■トランプ圧勝「スーパーチューズデー」で深まる米国分裂の危機。 | タマちゃんの暇つぶし

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マネーボイス:トランプ圧勝「スーパーチューズデー」で深まる米国分裂の危機。共和党を支持しているのは誰か?=高島康司氏2024年3月10日より転載します。
 
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https://www.mag2.com/p/money/1423763
 

アメリカで15州が一斉に投票を行い、共和党と民主党の統一候補を決定する「スーパーチューズデー」が始まった。やはりその背後で、アメリカが分裂に向かう懸念が高まっている、それをリアルに伝える。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

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スーパーチューズデーのトランプ勝利と米国の分裂

この メルマガ ではアメリカの分裂の可能性を継続的に書いているが、スーパーチューズデーでトランプが勝利したので、いまのアメリカの国内がどうなっているのか、改めて解説することにした。

スーパーチューズデーが始まった。スーパーチューズデーとは、単独の州で予備選や党員集会が行われるのではなく、共和党の場合は全米15の州で、民主党の場合は16の州で一斉に投票が行われるのがスーパーチューズデーだ。

共和党の場合は代議員総数の3分の1以上、民主党も同等の代議員数が投票で決まる。投票が行われる州は、アラバマ州、アラスカ州(共和党のみ)、アーカンソー州でも予備選が行われる。それ以外ではカリフォルニア州、コロラド州、メーン州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、テネシー州、テキサス州、ユタ州、バーモント州、バーニジア州だ。

トランプは、バーモント州を除く14州で勝利し、圧勝した。対立候補のヘイリーは撤退を表明したので、トランプが実質的に共和党の統一候補となるのが確実な状況だ。一方、同じく行われている民主党の予備選では、対立候補がいないので、バイデンが勝利する見込みだ。

トランプ革命党になりつつある共和党

トランプの動向や共和党の動向については日本の主要メディアでも注目され、頻繁に報道されている。しかし、トランプがなぜここまで強いのか、分かりやすい解説はされていない。2016年と2020年の大統領選挙では、グローバリゼーションの流れに乗り切れず、貧困化した米中西部、「ラストベルト」の労働者層が岩盤支持層であった。この層はもともと民主党支持であったが、2016年からトランプ支持に乗り換えたと日本では解説されている。

しかし、トランプの支持層はかつてよりも拡大している。「ラストベルト」という地域性には限定されなくなっているのだ。それというのも、共和党全体がトランプの党に変質したからだ。この変化をもっともよく現しているのが、共和党トップであったミッチ・マコーネル院内総務の役職からの引退である。これはどんな変化なのか説明しよう。

いまだに日本では、アメリカの政治は資本家を代表し、市場の合理性を尊重して小さな政府を主張する共和党と、労働者や人種的マイノリティー、さらに社会的弱者の利益を代表し、所得再配分を行う大きな政府を主張する民主党との対立で運営されていると見られている。たしかにこの構図は、南北戦争が終結した1865年から、1990年代の始めくらいまではそうであった。しかし、ブッシュ(父)政権が終わり、クリントン政権が成立した1992年頃から、徐々にではあるが、共和党は本質的に変質する道をたどった。

クリントンとブッシュ(父)の大統領選挙が行われていた1991年、大統領だったブッシュの人気はあまりなく、再選は危ぶまれる状況だった。これに危機感を感じた共和党は、新しい共和党の支持層の開拓にやっきになった。そこで彼らが目をつけたのは、キリスト教原理主義の福音派であった。福音派はアメリカで8,000万人もいるものの、彼らは大統領選挙には投票していなかった。それというのも、福音派はハルマゲドンを信じており、世界最終戦争の後、神が降臨して千年王国ができると確信しているので、現実の政治にかかわることは無意味であると考えていたからだ。そのため福音派は、投票行動そのもに対して非常に消極的であった。

そのような福音派に目をつけたのがのが、苦戦するブッシュ陣営の共和党であった。福音派教会に接近し、大統領選挙では共和党に投票するように説得した。ハルマゲドンの条件を実現するためには、政治とかかわることが必要だと説いた。福音派は説得に応じ、雪崩を打ったように選挙に参加し、共和党候補を積極的に応援もするようになった。

しかし、聖書を字句通りに信じ、あらゆる出来事に神の働きを見る福音派の流入は、伝統的な富裕層の保守派で基本的には合理的な共和党の支持層を恐怖させた。英語には「ジーザス・フリーク(イエスの気違い)」という言葉がある。まさにその言葉にぴったり合致する人々が、いきなり現れたのだ。これに恐怖した伝統的な支持層の一部は、民主党に投票し、92年の選挙ではクリントンが圧勝した。

これ以降、民主党には米経済を代表する資本家層が中心的な支持層としして加わわった。なぜ移民の流入に許容的な有色人種や労働者の党に、資本家層が加わったのか奇妙に感じるかもしれない。だが、移民の流入は資本家層の利害に合致するのである。アメリカの企業は、労働組合の交渉力を弱め、なおかつ賃金を安く抑えることが利益を増大させるための重要なカギだと見ている。安い労働力の供給源となる移民の流入を促進すると、賃金の伸びを抑えることができるだけではなく、白人労働者との人種的な対立から、労働組合の結集力は弱くなる。これは米資本の大きな利益となるのだ。この結果、有色人種の労働者と資本家が、同じ民主党を支持することになった。民主党は、1%(富裕層)と10%(有色人種と貧困層)の党になったといわれている。

反対に。共和党は福音派の党へと変質した。福音派の信者の多くは、白人の労働者層であった。この層の周辺には、リバタリアンや白人至上主義者、また「クークラックスクラン」、さらに「ネオナチ」のような極端なイデオロギーに許容的なグループもいた。共和党は彼らの政党になった。そして、2001年には福音派を支持基盤としたブッシュ政権が誕生した。さらに、2009年に盛り上がったティーパーティー運動などを通して福音派との関係はさらに強まり、共和党はキリスト教の白人労働者を基盤とした党に変質した。

反対に民主党には、さらに多くの資本家層が集合し、エスタブリッメントの党になった。

Next: トランプを支持しているのは誰か?ワシントンポストの調査から見えること

「ナトコン」の党に変質

共和党のこの傾向は選挙のたびに強まり、現在では完全に「ナトコン」の党になったと言われている。「ナトコン」とは、「National Conservative」の略である。キリスト教徒で高卒の白人労働者層を指す。彼らは、「ラストベルト」という特定の地域に限定されているわけではなく、広く全米にいる。要するに共和党は、かつてのエスタブリッシュメントの党から、白人労働者の福音派の党に変質したのだ。

共和党の重鎮、ミッチ・マコーネル上院議員の院内総務からの引退は、共和党にエスタブリッシュメントの勢力がほとんどいなくなったことを現している。マコーネルこそ、かつてのエスタブリッシュメントの党であった共和党を代表する人物であった。

一方民主党は、共和党から移ってきたエスタブリッシュメントが右派の勢力を形成し、左派は少数民族や移民、そして高学歴の若い専門家層が形成するというアンバランスな党になった。このため右派と左派は同じ党とは思えないほど分裂し、右派左派とも受け入れ可能な、穏健で中道派の政治家がほとんどいなくなってしまった。1%の富裕層と99%の中間層、ならびに貧困層が同居した政党になってしまった。このため、議会経験の長いバイデンしか、中道派がいなかったのだ。

ちなみに、共和党を実質的に乗っ取った「ナトコン」がどういう人々なのか、もう少し見てみよう。最近、トランプの支持層を明らかにするため、「ワシントンポスト紙」が行った調査から、次のことが分かった。

<トランプ共和党の支持層>

1)支持層の年齢
・65歳以上  36%
・50歳~64歳 35%
・40歳~49歳 13%
・30歳~39歳 9%
・17歳~29歳 7%

2)政治的志向
・大変に保守的  52%
・ある程度保守的 38%
・穏健      9%
・リベラル    1%

3)学歴
・高卒者の割合が大卒者を25%上回っている。

これを見ると一目瞭然だが、トランプの共和党の支持層がよく分かる。なんと支持層の84%が、おそらく高卒の中高年だ。この人々は、まだアメリカの中間層がグローバリゼーションで解体されておらす、豊かに暮らせていた時代の記憶を強く持っている人々である。

Next: 求めているのは連邦政府の解体?トランプが勝利するとどうなるのか

連邦政府の解体を求める

この「ナトコン」の求めるものは、不必要な省庁の解体による連邦の大幅な縮小である。

彼らは、アメリカ社会を構成する基本的な単位は成人の男女とその子供たちが作る核家族であり、地域の政治と経済、そして社会の運営は、核家族がつながった地域共同体がすべて担うべきだと考える。

彼らは、アメリカの社会問題の多くは、巨大化した連邦政府が地域共同体から権限を奪い、社会の運営能力を抑制していることから起こると見る。連邦政府の大幅縮小と省庁の解体が社会問題の解決につながるのもこれが理由だ。

これは一言で言えば、「リバタリアン」の世界観そのものである。アメリカの「リバタリアン」は、19世紀の終わりから存在している。しかし比較的最近にいたるまで無政府主義的な「リバタリアン」は、「白人至上主義」や「ネオナチ」のような周辺的な政治運動であり、社会への影響力は限定的だった。しかし、トランプの出現後、この世界観と価値観は膨大な「ナトコン」の世界観となり、いまでは共和党を完全に乗っ取るまでに巨大化した。

2016年の大統領選挙で「リバタリアン」が影響力のある政治勢力として出現し、人々を驚かせたが、それから8年経ち、「リバタリアン」の世界観はトランプが主導する共和党全体を主導する思想となった。

拡大する分断

この メルマガ では、アメリカの分裂した状況を継続して紹介しているが、こうした「リバタリアン」的な世界観の拡大でアメリカの分断はさらに深まり、収拾がつなくなっている。アメリカの共和党員の半数(54%)は、今後10年以内にアメリカの内戦が起こる可能性が非常に高いか、ある程度高いと考えている。民主党では10人に4人(40%)がそう考えている。また、23%のアメリカ人が、自州の連邦離脱を支持している。

ジョージア州の共和党右派、マジョリー・テイラー・グリーン下院議員は、「国家的離婚」を呼びかけている。赤い州と青い州で分離する必要があるという。

この分裂は、2020年の選挙で、バイデンに投票した青い州とトランプに投票した赤い州の間で見られている。また、トランプに投票した多くの州は、南北戦争の始まった1861年に連邦から離脱した州でもある。いま南北戦争当時の南部連合は、「ナトコン」が結集する「リバタリアン」の州になっている。そしてこの分裂は、社会問題に対する根本的に異なる見方を反映している。

妊娠中絶に関する法律が最も厳しい15の州のうち、2020年にトランプ大統領に投票した州はすべて南部連合に属していた。2023年に最も寛容な銃刀法を制定した21州のうち、19州がトランプに投票し、6州は南部連合に属していた。

2022年に黒人と移民の投票を難しくする法律を制定した19州のうち、14州がトランプに投票し、7州が南部連合に属していた。また、2023年にジェンダーを肯定するケア、トランスジェンダーの学校スポーツへの参加、LBGTQ問題に触れた学校での指導や関連事項に制限を課す法律を制定した23州のうち、22州がトランプに投票し、9州が南部連合に属していた。

改めて確認するが、事実上いま2つのアメリカが存在し、戦争状態にある。社会問題、政治問題、憲法問題、そしてアメリカが世界で果たすべき役割をめぐって争っているのだ。2024年のアメリカ選挙は、この戦争におけるもうひとつの戦いにすぎないのだ。

Next: 南北戦争のような内戦になる?日本も決して傍観できない

南北戦争のような内戦になるのか?

このように、南北戦争時代の南部連合は、いまは「ナトコン」の「リバタリアン」の州になっている。では、かつての南北戦争のように、共和党の赤い州が連邦から離脱を宣言し、それが内戦に発展するのだろうか?もちろんその可能性はある。だとしたら、どのような展開になるのだろうか?

そのシナリオのひとつは、トランプが刑務所に収監さえ、立候補が阻まれる状況である。周知のように、いまトランプは4件の刑事訴訟も含め、90件ほどの訴訟を抱えている。そのうちのいくつかは、有罪となれば刑務所に収監される可能性もあるものもある。もしそうなれば、「ナトコン・リバタリアン」の武装蜂起ということもあり得る。すでにトランプの岩盤支持層の中には、そうなった場合は蜂起すると明言している人々もいる。

しかし、騒乱の発生が予想されるとき、司法と言えどもトランプを収監するような判決は出せないだろうという意見の方が多い。収監と立候補禁止が内戦の引き金になるかもしれないからだ。

実は、これとは異なった、内戦にいたるシナリオがささやかれている。それは、いま話題になっている新しい映画、「ウォー・ゲーム」が提示するシナリオだ。以前の記事でアメリカの内戦を描いた「シビル・ウォー」という映画の予告編が大変に注目されていることを紹介したが、「ウォー・ゲーム」もアメリカの内戦をテーマにした映画で、極めてリアリティーがあるとして大変な話題になっている。

これは、2021年1月6日の連邦議会議事堂占拠事件に刺激され、退役軍人の組織が、もし米軍の一部が占拠を支持して動いていたらどうなっていたのかシミュレーションしているのを知り、これを元に映画にしたものだ。ジェシー・モスとトニー・ガーバーの2人が監督している。メイキングは以下で見ることができる。

・War Game 2024 Official Featurette
https://www.dailymotion.com/video/x8rkfg5

興味深いことに、この映画にはプロの俳優は一切出演していない。キャストは、退役した将軍やトランプ政権の元高官、元州知事や上院議員など、実際にホワイトハウスの意思決定の場にいた人々だ。元NATO軍最高司令官のウェズリー・クラーク大将もキャストの一人だ。場面はすべて、ホワイトハウスのシチュエーション・ルームで展開する。最近、「サンダンス映画祭」でプレミア上映された。

シナリオはこうだ。トランプをモデルにした保守派の対立候補に、バイデンがモデルの現職の大統領が僅差で勝利する。しかし、この大統領選挙の結果に疑問を持った「コロンブス騎士団」と呼ばれる右派の準軍事組織が蜂起する。これを率いるのは、トランプ政権の元補佐官、マイケル・フリンをモデルにした人物だ。「コロンブス騎士団」は米軍内部に派閥とネットワークを持っており、現職大統領の勝利を覆すために、軍の一部を率いて蜂起する。州兵の隊員たちは仲間に武器を向け、他の部隊の隊員たちも各州でそれに続く。反乱のニュースはSNSを使って一気に拡散し、多くの州で抗議の蜂起が始まる。ホワイトハウスでは、マーク・ザッカーバーグに電話をかけて、反乱の情報の拡散を抑止しようとする。

だが、ホワイトハウスも一枚岩ではない。大統領に迅速かつ果断な行動を取るよう促す介入主義勢力と、火に油を注ぐようなあからさまな武力行使のリスクを冒すことなく脅威を弱め、より繊細に行動するよう助言する勢力とが対立し、意思決定が大幅に遅れる。

こうした内容だ。元政府高官や上院議員、退役将軍などがキャストであるだけに、すさまじい緊張感のある映画である。出演者や監督も、2024年11月には、本当にこのようなシナリオが現実化する可能性は否定できないと発言している。

「ウォー・ゲーム」のこのシナリオは、どちらか一方が大差で勝利しない限り、誰が大統領になるにせよ、対立はさらに深まり、収拾がつかなくなる可能性を暗示している。2020年の選挙が盗まれたと考えているトランプ支持者は、2024年の敗北を潔く受け入れるとは考えられない。一方、もしトランプが勝利した場合、バイデン支持者は共和党の選挙妨害だと決めつけ、大規模な抗議行動、ないしは最悪な場合は反乱を仕掛けるかもしれない。

とにかく目が離せない時期に入った。アメリカの混乱は避けられないだろう。これは日本にも大きな影響を与えるはずだ。


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