■「共働きでも毎月赤字です…」介護事業所の現役経営者 | タマちゃんの暇つぶし

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講談社:2024.03.30「共働きでも毎月赤字です…」介護事業所の現役経営者が「まさかの介護報酬引き下げ」で国に訴えたいことより転載します。
 


厚生労働省は、今年4月から施行する介護保険制度の改定で訪問介護事業所の基本報酬が2~3%引き下げられると発表しました。引き下げの理由は、全サービスの平均利益率2.4%に対して訪問介護事業所は7.8%と高いからです。

ちなみに、訪問介護とは、ヘルパーが要介護者の居宅を訪問して食事、排泄、入浴介助等を行います。家族介護をする上で欠かせない人たちです。この度の引き下げに、介護・福祉専門職や介護者などから疑問や怒りの声が続出……。

厚生労働省によれば、ベルパーの有効求人倍率が過去最高の約16倍で施設の介護職員の有効求人倍率4倍と比較しても圧倒的な人手不足。ヘルパーの約1割は75歳以上と高齢化しています。ただでさえ、人が足りていないのにどうして……。

今回取材に応じてくれた沖縄県浦添市安波茶で訪問介護事業所「おうちでくらせる訪問介護」の代表社員・比嘉歩さんは、統計の再調査が必要と訴えます。介護職のやりがいや過酷な実態と共に詳しく紹介していきます。

生活は毎月赤字、それでも介護職でやりがいを感じる瞬間とは

歩さんは、元々おばあちゃんっ子で車椅子を押したり、食事介助をしたり、歩行を手伝ったりしていたのが介護の仕事に就いたきっかけです。その時から将来は介護職に就職したいと考えていました。

学校を卒業後、特別養護老人ホームや有料老人ホームでの勤務を経験、またデイサービスや訪問介護事業所の運営などで働き12年以上が経過しました。その間に結婚し2人の子供がいます。

「私と妻が共働きしても毎月赤字で貯金を切り崩し生活しています。家は2DKで毎月6万円とけっして豪邸に住んでいるわけではありません。今、子供は中学3年生の受験生で塾代だけで毎月3万円位かかります。子供がいる方々ならご存知かと思いますが、毎月これぐらい生活費が発生しますよね。買い物も物価高で値上がりし大変です」(歩さん)


比嘉歩さん

歩さんは月16万円を家庭に入れていて、妻も働いていますが、毎月綱渡りの生活……。それでも、介護職を続けるやりがいを以下のように話します。


「デイサービスを強く拒否するおばあちゃんがいたので自宅に行き、足繁く自宅に通ううちに、あんたのところなら行ってもいいと言ってくれたんです。

とても人思いのおばあちゃんでデイサービスの庭に畑を作ったり、洗濯物を入れたり職員のような存在になりました。娘さんも大変喜ばれて涙ながらに、母の居場所が出来ました、ありがとうございますと言われました。こういう時に介護職のやりがいを感じるのですよ」(歩さん)

さらに、介護職は底辺で肉体労働が多く汚い、などのイメージをもつ人が一部いますが、歩さんは間違いと断言します。

「イヤイヤ働いている人はほとんど見たことないです。例えば、私がデイサービスで施設長をしていた時の話。利用者さんが便秘中で、便が出たとするじゃないですか?そしたら、職員同士がみんな来てと言って喜んでるんです。まるでバースデーパーティーのようでした」(歩さん)

筆者は、認知症の祖母を8年間介護していましたが、デイサービスに行くのを拒み続けました。ところが、ケアマネ―ジャーや歩さんのような熱心で優しい介護職員のおかげで、祖母が「デイサービスから帰りたくない」としばしば言うようになりました(詳細は拙著『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』にて)。

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徘徊、弄便、ナースコール鳴りやまない特養の実態

一方、介護職の苦悩、激務の実態については、次のように話します。

「特別養護老人ホームで勤務していた時は大変でした。認知症の利用者さんは、夜中から朝方にかけて徘徊や弄便(認知症が進行し、便をいじったり壁などに擦りつけるなどする行為)をしたり、ナースコールが1回鳴ると連鎖する環境で…。頼むから静かにしてくださいって(笑)。しかも夜勤は職員2人で45名の利用者さんをみます。交代で2時間の休憩はありましたが、あってないようなものでした。私が特養に勤務していたのは18年前なので、今は人手不足によりさらに深刻です。

厚生労働省は、集合住宅併設の事業所とそうでない事業所を分けて統計をとらなければ実態がわからない」(歩さん)

福祉医療機構の「2023年度特別養護老人ホーム人材確保調査」によれば、特養の7割が介護職員などが不足しています。 

訪問介護事業所を運営している歩さんにとって、今回の訪問介護事業所の基本報酬減少は寝耳に水と言います。「2023年度介護事業経営実態調査」によれば、訪問介護事業所の36.7%が赤字だというのに……。

「厚生労働省の調査では訪問介護事業所の利益率が7.8%となっています。ですが、これは集合住宅に併設されている訪問介護事業者さんも含みます。我々のような地域密着型の小規模訪問介護事業所は、今でも報酬が全然足りないのにこれ以上減らされたら経営できません。

そもそも移動時間が違います。集合住宅なら1件30秒ほどで訪問に行けロスがありません。しかし我々のように1件1件回るタイプは、地方なら1件あたり平均30分の移動時間はかかります。移動報酬や移動加算などありません。集合住宅併設の訪問介護と1件1件回る訪問介護は運営モデルがまったく違うんです。経営状態をもっとはっきり分けるべき、国はデータのとり方その分析の仕方を考え直してほしい」(歩さん)

これから2035年にかけて団塊の世代が85歳になり、高齢化のピークや地方の過疎化の現状やヤングケアラーや働く介護者の介護離職予防などを考えた場合、地方の訪問介護事業所に手厚い介護報酬が必須です。

「 地方は特に大変です。地方の訪問介護事業所から先に手を付けて、それから都市部の訪問介護事業所、その後に、地方の介護施設、最後に都市部の介護施設と優先順位を決めてほしいです」(歩さん)

以上、訪問介護事業者の過酷な現状をお伝えしました。〈介護報酬がアップしても職員は大量離職の可能性…介護事業所の現役経営者が指摘する「報酬改定のカラクリ」〉では、介護業界12年以上の歩さんが「介護報酬1.59%アップしても介護職大量離職のカラクリ」を紹介します。介護は突然いつ必要になるかわかりません、後編も最後までぜひお読みください。

 
奥村シンゴ
宝塚在住。「ヤングケアラー」、「就職氷河期ケアラー」、「ひきこもり」を経験。現在、介護・福祉担当ライター、関西経営管理協会講師、ケアラー・ひきこもり伴走支援団体「よしてよせての会」代表を務める。NHKおはよう日本、読売新聞などメディア多数出演。
​著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』国際ソロプチミスト賞受賞者。
ツイッター @okumurashingo43
 

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