https://www.mag2.com/p/money/1422041
エヌビディアがどこまで伸びるのか注目されています。確かに、生成AIの発達によってエヌビディアの力が大きくなっていますが、果たして今の株価を正当化するほどの楽観をして良いのかと疑問を抱いている人もいるかもしれません。今回は私から一つの見方を提示したいと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
絶好調エヌビディア
エヌビディアの株価は過去1年で3.5倍にもなっています。
OpenAIのChatGPTがリリースされたのが1年ほど前ですが、そこからほぼ落ちることなく上がってきました。
これは縦軸が価格、横軸が量の需給曲線で、需要曲線と供給曲線が交わったところで価格が決まり、価格×量(長方形の面積)が売上となります。
エヌビディアのGPUの供給曲線が赤線のようになっていて、元々の需要曲線は青の破線のところでした。
しかし、需要が一気に増え、需要曲線が青の実線のところまで右にずれて価格も上がりました。
供給をすぐに増やすことはできないので、実際には上図よりも価格は上がっている状況です。
このような価格の高騰で今エヌビディアは儲けていると言えます。
四半期別の売上高を見ると、1年前の四半期と比べて供給量は2倍くらいになっていて、それに対して売上高が4倍くらいになっているので、価格は2倍以上になっていると思われます。
価格が上がった分に関してはそのまま利益となり、しかもシェア100%ということで、今のエヌビディアは濡れ手に粟の状態となっています。
Next: 成長は今後も続くか?半導体銘柄に潜む投資リスク
GPUのデメリット
<価格が高い>
ここで気をつけたいところは、価格が高騰しすぎているということです。
価格が上がっても買いたいという人ももちろんいるでしょうが、いくら高くても買えるお金持ちの企業はそう多くないと思われます。
例えばスタートアップの企業で、今AIを開発して市場に投入できれば将来儲かるかもしれませんが、何兆円という単位の世界になってしまっているので、普通のスタートアップ企業では太刀打ちができません。
さらに、物を作れば儲かることが確定していれば良いのですが、AIの世界も競争にさらされていて、そもそもAIを使ったことがない普通の消費者や企業がいきなり大枚をはたいてAIを買おうとするとは考えにくく、一旦待つという動きになるのではないかと思われます。
GPUは資金を潤沢に持った大手企業しか買えない価格になっていて、OpenAI、Microsoft、GoogleといったところがGPUを買いあさっている状況だと考えられます。
スタートアップとしては、GPUを直接買うよりもOpenAIにAPI接続してChatGPTを使った方が低コストでできます。
今世の中にあるAIのサービスのほとんどはOpenAIのChatGPTと接続してクラウドを使って行われています。
そのクラウドのサーバーにはGPUが使われているのですが、サーバーを買っているのがOpenAIやMicrosoft、Googleという大手企業ということになります。
今はMicrosoftとGoogleが競って投資をしていますが、もしこの投資がストップしたら、高いGPUを買える人がいなくなってしまい、価格が下がってしまいます。
価格が下がると当然エヌビディアの儲けは続かないということになります。
<電力消費量が多い>
世の中では”グリーン”が提唱され、電力消費を抑えなければならない状況ですが、GPUを動かすためには大量の電力が必要で、かつ、サーバーを冷やすための冷却装置にも電力を使います。
かつて中国で仮想通貨のマイニングのし過ぎで電力が足りなくなった時と同じようなことがAIの世界でも起こるのではないかと懸念されています。
<エヌビディア依存からの脱却>
MicrosoftやGoogleからすると、GPUをエヌビディアに握られている状態は決して良い状態ではありません。
どうせ自分たちが使うのであれば自分たちで作った方が良いのではないかと考えるかもしれません。
MicrosoftやGoogleはエヌビディアのお客さんでありながら実はライバル関係にもあると言えます。
Next: 勢いが止まらぬ生成AIブーム……問題はマネタイズ?
AIのマネタイズ問題
今でこそMicrosoftとGoogleでAI競争を繰り広げていますが、その先にお金を稼ぐ手段がないと開発は停滞しがちです。
生成AIが盛り上がって、ChatGPTの導入数も急増していると言われますが、果たしてそれが一般にも広がるのか疑問があります。
出典:東大IPC
つばめ投資顧問は、本格的に長期投資に取り組みたいあなたに役立つ情報を発信しています。まずは無料メールマガジンにご登録ください。またYouTubeでも企業分析ほか有益な情報を配信中です。ご興味をお持ちの方はぜひチャンネル登録して動画をご視聴ください。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取り扱いには十分留意してください。
【関連】トヨタにとって日野自動車は用済み?除名処分は「いすゞ・日野」経営統合への布石か=栫井駿介
『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2024年3月4日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
貼り付け終わり、