■崩壊寸前の訪問介護で、なぜ基本報酬を引き下げる? | タマちゃんの暇つぶし

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講談社:2024.03.10崩壊寸前の訪問介護で、なぜ基本報酬を引き下げる? 人手不足が深刻なのにより転載します。
 
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https://gendai.media/articles/-/125341
 



介護の有効求人倍率は、全国で4.2、東京では7.7にもなっている。訪問介護では、15.5だ。こうなるのは、介護分野の賃金が低いからだ。引上げは行なわれているが、他の分野の賃上げに追いつかず、介護分野の就労者が減少している。

そうした中で、2024年には訪問介護の基本報酬が引き下げられる。これでは、訪問介護は崩壊してしまう。


by Gettyimages

深刻な人手不足、訪問介護は崩壊寸前

介護部門は、深刻な人手不足に直面している。

これを端的に表しているのが有効求人倍率だ。2023年12月で、全職種で1.23、一般事務 従事者では0.37であるが、介護サービス 従事者は4.20と極めて高い(厚生労働省、一般職業紹介状況、令和5年12月分について)。

大都市ではとくに高い。東京都では介護関連の有効求人倍率が7.74だ(2023年12月、なお全職業では1.55)。

訪問介護に関しては、さらに深刻だ。訪問介護を提供するヘルパーの有効求人倍率は、2022年度で15.53だ(社会保障審議会 介護給付費分科会、第220回。 資料1令和5年7月24日)。ヘルパー不足がいかに深刻かがよく分かる。

ヘルパーの年齢も高い。平均年齢は54.4歳で、約4分の1が65歳以上だ。腰痛などのために退職する人が多い。

日本の介護保険は、在宅介護を基本とすることになっていたはずだ。しかし、このような状態では、満足なサービスを期待することができない。

地域によっては、デイサービスなど必要な在宅介護サービスを受けるのが難しくなったり、訪問介護の要請を断らざるを得ない事態が発生しているという。

訪問介護は、存続の危機に直面していると考えざるをえない。

次ページ:かなり低い介護の賃金

他職業との賃金格差が拡大、介護部門の労働力が減少

有効求人倍率が上記のように非常に高い値になるのは、介護部門の賃金が低いからだ。また労働条件も過酷な場合が多い。

では、介護部門の賃金は、どの程度だろうか?

厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、2021年における介護部門の賃金月額は、つぎのとおりだ(企業規模10人以上、男女計、「所定内給与額」)。

・介護職員(医療・福祉施設等) :235.9(千円)
・訪問介護従事者  257.6(千円)

これは、一般労働者の平均307.4千円に比べると、かなり低い。

なお、厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護従事者の2021年9月の平均給与額(月給・常勤の者)は、323.2千円だ。これは、2020年の 315.4千円に比べて7780円(2.5%)の増加であり、伸び率は経済全体の平均よりは高い。しかし、水準が低い。しかも、近年の物価高騰のために他部門の賃金が上昇するので、他の職種との差が開いた。

岸田文雄内閣は、介護従事者の賃上げを最重要の課題としてきた。政権発足直後の2021年11月の閣議決定で、「新しい資本主義」の経済対策の一環として、保育士や介護・障がい福祉職員などを対象として、収入の3%程度(月額9000円)の引き上げ措置を打ち出した。 そして、2022年2月から、介護職員・保育士の賃金を月額9000円引き上げた(ただし、訪問介護などは、対象外)。この措置は、22年10月以降は介護報酬に組み込まれて恒久化された。

しかし、それでも全体の賃金上昇に追いつかず、格差はさらに拡大した。

実際、賃上げにもかかわらず、2022年には、介護分野からの離職者が入職者を約6万3000人を上回り、就労者が前年より1.6%減少した。

次ページ:訪問介護の引き下げ率は2%強


訪問介護の標準報酬を切り下げという暴挙

2024年度の介護報酬の改定率は、1.59%の引き上げとなった。改定率の内訳は、介護職員の処遇改善分が0.98%、その他の改定率が0.61%。これらとは別に、改定率の外枠での引き上げが0.45%相当になる。

しかし、前回の本欄で述べたように、訪問介護、定期巡回・随時対応訪問介護看護、夜間対応型訪問介護の3サービスの基本報酬は引き下げられる。訪問介護の引き下げ率は2%強だ。

2022年度の利益率が、全サービス平均では2.4%だったのに対して、訪問介護では7.8%であったことが、一つの根拠となった。

また、厚生労働省は、「処遇改善加算」が拡充されたことを強調している。職場環境の改善や研修の実施などの要件を満たせば,]基本報酬に加えて、訪問介護の場合に最大24.5%を加算できるという。しかし、制度が複雑で、実際にどれだけの効果があるかは、疑問だ。

次ページ:要支援・介護にならなければ

保険料は払ったが給付は受けられない

本稿の最初に述べたように、訪問介護の有効求人倍率は15倍を超える。そして、2021年に3%の賃上げをしたにもかかわらず、介護従事者が減少している。

人手不足が深刻なのに報酬を切り下げられてしまっては、在宅介護は破綻してしまうだろう。それは決して杞憂のものではなく、地域によって現実の問題となっている。

訪問介護だけでなく、介護保険そのものが破綻するかもしれない。年金や医療保険では、「保険料は払ったが、給付は受けられない」という事態には、まずならないだろう。しかし、同じことを介護保険に期待できるのかどうか、怪しくなってきた。もちろん、要支援・介護にならなければ、介護保険料は掛け捨てになる。しかし、介護サービスが必要であるにもかかわらず、それが得られないのでは困る。

我々の世代は、介護保険が発足する直前に、親の介護を(当然、全額自己負担で)行なった。そして、介護保険が発足すると、今度は、保険料を支払うことになった。そして、自分たちの介護が必要となると、介護サービスが必要になっても受けられない。何と運が悪い世代だろうと思わざるをえない。

国や地方公共団体は、「保険料詐欺」と言われないように、何とか約束通りの介護サービスを確保できるよう、努力を続けてもらいたいものだ。

次ページ:抗議の声上がるが

保険料率や自己負担の引上げは進まず

介護保険に関しては、保険料の引き上げや自己負担率の引き上げが検討されている。

2023年11月6日の社会保障審議会の介護保険部会で、介護保険料の引き上げ案が示された。65歳以上の高齢者について、年間所得水準が高い人たちの介護保険料を引き上げる案が了承され、24年度の制度改正での実現を目指すこととされた。 厚生労働省は、2024年度から引き上げる方針だ。

自己負担での引き上げも提起され、政府は2024年度に介護サービス利用費の2割自己負担者の対象を広げる方針を示した。しかし、年内の取りまとめを見送ることを12月1日に明らかにした。

このように、介護保険に関して問題は山積みなのだが、まず緊急の課題として、上記の訪問介護の基本報酬切り下げを撤回すべきだ。

今回の措置に対しては、全国社会福祉協議会・全国ホームヘルパー協議会と日本ホームヘルパー協会が、2月1日、厚生労働省に対して、抗議文を提出した。「ウィメンズアクションネットワーク」、「高齢社会をよくする女性の会」など5団体は、撤回を求める緊急声明を公表した。事態がどう推移するかを見守ることとしたい。
 

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