厚生労働省は、今年4月から施行する介護保険制度の改定で訪問介護事業所の基本報酬が2~3%引き下げられると発表しました。引き下げの理由は、全サービスの平均利益率2.4%に対して訪問介護事業所は7.8%と高いからです。
ちなみに、訪問介護とは、ヘルパーが要介護者の居宅を訪問して食事、排泄、入浴介助等を行います。家族介護をする上で欠かせない人たちです。この度の引き下げに、介護・福祉専門職や介護者などから疑問や怒りの声が続出……。
厚生労働省によれば、ベルパーの有効求人倍率が過去最高の約16倍で施設の介護職員の有効求人倍率4倍と比較しても圧倒的な人手不足。ヘルパーの約1割は75歳以上と高齢化しています。ただでさえ、人が足りていないのにどうして……。
今回取材に応じてくれた沖縄県浦添市安波茶で訪問介護事業所「おうちでくらせる訪問介護」の代表社員・比嘉歩さんは、統計の再調査が必要と訴えます。介護職のやりがいや過酷な実態と共に詳しく紹介していきます。
生活は毎月赤字、それでも介護職でやりがいを感じる瞬間とは
歩さんは、元々おばあちゃんっ子で車椅子を押したり、食事介助をしたり、歩行を手伝ったりしていたのが介護の仕事に就いたきっかけです。その時から将来は介護職に就職したいと考えていました。
学校を卒業後、特別養護老人ホームや有料老人ホームでの勤務を経験、またデイサービスや訪問介護事業所の運営などで働き12年以上が経過しました。その間に結婚し2人の子供がいます。
「私と妻が共働きしても毎月赤字で貯金を切り崩し生活しています。家は2DKで毎月6万円とけっして豪邸に住んでいるわけではありません。今、子供は中学3年生の受験生で塾代だけで毎月3万円位かかります。子供がいる方々ならご存知かと思いますが、毎月これぐらい生活費が発生しますよね。買い物も物価高で値上がりし大変です」(歩さん)
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比嘉歩さん
歩さんは月16万円を家庭に入れていて、妻も働いていますが、毎月綱渡りの生活……。それでも、介護職を続けるやりがいを以下のように話します。
「デイサービスを強く拒否するおばあちゃんがいたので自宅に行き、足繁く自宅に通ううちに、あんたのところなら行ってもいいと言ってくれたんです。
とても人思いのおばあちゃんでデイサービスの庭に畑を作ったり、洗濯物を入れたり職員のような存在になりました。娘さんも大変喜ばれて涙ながらに、母の居場所が出来ました、ありがとうございますと言われました。こういう時に介護職のやりがいを感じるのですよ」(歩さん)
さらに、介護職は底辺で肉体労働が多く汚い、などのイメージをもつ人が一部いますが、歩さんは間違いと断言します。
「イヤイヤ働いている人はほとんど見たことないです。例えば、私がデイサービスで施設長をしていた時の話。利用者さんが便秘中で、便が出たとするじゃないですか?そしたら、職員同士がみんな来てと言って喜んでるんです。まるでバースデーパーティーのようでした」(歩さん)
筆者は、認知症の祖母を8年間介護していましたが、デイサービスに行くのを拒み続けました。ところが、ケアマネ―ジャーや歩さんのような熱心で優しい介護職員のおかげで、祖母が「デイサービスから帰りたくない」としばしば言うようになりました(詳細は拙著『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』にて)。
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宝塚在住。「ヤングケアラー」、「就職氷河期ケアラー」、「ひきこもり」を経験。現在、介護・福祉担当ライター、関西経営管理協会講師、ケアラー・ひきこもり伴走支援団体「よしてよせての会」代表を務める。NHKおはよう日本、読売新聞などメディア多数出演。
著書『おばあちゃんは、ぼくが介護します。』国際ソロプチミスト賞受賞者。
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