■イスラエルとハマスの衝突にあらず。ガザ紛争の裏で糸を引く大国 | タマちゃんの暇つぶし

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MAG2 NEWS:イスラエルとハマスの衝突にあらず。ガザ紛争の裏で糸を引く大国2023.12.01より転載します。
 
貼り付け開始、

https://www.mag2.com/p/news/588607
 
Smoke,Rises,After,Israeli,Air,Strikes,Near,The,Border,East
 

カタールとエジプトの仲介によりようやく停戦が実現するも、再び激しい交戦状態に陥ってしまったガザ紛争。かねてから懸念されているイランの参戦ですが、戦火は中東全体に及んでしまうのでしょうか。今回のメルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、当紛争はイスラエルとガザの衝突ではなく、イスラエルとイランの戦争だと断言。そう判断せざるを得ない理由を解説した上で、事実上の「アメリカ対イラン」の戦争も既に始まっているとの見解を記しています。

すでにはじまっているアメリカ―イラン戦争

全世界のRPE読者の皆様、こんにちは!北野です。

まず、Kさまからのメールをご紹介します。

北野様

 

いつもためになり面白いメルマガをありがとうございます。イラン大使館の向かいに住んでいるKです。

 

イラン大使館は1年くらい前から閉鎖され、24時間警官が前に立って警戒しています。

 

閉鎖された当初は警察車両が護送車も含めて3台も配置され、警護にあたるのも普通の警察官だけでなく、防弾チョッキを身につけた刑事が長い棒を持って睨んでいたりして、物々しい雰囲気でした。

 

週に何度もイラン人のデモ隊が来て数時間に渡り拡声器で抗議の声をあげるなどしていましたが、最近はデモ隊も来なくなり、警察車両も1台のみ、警察官も暇そうです。

 

大使館周辺に住んでいたイラン人は姿を見せなくなり、隣のイラン人学校も人の気配がありません。

 

でも、警察車(中型のワンボックス)はエンジンをかけたまま、運転席にいる警官が周囲を警戒し続けていて、緊張状態は続いています。

 

ハマスとイスラエルの戦争の報道はかなり偏っていて、本当のところは?といつも訝しんでいます。

 

私としてはイランの動向が気になって仕方ないのですが、断片的にしか伝わってこないので、フラストレーションを感じています。

北野様が何か情報を掴んだら、メルマガでお知らせくださると嬉しいです。


私は「イスラエル―ハマス戦争」が起こる前の9月、「イスラエルとイランの戦争が年内に起こるかもしれない」と書いていました。メルマガを保存されている方は、ご確認ください。『ロシア政治経済ジャーナル』2023年9月19日号『イランの核兵器保有と次の戦争が近づいている?』です。とても重要な話ですので、バックナンバーを転載しましょう。繰り返しますが、これは9月19日の記事。イスラエルーハマス戦争勃発は、10月7日です。

【 9月19日号 転載ここから 】

イランがIAEAの査察を拒否しました。「日経新聞」9月17日付。

 

「国際原子力機関(IAEA)は16日の声明で、イランからIAEAの一部査察官の受け入れを拒否すると通告があったことを明らかにした。査察官はウラン濃縮などを検証している。グロッシ事務局長は『強く非難する』と述べ、査察に深刻な影響が出るとして再考を求めた。国際社会の懸念が一層強まるのは必至だ」

 

この問題、少し振り返ってみましょう。

 

アメリカは、ウソの理由でイラク戦争をはじめた2003年頃から、「イランは核兵器を開発している!」と非難していました。

 

ネオコン・ブッシュ政権のアメリカは当時、「2016年までにアメリカ国内の石油が枯渇する」と信じていた。それで、資源がたっぷりある中東支配に動いていたのです。「イラクの次は、イランだ!」と(しかしその後、「シェール革命」が起こり、アメリカは世界一の産油国、産ガス国に浮上。中東の資源を確保する必要はなくなり、この地域への熱意は減りました)。

はっきりいってネオコン・ブッシュ政権の主張は、イラク戦争の開戦理由同様「大ウソ」でした。証拠もあります。「毎日新聞」2007年12月4日付。

 

「〈イラン核〉米が機密報告の一部公表 「脅威」を下方修正

 

[ワシントン笠原敏彦]マコネル米国家情報長官は3日、イラン核開発に関する最新の機密報告書『国家情報評価』(NIE)の一部を公表し、イランが03年秋に核兵器開発計画を停止させたとの分析結果を明らかにした」

 

さらに、「ロイター」2009年7月4日付。

 

「イランが核開発目指している証拠ない=IAEA次期事務局長

 

[ウィーン 3日 ロイター]国際原子力機関(IAEA)の天野之弥次期事務局長は3日、イランが核兵器開発能力の取得を目指していることを示す確固たる証拠はみられないとの見解を示した。ロイターに対して述べた。天野氏は、イランが核兵器開発能力を持とうとしていると確信しているかとの問いに対し『IAEAの公的文書にはいかなる証拠もみられない』と答えた」

 

ここからわかることは何でしょうか?

 

ブッシュ政権が2000年代、「イランは核兵器保有を目指している!」と非難していたのは、「ウソだった」ということです。

 

それで、リベラルなオバマが2015年7月、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国を巻き込んで「イラン核合意」を成立させました。これで、イランは制裁が解除され、石油が輸出できるようになった。イランは、そもそも核兵器を開発する気がなかったので、大いに喜びました。

 

ところが2018年5月、トランプが、イラン核合意から一方的に離脱。2018年8月、トランプ政権は、イラン制裁を復活させます。

 

これは、何でしょうか?

 

イスラエルは、「イランが核兵器開発を目指している」と確信している。トランプは、親イスラエルなので、核合意から離脱したのです。

 

再び苦しくなったイラン。そもそも核兵器を開発する気はなかったのですが、追い詰められ、ある時点で気がかわったようです。徐々にウラン濃縮度をあげていきました。

 

ここから、今年のお話。「時事」3月5日。

 

「イランを訪問した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は4日、ウィーンの空港で記者会見し、イラン中部フォルドゥの核施設で核兵器級に近い濃縮度83.7%のウラン粒子が検出された問題について『その水準の濃縮ウランは蓄積されていない』と述べた」

 

「核兵器開発には濃縮度90%以上が必要」とされている。

 

伊藤貫先生によると、イランは、年内に核兵器を保有する可能性が高い。そして、イスラエルは、「イランが核兵器保有する前に攻撃する」と公言している。イスラエルがイランと戦争を始めると、アメリカもイスラエルを助けざるを得ない。

 

冒頭の「イランIAEAの査察拒否」について、日経新聞9月17日付は、

 

「核合意の当事国である英国、フランス、ドイツは14日、イランが合意を守っていないとして、10月中旬に緩和するはずだった制裁の一部を継続するとの共同声明を出した。イラン外務省は14日の声明で『挑発的で悪意がある。適切な反応をする』と反発していた」

 

つまり、制裁延長を決めた欧州への反発が原因だと。

 

しかし、「いよいよ核兵器保有が近づいている。そのことがバレないようにIAEAの査察を拒否している」とも考えられます。そうであれば、伊藤貫先生が予測されているとおりに、

 

  • イスラエルがイランを先制攻撃
  • イスラエル―イラン戦争勃発
  • アメリカがイスラエル側にたって参戦

 

といった事態に発展する可能性も出てきます。

 

そうなると、「二正面作戦」を嫌がるアメリカは、ゼレンスキーに「現状維持で停戦しろ!」という圧力をかけてくる可能性が高まります。

 

どうなるか、注目していきましょう。

【 転載ここまで 】

次ページ:既にアメリカ対イランの戦争が始まっている証拠

そして、このメルマガ配信から28日後の10月7日、中東で戦争が勃発したのです。

しかし起こった戦争は、「イスラエル 対 イラン」ではなく、「イスラエル 対 ハマス」でした。

ですが、実をいうと、「イスラエル 対 ハマス」と「イスラエル 対 イラン」は同じことなのです。というのも、ハマスによるイスラエル攻撃の黒幕はイランですから。

「朝日新聞DIGITAL」2023年10月9日付。


米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は8日、イスラム組織ハマスがイスラエルにしかけた大規模な攻撃はイランの関係者が準備段階から協力し、最終的なゴーサインを出したと報じた。ハマスと、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの幹部の話として伝えた。

WSJによると、イラン革命防衛隊のメンバーは8月から、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するハマスと、イスラエルに向けた陸海空の侵攻について協議した。レバノンの首都ベイルートで革命防衛隊やハマス、ヒズボラらのメンバーによる会議が重ねられ、攻撃の詳細が計画されたという。最終決定の会合は2日にあったとしている。

ですから、10月7日はじまったのは、「イスラエル 対 ハマス」の戦争であると同時に、「イスラエル 対 イラン」の戦争でもあるのです。

はじまっている「アメリカ 対 イラン」の戦争

問題は、イスラエルの同盟国アメリカの動きです。

アメリカとイスラエルは、「イランの核兵器保有を止める」ことで、利害が一致しています。一方、イランは、核兵器開発を完成させて、北朝鮮のように「誰からも攻撃されない体制」を築きたいのでしょう。


だから現状は、

  • アメリカとイスラエルは、イランの核兵器製造施設を破壊したい
  • イランは、核兵器を保有するまでの時間稼ぎとして、「親イラン勢力」に、アメリカ、イスラエルを足止めさせてほしい


「親イラン勢力」とは、具体的にどんな勢力なのでしょうか?

  • ハマス
  • レバノン・ヒズボラ
  • イエメン・フーシ派
  • カタイブ・ヒズボラ(イラク)

など。実際、ハマスとレバノン・ヒズボラは、イスラエルの動きを止めることに成功しています。

問題はアメリカ。

「親イラン勢力」(イランは、「抵抗の枢軸」と呼ぶ)は米軍も攻撃しています。しかも毎日。「CNN.co.jp」2023年11月25日付。

米政府当局者は25日までに、イラクやシリアに駐留する米主導連合軍の航空基地や拠点の4カ所に対し感謝祭の祝日に当たる23日に自爆型ドローン(無人機)や多連装ロケット弾を用いた攻撃がそれぞれ起きたと報告した。

 

イラクのアサド、エルビル両航空基地やシリアの拠点2カ所が23日朝から同日午後にかけて襲われたもので、一連の攻撃で施設の損壊はなかったとした。死傷者の報告もないという。エルビル基地には22日にもドローン1機による攻撃があった。

 

これでイラクやシリアに展開する米主導連合軍への攻撃は先月17日以降、少なくとも73回に達した。

10月17日から11月25日までに、米軍基地は【 73回 】攻撃された!

米軍は、反撃しないのでしょうか?もちろん、しています。

米軍も空爆で対抗しており、イラクでは現地時間の22日朝、イランが肩入れする武装勢力「カタイブ・ヒズボラ」が使用する2カ所の施設を標的にした。同勢力によると、この空爆で戦闘員の少なくとも8人が死亡、4人が負傷した。

 

中東を管轄する米中央軍によると、空爆は短距離用弾道ミサイルまで投入しているイランや同国が支援する勢力による攻撃への「直接的な対応」としている。

どうですか、これ?事実上、「アメリカ 対 イランの戦争がはじまっている」と言えるでしょう。

次ページ:なぜ欧米や日本は中国との和解に動いているのか

繰り返しになりますが、アメリカの目的は、イランの核兵器製造施設を破壊することです。アフガンやイラクでやったような政権転覆は目指しません。だから、大規模な戦争に発展するか、現時点ではわかりません。

しかし、アメリカとイランの動きがわかると、いろいろなことが見えてきます。

なぜ欧米が、ウクライナに停戦を勧めるようになったのか。なぜ欧米や日本が、中国との和解に動いているのか。

すべてがつながっています。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル2023年12月1日号より一部抜粋)

image by: Anas-Mohammed / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期
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