■いまドイツで起きている現象は「明日の日本」か? | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:過去最高の人口増加も「経済破綻」危機という異常事態。いまドイツで起きている現象は「明日の日本」か?2024.02.02より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/news/592117
 
Frankfurt,Am,Main,,Germany,-,November,26,2018:,German,Police
 

深刻な少子化による労働力不足を、移民の受け入れにより解消を図ろうという姿勢を取る日本政府。しかし安易な「移民頼り」は、大きな問題を引き起こす恐れと背中合わせのようです。今回、作家でドイツ在住の川口マーン惠美さんは、移民を大量に受け入れ続けるドイツが直面している数々の問題を紹介。その上で日本政府に対して、移民・難民政策の修正を求めています。

プロフィール:川口 マーン 惠美
作家。日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ドイツ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。ベストセラーになった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)をはじめ主な著書に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)、『復興の日本人論』(グッドブックス)、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)、『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)など著書多数。新著に、福井義高氏との対談をまとめた『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』(ワニブックス)がある。

安易に移民に頼るな。日本政府がドイツの現状から学ぶべきこと

2023年末、ドイツの人口が8,470万人になった。ドイツの人口は出生率の低下により、11年は8,033万人、12年が8,052万人と、あわや8,000万人を切りそうになっていたことを思えば、すごい盛り返し方だ。

きっかけの一つは、15年に突然、メルケル首相が中東難民に国境を開き、例の「難民ようこそ政策」が始まったこと。15年と16年で89万人の難民が流入したと言われている。当時、ドイツで滞在が認められ、あるいは容認され、留まった人たちも大勢いたが、そのまま素通りして北上、あるいは西進してドーバー海峡を越えた難民や、行方をくらました難民もたくさんいた。しかし、政府は国境管理能力を失っていたので、流入者の正確な数字は今もわかっていない。

一方、正確に出ているのは出産数で、11年には60万件にまで下がっていた出産件数が一気に増え、16年と19年は80万に迫った。難民は、滞在が認められると、徐々に家族を呼ぶことができるので、新たにやってきた妻たちの出産がドイツの人口をさらに増やした。ちなみに、ドイツでは出産は誰でも無料。入院費も含めて1ユーロもかからない。

その後、22年には2度目の難民襲来が起こった。主因はウクライナ戦争。ドイツの人口は22年の1年だけで112万人も増えた。

ドイツのみならず、EUでも増え続ける難民は深刻な問題となっており、どうにかして制御しようとさまざまな努力が重ねられている(解決の目処は立っていないが)。ただ、ドイツ政府だけは、本気でそれに足並みを揃える気があるのか、ないのか…?ウクライナ難民にせよ、中東難民にせよ、その急増がドイツ国内に甚大な問題をもたらしているというのに、ドイツ政府の動きは極めて鈍い。

ドイツは大陸国なので、太古の昔より人の出入りは多かった。近年で言うと、90年のドイツ統一から97年までの7年間で269万人増。これは、過去にロシア(ソ連)や東欧に移住したドイツ人が、冷戦終了を機に大量に戻ってきたことと、もう一つはユーゴ内乱による難民の受け入れによる。

その後も難民はあちこちから入り続け、さらにEUの東方拡大などでルーマニア、ポーランド、ブルガリアなどEU内からもコンスタントに移住が続いた。一方、出ていくドイツ人もじわじわ増え、行き先はスイス、オーストリア、そして米国などだ。

困窮する難民受け入れ自治体と悪化する治安

22年、ドイツの人口は8,436万人で、1990年の統一以来最大といわれたが、前述のように、翌23年にはそれがさらに30万人以上も増え、2年連続で記録更新となった(最終的な数字は、今年の7月に発表の予定)。近年、ドイツの死亡者数は出生数を上回っているので、増加分は、主に新来の難民のおかげであることは間違いない。

過去に入った移民もそれなりに多くの問題があるのだが、そちらはさて措くとして、現在の火急の問題はこの難民だ。まず、数が膨大で、その他のEU国が受け入れている難民を全部足したよりも多い。しかも、政府がそれらの難民を容赦なく州に送り込み、州政府は仕方なくそれを自治体に振り分けるから、実際に受け入れている市町村が困窮している。

難民は、正確にはまだ難民ではなく、難民希望者だ。申請、審査の結果、政治、人種、宗教などの理由などで迫害されていることが認められれば、難民として庇護の対象となる(経済的理由はダメ)。そして、母国での危険が去るまでドイツに滞在でき、就労も許される。

とはいえ、受け入れた自治体ではそれとは関係なく、彼らが到着したらその日から最小限の衣食住の手当てはしなければならない。ところが、どこも満杯で、閉鎖した工場や倉庫や兵舎、学校の体育館にベッドを並べたり、空き地にテントを張ったりするうちに、さらに難民が送られてくる。仮設住宅の建設などとても追いつかない。

もう一つの問題は治安。シリアやアフガニスタンのように、いずれ難民として受け入れられる可能性の高い国からの難民も、あるいは、認定の可能性などほぼない北アフリカ諸国やバルカン半島から入ってきている難民も、どちらもほとんど全員が若い男性だ(難民と認定されて一定期間が過ぎれば、家族を呼び寄せられる)。

彼らの多くは、ドイツは豊かで、仕事があり、良い暮らしができ、さらにいうなら、働かなくても福祉で暮らせるなどという口車を信じてやってくる。ところが来てみたら、狭い宿舎にすし詰めにされるわ、元気余って欲求不満になるわ…。そこへ持ってきて、これまでアルコールなど口にしたことのなかったイスラム教徒が、飲み慣れないビールを飲んで酔っ払って喧嘩をしたり、やはりイスラム世界ではあり得ないビキニ姿の女性を眺めて節制を失ったりと、事件は限りなく起こる。

実際に22年から、これら外国人(多くは難民申請者)によるナイフを使った暴行事件や婦女暴行事件が急激に増えた。それどころか、小・中学生の女の子が殺傷される事件まで起こり、難民宿舎が近くにある地域では、女の子のいる家庭は神経を尖らせている。

そんなわけで、2015年、メルケル氏と共に難民を歓迎し、自分たちの人道的行動に胸を張っていたドイツ人が、今ではすっかり様変わりし、新しい難民宿舎ができると聞くと激しい反対運動が巻き起こる。入居前に放火された施設さえあった。

治安の乱れは、すでに皆が感じる。昔は、夜、一人で歩いても怖いなどと思ったことのなかった私でさえ、今では夕方以降は人通りの少ないところは避けるようになった。最近、旅行者がリュックを前に下げているが、こんな光景など数年前のドイツでは見ることがなかった。

「難民が移民になり、移民が良い労働者になる」は真実か

難民にかかるコストも国民を脅かす。その額、国と州を合わせて、すでに年間500億ユーロ(7兆8,000億円)を超えているという。しかし、ドイツ政府にそれを制御しようと言う気はあまりない。今では、スウェーデンやデンマークなど、かつて移民大国と言われていた国々が、全面的に受け入れをストップしているというのに、ドイツ政府は犯罪を犯した難民の送還すらぐずぐずと躊躇している。それどころか政府は昨年末、帰化の条件を大幅に緩和した。結局、ドイツでは、入ったら最後、皆がいずれ滞在を容認されるというのが現状なのだ。

政府はいまだに、難民が移民になり、移民が良い労働者になると喧伝しているが、中東難民に限って言うなら、労働力として活用するつもりだった産業界の期待はとっくの昔に外れている。2015年、16年に入った中東難民のうち職に就いているのは半数ほどだ。その背景には、ドイツ語の能力不足だけでなく、義務教育さえ終えていない人が多いという現状がある。彼らは当然、ドイツの福祉に依存することになる。

ただ、彼らが職に就けば就いたで、今度はドイツの労働市場では賃金が上がらないという状況が定着する。苦しむのは、競合する既存の労働者だ。

日本が労働移民の受け入れを止めるべき理由

昨年12月、『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』(ワニブックス)を上梓した。青山学院大学の福井義高教授との対談をまとめたものだが、福井氏は、人道的難民庇護は行っても、労働移民の受け入れは止めるべきだと主張している。なぜなら、移民のせいで押し上げられたGDP分から、移民にかかる賃金、子弟の教育、医療費、福祉などといった経費を差し引くと、ほとんど±ゼロになり、経済的にはほとんど意味がないからだという。敢えて言うなら、得をするのは労働者や一般国民ではなく、安い労働力を得られた資本家ばかり。

そもそも人手が不足している部門とは、皆が、「今の賃金ではやりたくない」と思っているセクターなので、「移民が来なければ、自国労働者がやりたくなる水準まで賃金は上昇する」と福井氏。戦後、ドイツと日本は奇跡の経済成長を経験し、人手不足に見舞われた。その時、日本は人手不足を「賃金上昇と省力化」で乗り切ったが、ドイツは、安い外国人労働力を入れたため、機械化や合理化が遅れた。

日本政府は、欧米の移民・難民が国家を押し潰すほどの問題となっている現在、遅ればせながら移民を導入するつもりだが、長期的な視野が欠けているのではないか。今こそ、国内の可能性に目を向け、本当に国民が幸せになれる経済のあり方を考えるべきだ。

特に現在、日本にいる難民は、皆、飛行機で来て申請するのだから、真の難民ではあり得ない。福井氏曰く、「本国で迫害されているから逃げてくるのだとすれば、女性や子供が中心となるのが自然です」。しかし実際には、最初、長い道中に耐えられる若い男性が来て、後で家族を呼ぶ。一旦入国した彼らが、難民資格の有無にかかわらず定住してしまうのは、ヨーロッパで起こっている事象を見れば容易に想像できる。

ちなみに、全く違った伝統や文化を持った人間を大量に入れると、社会の様相は根本から変わってしまう。「最悪の場合、これまでの文化が消えて無くなってしまう」と福井氏。それは、今、西欧で起こりかけていることだ。

混沌となったEUで、中東移民の受け入れを断固拒否している数少ない国の一つがポーランド。「ポーランド国民は、祖国を、現在、フランスの多くの街で見られるような風景にするつもりはない」からだという。本来ならばドイツも、難民のおかげで人口が増えたことを喜んでいる場合ではないだろう。

一方、日本政府こそ、これらヨーロッパの事例を参考にして、移民・難民政策を手遅れにならないうちに修正してほしい。一時的な安い労働力ではなく、日本の将来を視野に入れた長期的な視点が必要だ。そして同時に、真の難民の庇護に尽力し、世界に範を示すぐらいの気概がほしいものだ。

プロフィール:川口 マーン 惠美
作家。日本大学芸術学部音楽学科卒業。ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ドイツ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。ベストセラーになった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)をはじめ主な著書に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)、『復興の日本人論』(グッドブックス)、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)、『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)など著書多数。新著に、福井義高氏との対談をまとめた『優しい日本人が気づかない残酷な世界の本音』(ワニブックス)がある。

image by : Pradeep Thomas Thundiyil / Shutterstock.com

川口 マーン 惠美