有名なのが、漫画「デスノート」でのワンシーンです。名前を書くと書かれた人が死ぬ魔性のノート「デスノート」が登場するこの作品では、名前をどう表記するのか知っていることが大きな意味を持ちます。


◆3:型にとらわれない「ふりがな」の存在
漢字とその読みは対応しているのが原則ですが、「大人(おとな)」など熟語に訓読みを当てた「熟字訓」ともなるとそうはいかなくなります。

悩ましいことに、「百舌鳥(もず)」など音節の数より漢字の数の方が多い言葉まであります。

◆4:「トレンチコート」を着た言葉
漢字に別の読みを与えることができる日本語の自由さは、ジァンコッティ氏が特に興味を引かれた別の表現につながります。それは、「心」と「指す」が合わさって「志す」となったり、「見る」と「留める」が合わさって「認める」となったりするように、複数の言葉がひとつの言葉になることです。


これらの言葉は、元は別々の言葉でしたが、組み合わせて使うことがあまりに日常的だったため、ひとつの言葉として新しく別の漢字が当てられたのだろうとジァンコッティ氏は考えています。

この言葉の形態を表す学術的な正式名称がなかったことから、ジァンコッティ氏は2人の子どもが片方を肩車してトレンチコートをかぶり、大人に変装するのを英語で「Two Kids In a Trenchcoat(トレンチコートを着た子どもたち)」と呼ぶのになぞらえて、こうした言葉を「トレンチコートを着た言葉」と名付けました。

by Two Kids In a Trenchcoat | Know Your Meme

「志す」や「認める」以外にも、権威ある立場を意味する「官(つかさ)」と「取る」を合成した「司る(つかさどる)」なども、トレンチコートを着た言葉の例として挙げられています。

◆5:同じ言葉を書き分ける
ジァンコッティ氏は、話し言葉としての日本語はボキャブラリーが乏しいため、意味が曖昧になってしまう事が多いと指摘します。その一方で、漢字を駆使した書き言葉は文章の曖昧さを減らし、ニュアンスの精度を上げることができます。

例えば、同じ「とる」を「取る」「撮る」「録る」「採る」「捕る」「摂る」「盗る」と書き分けることで、その意味をひとつに絞っていることなどがその例です。

ジァンコッティ氏が気に入っているのが、漢字を使い分けることで性別と関係を特定させることができる「従兄弟(いとこ)」です。余談ですが、この「従兄弟」も熟字訓です。


◆6:キャンバスとしての「解離」
こうした日本語の解離の集大成ともいえるのが、漢字に任意の読み方を与える言葉遊びである「義訓(ぎくん)」です。

義訓はよく漫画に使われます。日本語で漫画やアニメを楽しもうとしている人向けの日本語学習ブログ・Japanese with Animeは、漫画「僕のヒーローアカデミア」の以下のシーンについて「轟焦凍は冷気と熱の両方の能力を持っており、右からは冷気、左からは熱を発します。ここでは戦闘で『左を使わない』と言うことで熱の能力は使わないと宣言しました」と解説しました。


義訓は外国語の響きを作中に採り入れる際にも使われます。漫画「鋼の錬金術師」に登場する機械仕掛けの義肢である「オートメイル」は造語で、カタカナ表記しても読者にその意味が伝わらない可能性があるため、「機械鎧」の漢字が当てられています。


小説家の中にも、解離を芸術的な演出のために使用する人がいます。ジァンコッティ氏は「ホラー・ミステリー作家の京極夏彦は、和製ゴシックの雰囲気を出すのが好きで、レンガほどの厚さがある小説の中でよく古風な漢字を使っています。その多くは、一般的な日本人読者には見たこともない漢字ですが、義訓のおかげで問題なく読み進めることができます」と述べました。

ジァンコッティ氏に言わせると京極夏彦は「ちょっとやりすぎ」とのことですが、より控えめな使い方をする作家として村上春樹が挙げられています。例えば、以下は村上春樹の小説「ノルウェイの森」の1ページで、都会から離れた場所を意味する辺土に「リンボ」のふりがなが付けられています。


キリスト教の用語である辺獄(リンボ)という言葉をあえて使わないことで、宗教的なニュアンスを避けつつ神秘的な響きを与え、自分の中の隠された領域の比喩を引き立たせたこの表現について、ジァンコッティ氏は「村上氏はこのちょっとした言葉選びで多くの仕事をした」と評価しています。

この一文は、日本語での読書を始めたジァンコッティ氏にとって特に新鮮だったとのことで、同氏はその時の印象を「ステレオで本を読むようなもので、同じメッセージが2つの異なる形で別々のチャンネルから伝わってくることもあれば、2つのメッセージが混ざり合って新しいものになることもあるのです」と振り返りました。

また、ブログ記事の末尾でジァンコッティ氏は「書き言葉と発音の仕方に独特の解離があるため、日本語は学ぶのが難しいだけでなく、他の言語にはまねできないほど柔軟で豊かでもあります。この解離は、言語の余剰次元であると同時に、幸せな歴史的偶然でもあります」と締めくくりました。

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