■自分より大きい「恐竜を食いちぎって、飲み込む」までに至った哺乳類の臼歯「衝撃の発達」 | タマちゃんの暇つぶし

タマちゃんの暇つぶし

直ぐに消されるので、メインはこちらです→ http://1tamachan.blog31.fc2.com/ 

講談社:2024.04.11幼体は、胴体が切断されていた…なんと、自分より大きい「恐竜を食いちぎって、飲み込む」までに至った哺乳類の臼歯「衝撃の発達」より転載します。
 
貼り付け開始、

https://gendai.media/articles/-/126366
 
 
 


長い長い進化の中で、私たちの祖先は、何を得て、何を失い、何と別れてきたのかーー

約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”です。

しかし、そのホモ・サピエンスも、突如として誕生したわけではありません。初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに、生まれたのです。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりを、【70の道標(みちしるべ)】に注目して紡いだ、壮大な物語が『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)です。

この『サピエンス前史』から、70の道標から、とくに注目したい「読みどころ」をご紹介していきましょう。今回は、哺乳類の特徴として欠かせない「臼歯」に焦点を当てていきます。一見、地味そうなテーマですが、じつは「臼歯で生物種を特定できる」ほど、進化や生物の研究にとって「非常に重要な証拠」だと言います。早速見てみましょう。

 

*本記事は、『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

種さえも特できる「臼歯」…代表的な3タイプ

異歯性である哺乳類において、とくに臼歯にはさまざまな形がある。その形状は、専門家がみれば、種さえも特定できるというほどの固有性”である。

種レベルの“固有性”とまではいかなくても、本記事を読んでくださるような、生物の進化に興味をお持ちの方なら、臼歯のいくつかのタイプを知っておきたいところだ。ホモ・サピエンスへの進化の道標(第32の特徴)としてとくに注目すべき臼歯は、「トリボスフェニック型」と呼ばれるタイプである。

「すり潰す」の意味のある「トリボ」と、「切り裂く」の意味のある「スフェン」に由来する言葉だ。「トリ(tri)」が「3」を意味するものではないことに注意が必要だ。この言葉の通り、トリボスフェニック型の臼歯には、「すり潰す」と「切り裂く」の両方の役割がある。

トリボスフェニック型の基本形は、三つの咬頭だ。上顎のトリボスフェニック型臼歯では、この三つの頭が三角形となり、その間に谷状構造がある。下顎のトリボスフェニック型臼歯では、さらに三つ、つまり合計六つの咬頭があり、その間に谷状構造がある。この複雑な構造が、「すり潰す」と「切り裂く」の両方を可能にしている。

単孔類の臼歯は、このトリボスフェニック型臼歯、あるいは、それによく似たものだった。


【イラスト】トリボスフェニック型臼歯
トリボスフェニック型臼歯。「すり潰す」と「切り裂く」の両方の役割をもつ。真獣類の臼歯の基本形となった illustration by hidenori yanagisawa
 

単孔類ののちにヒトに至る系譜”と袂を分かつグループには、臼歯の横幅が狭く、三つの頭が一直線に並んだ剪断仕様のグループ”「真三錐歯類(しんさんすいしるい)」や、低い突起が列をつくって並んでいるすり潰し仕様のグループ”である「多丘歯類( たきゅうしるい)」、頭が二等辺三角形をつくって並ぶグループ「スパラコテリウム類」などがいる。

ヒトに至る系譜=トリボスフェニック型:上顎で三つ、 下顎で六つの咬頭があり、その間に谷状構造

袂を分かつグループ

・真三錐歯類(しんさんすいしるい):三つの頭が一直線に並ぶ

・多丘歯類( たきゅうしるい):低い突起が列をつくって並ぶ

・スパラコテリウム類:頭が二等辺三角形をつくって並ぶ

そして、ヒトに至る系譜”の臼歯は、トリボスフェニック型である。

“結果的に似た”形態になる「収斂進化」

哺乳類において最も原始的なグループである単孔類と、私たちが同じような臼歯をもっているというこの事実は、臼歯の形状はそれぞれのグループで独立して進化した結果として、単孔類とヒトに至る系譜”の二つのグループで似た形状になったと考えられている。

これは、いわゆる「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼んで良いのかもしれない。「収斂進化」とは、異なる二つのグループで、進化の結果として形態が似ることをいう。

いずれにしろ、臼歯の多様化は、中生代の哺乳類を大いに盛り上げ”た。中生代の哺乳類は、見た目はさほど目立たず、ちがいがないかもしれないけれども、口の中では革新的な進化が進んでいたのである。
 
次ページ:恐竜を食いちぎる…知力に自信あふれた「真三錐歯類」に肉食獣

中生代哺乳類の繁栄の象徴

「真三錐歯類」は、単孔類の次にヒトに至る系譜”と分かれたグループである。臼歯の横幅が狭く、三つの咬頭が一直線に並んでいる。ジュラ紀中期から白亜

紀の半ばすぎにかけて隆盛し、主として北半球の大陸を席巻した。

本書執筆時点で知られている最小の真三錐歯類・最大の真三錐歯類の2種類を紹介しておこう。

まずは、最小の真三錐歯類「ジェホロデンス(Jeholodens)」である。頭胴長はわずか8センチメートルほどだ。肩の骨格が発達しており、地面を掘ることができたとみられている。ただし、地中生活者というわけではなかったらしい。典型的な昆虫食性で、白亜紀前期の中国に生息していた。
【イラスト】ジェホロデンス
ジェホロデンス。真三錐歯類。中国に分布する白亜紀の地層から化石が発見された illustration by hidenori yanagisawa

恐竜を食い切って、ひとのみに…「レペノマムス」

最大の真三錐歯類「レペノマムス(Repenomamus)」は、中生代における最大の哺乳類でもある。哺乳形類のレベルでみたときにも、最も大きい。そのサイズは、頭胴長80センチメートルほど、体重は14キログラムと推定されている。
【写真】恐竜を襲うレペノマムス
恐竜を襲うレペノマムス。真三錐歯類。中国に分布する白亜紀の地層から化石が発見された。当時の哺乳類としては大型であり、恐竜を襲っていたことで知られる。中生代哺乳類の「隆盛の象徴」といえる存在 illustration by hidenori yanagisawa

大きな顎には鋭い歯が並ぶ。昆虫食というよりも、「肉食の歯」だ。

実際、中国に分布する白亜紀前期の地層から発見されたレペノマムスの化石の胃があったとみられる場所からは、植物食恐竜の幼体の化石が発見されている。

その幼体化石は、胴体が切断されていた。どうやら捕らえた幼体のからだを適当な大きさに噛み切って、一飲みにしていたらしい。

そして2023年には、植物食恐竜を襲ったその瞬間のポーズのまま、植物食恐竜とともに化石となった標本も報告された。自分よりもからだの大きな相手に襲いかかることは、それなりにリスクのある行為である。一定以上の“自信”とそれを裏付ける能力”が必要だろう。レペノマムスにはそれがあった。

レペノマムスの存在は、中生代の哺乳類が「恐竜類から逃げるだけの存在」ではなかったことを物語る一例だ。中生代哺乳類における「隆盛の象徴」ともいえるかもしれない。

レペノマムスについては、こちらの記事もご覧ください

恐竜類ばかりが注目される時代だけれども、哺乳類もそれなりに繁栄していたのだ。

さて、真三錐歯類が“ヒトに至る系譜”と分かれた頃、真三錐歯類と似たような規模の哺乳類グループ「多丘歯類」も袂を分かっていた。多丘歯類の中で、全長10センチメートルほどの「フィリコミス(Filikomys)」は、非常に興味深い報告がある。なんと、フィリコミスはひとつの社会を成していたというのだ。現在確認できる「最古の社会性を持つ動物」である。

なぜ、フィリコミスは社会性を持つと言えるのか? それまでに「群れ」を成した生物はいなかったのか? 詳しく見ていこう。
【イラスト】中生代に静かに、しかし着実に進んでいった哺乳類の進化

静かに、しかし着実に進んでいった哺乳類の進化。樹上を生活圏とする真獣類の登場で、ホモ・サピエンスに通じるメイン・ストリートが現れる
 

サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語

 

 


ヒトに至る長い進化の道程を、およそ70の道標を頼りに旅するーー脊椎動物の先祖が、どのように体を変え、新しい特徴と能力を手に入れ、サピエンスへ近づいてきたのか。様々に枝分かれを繰り返すなかで、ホモ・サピエンスへとつながる道筋をたどる大進化史。

 


貼り付け終わり、