■日本がまた敗戦国に?…沖縄は再び「捨て石」にされるのか | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:日本がまた敗戦国に?元陸自総監「台湾有事シナリオ」の呆れた空論ぶり…沖縄は再び「捨て石」にされるのか2024.03.13より転載します。
 
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https://www.mag2.com/p/news/594846
 
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『文藝春秋』4月号に掲載された、本松敬史氏(元陸上自衛隊西部方面総監)の台湾有事シナリオ。そのことごとくを「机上の空論」と喝破するのはジャーナリストの高野孟氏だ。「台湾有事は日本有事」の勇ましいスローガンに導かれ、我が国は再び“敗戦”への道を突き進んでいるのか。法解釈から戦闘想定、住民の避難計画まで、ご都合主義シナリオの目にあまるデタラメぶりを詳しく見ていく。(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』より)

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:何を言っているのか分からない自衛隊OBの台湾有事論。『文藝春秋』4月号特集の呆れた内容

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

自衛隊OB・本松敬史のデタラメ台湾危機シナリオ

『文藝春秋』4月号の巻頭特集は「日本地図から『新しい戦前』を考える」で、マイク・ポンペオ=前米国務長官、本松敬史=元陸自西部方面総監、李喜明=元台湾軍参謀総長、劉明福=中国国防大学教授がそれぞれの視点から「台湾有事は日本有事」と言われる危機シナリオについて論じている。

そのどれもが大いに問題がある論稿で、いちいちすべてを指摘したいところだが、とりあえずここでは自衛隊OBの本松の混乱に満ちた言説を取り上げる。

安倍・麻生の軽率なメッセージを“常識”扱い

本松は要旨次のように言う。

▼安倍晋三元首相が言い出した「台湾有事は日本有事」という言葉はなかば“常識”と化している。

▼が、日本側は「中国が台湾に侵攻すれば、隣接する日本が巻き込まれる危険性がある」という理解であるのに対し、台湾側は「我が事として日本が助けてくれる」と、180度異なった理解である。日本側にも台湾防衛のために自衛隊が協力すべきだと考えている方がいるかもしれない。

▼しかしこうした認識は“現実”からかけ離れている。台湾防衛のために自衛隊を派遣することはそもそも法的にできないからである。

▼台湾とは正式な国交がないため、「日本台湾交流協会」台北事務所に元自衛官と文官が常駐しているだけで、台湾軍と自衛隊の直接交流はなされていない……。

本松は、「台湾有事は日本有事」はなかば常識化していると言うが、彼のこの文章そのものがすでにその“常識”の怪しさを物語っている。

第1に、安倍と麻生太郎副総裁(当時)が21年3月のデービッドソン=前インド太平洋軍司令官の「6年以内に中国が台湾に侵攻する」との議会証言に悪乗りして言い出した「台湾有事は日本有事」発言だが、定義もなく戦略的な検討もない無責任な軽口のようなものであったため、台湾側には台湾有事に際して自衛隊が参戦・加勢してくれるかの誤った期待を抱かせ、また中国側にはいざという場合には米軍だけでなく自衛隊をも最初から敵として計算に入れて作戦を立てなければならないかの過剰な対日警戒感を植え付けることになった。

国家と国民の安全を危険に晒す軽率極まりない対外的なメッセージであった。

「日本が自衛隊を派遣できない理由」を勘違い

第2に、日本が台湾防衛のために自衛隊を派遣することがそもそもできないというのはその通りだが、その理由を「法的に」と言うのは間違いで、「憲法上」と言わなければならない。

第3に、本松がその「法的に」の説明として台湾との間に国交がなく、自衛隊と台湾軍の直接交流がないことを述べているのは全くのピント外れ。仮に国交があったとしてもそれだけで他国の防衛に自衛隊を派遣することは、日本国憲法上はもちろん国際法上も、できない

相互防衛条約を結んでいれば「台湾有事は日本有事」として自衛隊を送れるけれども、「日本有事は台湾有事」でもあるので、例えばロシアや北朝鮮が日本を攻撃した場合は台湾軍が来援すると盟約し合わなければならない。

それには中国との国交を断絶して台湾と国交を結び、さらに日本国憲法違反を侵してそのような軍事同盟を結ばなければならないので、現実には不可能である。

第4に、それなのに、米軍と一緒になって台湾有事に対処するシミュレーションを盛んにやっているのは、「米軍の背中に隠れてやれば大丈夫だろう」という奴隷根性の現れに過ぎない。

中国側の戦争意思決定プロセスを理解していない

そのようなシミュレーションでは、まず日本政府は2016年の「安全保障関連法」に基づき、

  1. 重要影響事態(放置すれば日本の平和・安全に重要な影響を与える事態なので、米軍への広範な後方支援を行う)、
  2. 存立危機事態(米軍が先頭に入り日本の存立が脅かされる事態なので、日米安保条約に基づく集団的自衛権を行使して「必要最小限度の武力行使」を行う)、
  3. 武力攻撃〔予測〕事態(日本に対する武力攻撃が発生した〔またはそれが予測される〕事態なので、個別的自衛権に基づき武力行使する)

――の3つの事態のどのレベルなのかを認定することになっている。ところが本松の悩みは……、

▼迅速な「事態認定」を行う必要があるが、困ったことに事態認定を急ぐことで生じる問題も多々ある。

▼たとえば、「重要影響事態」と認定した段階で、中国は日本を「交戦国」とみなす可能性がある。すると、その時点で中国本土には数多くの在留邦人が、また南西諸島に住民が残留しているとすれば、中国の攻撃対象にされる恐れが出てくる……。

第1に、3つの「事態」のどれに当たるかの認定は、日本の超国内的な官僚的手続きにすぎず、中国はそんなものに興味を持っていない

日本が「重要影響事態」と認定したのを見て中国が初めて日本を「交戦国」とみなすかもしれないなどと心配するのは全くの机上の空論で、そもそも日米安保条約で米国に軍事的に従属して在日米軍基地の自由使用を認め、さらに自衛隊がその米軍と一体になって中国軍に当たることを想定した南西諸島の軍事基地化を進めている現段階を中国側から見れば、すでに「交戦国〔候補〕」と認定するに十分なはずである。

第2に、現実の台湾軍事危機の様態を考えれば、自衛官出身の軍事評論家=文谷数重が言うように〔本誌No.1223およびNo.1164参照〕中国は恐らく電撃的な短期決戦戦術を採って台北を制圧することに集中し、尖閣や南西諸島などへの戦力分散を避けようとするだろうが、それでも制海・制空権確保の邪魔になると判断すれば在日米軍と自衛隊を攻撃するかもしれない。

「中国は南西諸島だけを狙う」沖縄本島130万人の生命を軽視

第3に、従って、中国本土や台湾の在留邦人を救出する暇などなく、ましてや南西諸島10万の住民プラス2万の観光客を1週間もかけて九州方面に疎開させるなどという計画が画餅に終わらないはずがない。

仮にそれが上手くできたとしても、それが完了する前に台北の事態は決着している可能性が高い。

第4に、その場合、中国が狙うのは必ず南西諸島だと決め込んでいるようで、その証拠に沖縄本島の県民は島外へ出ず「屋内退避」をさせることになっている。

もし中国が開戦と同時に日本を狙うとすれば、まずは第7艦隊空母が駆けつけるまでの間、最重要の爆撃機・戦闘機・偵察機の出撃基地となる嘉手納空軍基地と、オスプレーによる兵員・物資の輸送拠点となる普天間海兵隊航空基地になるはずで、真っ先に避難させるべきは本島の130万人である。出鱈目なのだ。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2024年3月11日号より一部抜粋・文中敬称略。ご興味をお持ちの方はご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。


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