■“新NISA熱”でのヤケドに注意。 | タマちゃんの暇つぶし

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マネーボイス:“新NISA熱”でのヤケドに注意。「投資に乗り遅れた」と焦る人ほど後悔する理由とは=田内学氏2024年2月2日より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/money/1410296
 

現在の日本では上場株式の新規発行による資金調達は少ない。年間700兆円ほどの株取引のうち、新規発行される株式は1兆円程度。だがしかし、預金口座に眠っているお金を株式投資に回したところで、実は企業側に資金需要がなければ企業には流れないのだ。
ではなぜ、新NISAがスタートしたことによる「今から株を始めなくては」と焦る人が増えているのだろうか。今回は「新NISA熱」でヤケドをしないために気をつけたいことを解説していく。(『 金融教育家・田内学の「半径1mのお金と経済の話」 』)

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※本記事は有料メルマガ『金融教育家・田内学の「半径1mのお金と経済の話」』2024年1月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:田内学(たうち まなぶ)
社会的金融教育家。東京大学工学部卒業。同大学大学院情報理工学系研究科修士課程修了。ゴールドマン・サックス証券株式会社入社以後16年間、金利トレーディングデスクで日本国債、金利デリバティブ、長期為替などのトレーディングに従事。日本銀行による金利指標改革にも携わる。著書に高校社会科教科書「公共」(共著、教育図書)、「お金のむこうに人がいる」(ダイヤモンド社)など。「朝まで生テレビ」「グッド!モーニング」などテレビ出演なども多数。最新刊「きみのお金は誰のため」は発売2ヶ月で10万部を超える。灘高前校長の和田孫博氏や社会学者の宮台真司氏、女優の長谷川京子氏などからも推薦を受ける。

新NISAに「乗り遅れた」と焦る人の盲点

2024年、3万3,000円で始まった日経平均は3万6,000円近くまで上昇した。株価上昇の理由として、「利上げ懸念の後退」や「日本企業の稼ぐ力への期待」などとも言われているが、いちばんの理由は「新NISA」の影響だろう。

 

NISA口座で投資したときの非課税枠が拡充されたことで、日本株にも個人の投資マネーが流れ込むと言われている。

連日聞こえてくる「バブル崩壊後の日経平均の最高値更新」という言葉に、「自分だけ乗り遅れてしまったんじゃないのか」「今からでも株を買ったほうがいいのか」と不安に思っている人も多いことだろう。

小説『きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』(東洋経済新報社)では、投資は1つの重要なテーマになっていて、主人公・優斗の母もNISAを始めようとしている。

(優斗が、本を)選び終えて振り返ったとき、すぐ隣の棚では、福田のおばさんと母が二人して本を吟味していた。

「ねえ、これはどうかしら。税金のことも書いてあるのよ」

おばさんが手にした本の帯に、「初心者」「投資」という単語が見える。2人の前にある本棚には、お金の貯め方や増やし方の本が並んでいた。

会計を終えたあとも、2人はしばらく話し込んでいて、その内容は優斗の耳にも入ってきた。

福田書店もネット通販や電子書籍に押されて将来への不安を感じているそうだ。おばさん自身もお金の勉強を始めたらしい。母もまた、年金だけだと老後は安心できないともらしていた。
引用:『きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』102ページより

たしかに投資をすることは大事だが、焦って始める前に、新NISAによる投資マネーで日本経済がどれだけ復活するか、そして株価はまだ上がるのかを、落ち着いて考えてみようと思う。株に流れる投資マネーは、2つの点で株価に影響すると言われている。

 

ひとつは株によって調達した資金で企業が事業拡大を図り、さらに株価を上昇させること。もうひとつは、株を買うことによって株価が押し上げられることである。ところが、この株による資金調達というのがくせものなのだ。

預金を投資に回したところで業績への影響は少ない

昭和の頃、野球の観戦チケットを購入する方法は2種類あった。正規の窓口で買うか、“ダフ屋”と呼ばれる転売業者から買うか。転売業者からチケットを購入しても、イベントの主催者にお金が流れるわけではない。

株式を購入する場合も、同じだ。企業が新規株式を発行する場合、その購入代金は企業に流れる。ところが、それ以外の場合は、すでに株を持っている人から購入するので、購入代金はその株を持っていた人に流れる。転売されているだけなのだ。

株の取引の場合、こうした転売の取引価格(株価)が上がることは悪いことではない。新規で株式を発行する場合に、高い価格で売ることができるから資金調達がしやすくなる。

ところが、現在の日本では上場株式の新規発行による資金調達は少ない。年間700兆円ほどの株取引のうち、新規発行される株式は1兆円程度。あなたの預金口座に眠っているお金を株式投資に回したところで、企業側に資金需要がなければ、企業には流れない。事業も拡大されないし、業績には何の影響も与えない。そのお金は、株を売ってくれた人の預金口座で再び眠ることになる。

そのお金が企業に流れなくても、個人投資家が増えて「物言う株主」が増えれば、企業の経営に影響を与えるという意見もある。経営に詳しい人が助言をするならそのとおりだが、まったくの素人が口出すのは逆効果であろう。「ピッチャーを早く替えろよ」と監督にヤジを飛ばしているようなものだ。

個人の意見が重宝されるのは、投資家ではなく消費者としての個人。「観客席でビールを販売してほしい」というような“お客様の声”を届けたほうが、よほど意味がありそうだ。

Next: 「焦って株を買う必要はない」一体なぜ?

長期的に薄れる投資マネーの影響

もうひとつ、「株を買うことによって株価が押し上げられる」と書いたのだが、長期的にみるとこちらの影響も実はあやしい。

一般的に商品の値段は需要(買いたい量)と供給(売りたい量)によって決まるはずだから、株式投資する人が増えれば価格はどんどん上がりそうだ。しかし、商品と株式投資はまったくの別物だ。商品は消費するために購入されるが、株は消費されることはない。買われた株は、いつかは売られるのだ。

たとえば、ある株を買いたい人が10人あらわれて、1,000円だった株価がぐんぐん上昇して2,000円になったとしよう。2,000円はこの企業の株価の最高値である。この時点で、この10人はみんな喜んでいる。誰にとっても含み益があるという状況だ。

しかし、この10人が利益を確定するには、誰かに2,000円で売らないといけない。買いたい人が現れなければ、価格は下落するし、2,000円でも買いたいという人が10人以上現れれば、株価はさらに上昇する。

買いたい人が増え続けている間は上昇するが、いつかは買いたい人は現れなくなり、バブルがはじける。一時的には企業の実力以上に株価が上昇することはあっても、長期的には元に戻ると考えられる。

長期的に株価を左右するのは、株式投資をする人が増えることではなく、企業の業績が伸びることだ。「バブル崩壊後の最高値更新」という言葉を聞いても、「自分だけ乗り遅れてしまったんじゃないのか」とあわてて、株を買う必要はないのだ。

株を1,000円で買って2,000円で売れば、たしかにもうかる。しかし、その裏側には、1,000円で売らされて2,000円で買わされている人が必ず存在している。煽られて2,000円で買わされないように、まずは落ち着いたほうがいい。

NISAは投資で儲けた人が課税されないための制度だ。焦って損をするなら元も子もない。小説の中で、投資銀行で働く七海が株価の上昇について語るシーンがある。

私も実感しています。そういうお客さんになめられないように、あえて難しい言葉を使うことがあります」

「なめられないように……ですか?」

そこに込められた、ただならぬ感情が、優斗にも伝わってきた。

「そうよ。私みたいな若い女性って、日本のお客さんには軽くみられちゃうのよね。だから、株価上昇の理由とか聞かれたら、『グローバルな過剰流動性相場』とか、わざと難しい言い回しで答えるの」

「僕には全然わかんないですけど」

優斗は頭をかいた。

「それでいいのよ。難しい単語を覚えただけで、多くの大人は満足するのよ。今の説明って、

『世界でお金が余っているからです』と言っているだけなのにね」

引用:『きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』38ページより

「彼らは、難しい単語が知恵の実とでも思っているんやろな。過剰流動性という言葉を覚えれば理解した気になる。せやけど、知恵の実を食べて賢くなるわけやない。知恵は育てるもんや。重要なのは、自分で調べて、自分の言葉で深く考えることやで」

引用:『きみのお金は誰のため: ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」』39ページより

 

企業の資金需要は増えるのか?

「投資にお金が流れれば、株価が上昇して、我々の生活が豊かになる」と声高に叫ぶ人がいるが、株価がどのように影響しているかを考えないといけない。みんなが株式投資にお金を流したところで、このままだと企業の業績向上にはつながらない。

株に流れるお金が有効に使われるには、企業の資金需要が増える必要がある。そのお金で新しい商品やサービスの研究開発が行われ、世の中がさらに便利になるから経済は成長する。

小難しい経済の話を鵜呑みにするのではなく、それが人々の暮らしや行動にどのように影響しているのかを考えると、市場の動きだけでなく社会の動きも見えてくる。

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※本記事は、田内学氏のメルマガ『金融教育家・田内学の「半径1mのお金と経済の話」』2024年1月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。


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