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自民党の裏金問題を受け開かれた衆院政治倫理審査会(政倫審)に、現職の首相として初めて出席するも、従来の説明を繰り返すのみに終わった岸田首相。実態解明に何の役も果たさなかったと言っても過言ではないこの政倫審、そして一連の裏金問題を、識者はどのように見ているのでしょうか。今回のメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』ではジャーナリストの有田芳生さんが、裏金作りが判明した51人のうち46人が出席を申し出ていない政倫審を「茶番」と一刀両断。さらに外部調査で判明した裏金を巡る事実をあらためて詳細に解説するとともに、調査報告書が明らかにしていない部分を取り上げ、そこに重要な問題が隠されているとの指摘を記しています。
終わらない自民党「裏金問題」。衆院政治倫理審査会の茶番
2月29日、3月1日に衆議院政治倫理審査会が開かれ、岸田総理と5人の「安倍派」「二階派」の議員が出席した。しかし裏金作りが判明した51人のうち、46人が出席を申し出ていないから茶番だ。
とくに二階俊博元幹事長や萩生田光一前政調会長は、多額の裏金をもらっていたにも関わらず、黙ったままである。森喜朗元首相などは、1998年から2000年、01年から06年に派閥会長を務めたが、岸田総理は調査の「必要がない」と逃げてしまった。
直接には裏金疑惑のない総理本人が政倫審に出るのは、予算案を通過させないと政権崩壊に直結するからだ。「出る」「出ない」で優柔不断ぶりを示してきた「安倍派」4人組は、政権を揺さぶる目的もあった。しかし、総理が出席して自分たちが出ないと処分される可能性があったので、最終的には折れるしかなかった。
当面は衆議院の政倫審が終わり、予算案が衆議院で通過すれば、舞台は参議院へと移る。それでも「裏金問題」は終わらない。
裏金を「還付金」、中抜きを「留保金」とする姑息なごまかし
自民党の森山裕衆議院議員を座長とする調査チーム(6人)は、外部の弁護士事務所(森・濱田松本法律事務所、東京八丁堀法律事務所)に聴き取り調査を依頼した。7人の弁護士は、2月2日から8日までに91人の自民党議員などから調査を行った。その結果として「聴き取り調査に関する報告書」を2月15日に自民党に提出している。
調査対象は現職の自民党国会議員82人と現職ではない選挙区支部長3人。あとは派閥・グループの代表または事務総長8人だが、重複があるため、実際の対象者は91人だ。派閥の内訳では「清和政策研究会」(安倍派)79人、「志帥会」(二階派)6人である。
この調査では「派閥からの金銭の還付」を「還付金」と表現しているが、政治資金パーティーのノルマを超えて販売した金額が派閥から還付されたにも関わらず、政治資金収支報告書に記載しなかったから「裏金」だ。
さらにパーティー券を販売しても、ノルマ超過分を派閥に渡さなかったものを「留保金」と表現したが、これは「中抜き」である。言葉の意味を誤魔化すのはジョージ・オーウェル『1984』の世界だ。「ニュースピーク」(新語法)で、たとえば「自由は屈従である」。「裏金ではない。還付金だ」。
調査報告書で「明らかにされなかった」こと
調査でわかったのは、裏金(還付金)をもらっていたのは53人、中抜き(留保金)は16人、両方の方式を取ったのは16人の合計85人だった。調査した期間は、政治資金規正法で時効を迎えていない平成30(2018)年から令和4(2022)年の5年間だ。
裏金の総額は、5年間で5億7,949万円。85人の個人ごとの裏金では、最多の3,501万円から4,000万円が1人、次が2,501万円から3,000万円で2人、2,001万円から2,500万円は3人、1,501万円から2,000万円は7人だ。
この金額と聴取した議員の名簿を照らしていくと問題が明らかになる。まずは起訴された大野泰正参議院議員(5,100万円)、逮捕された池田佳孝衆議院議員(4,800万円)、辞職した谷川弥一前衆議院議員(4,355万円)は、聴き取り調査の対象になっていない。調査報告書では、聴取した議員の名前は公開したが、それぞれの議員がいくらの裏金や中抜き金を入手していたかは明らかにしていない。
報告書に書かれていない部分に重要な問題が隠されている。自民党「安倍派」や「二階派」が隠したいものは何か。(「下」に続く)
※ 本記事は有料メルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』2024年3月1日号の一部抜粋です。3月のメルマガでは、この記事の続きを配信予定。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込880円)。
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