マネーボイス:岸田内閣「年明け解散」に現実味。予算膨張でも景気を支えず、政府に機能不全の危機=斎藤満氏2022年12月4日より転載します。
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https://www.mag2.com/p/money/1258872
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内閣支持率の低下が止まりません。今月は共同通信の調査で33%、日本経済新聞の調査でも37%と、前月調査からさらに5ポイント前後低下、不支持率はいずれも50%を超えています。岸田内閣からは大臣の「辞任ドミノ」が続き、他の大臣でも何人か「説明責任」を問われています。政権はいよいよ追い詰められ、解散総選挙に出るか、退陣を迫られるか、選択を迫られています。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2022年12月2日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満氏(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
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予算膨張でも景気を支えず
政府の機能不全を象徴するものとして、政府予算膨張の一方で、政府支出はGDP(国内総生産)の成長に寄与していないことがあります。国民の税金を大規模に使う割に、景気支援につながっていません。特に直近では政府支出が4四半期連続で実質で前年比マイナスとなっています。
日本の予算は「危機」ごとに水準を高め、その後元に戻らないまま、次の「危機」でまた跳ね上がります。例えば、補正後の一般会計予算の推移を見ると、まず「リーマン危機」を契機に、2009年度予算は100兆円に乗せましたが、その後危機が一巡しても水準は元に戻らず、100兆円予算が続きました。
そして次の「コロナ危機」で予算規模は急膨張しました。
コロナ危機に襲われた2020年度予算は、時短、休業協力金、医療費などで予算が前年度から5割近く拡大して147.6兆円に一気に膨張しました。
しかし、米国のトランプ政権が米国民1人ずつに600ドル、1,200ドル、1,400ドルと重ねて小切手を送ったうえに、手厚い失業給付金上乗せにより、個人消費が急回復したのに対し、日本は主に企業に協力金が支払われるに留まったことから、消費を中心に景気は大きく落ち込みました。
大規模な予算を手当てしながら、経済支援の形にはつながりませんでした。予算は年間50兆円近く増加したのですが、政府支出は20年度に3.0%の増加にとどまり、民間需要は消費を中心に大きく落ち込みました。
支援の先が米国の個人に対して、日本は企業に向けられた違いはありますが水漏れも多く、財政支援の成果は日米で大きな差が出ました。
さらに、日本ではこの大盤振る舞いが既成事実化し、危機が一段落しても予算規模は縮小しませんでした。2021年度予算は補正後で144.6兆円、そして22年度予算は140.1兆円と、水準が切りあがったまま、高止まりしています。
直近の補正予算でも「昨年30兆出したから今年も」、と理由にならない理由で規模だけ膨らみました。
これだけ予算の膨張が続いても、21年度の公的需要はマイナス0.0%で、22年度に入っても直近4四半期の公的需要は実質ですべて前年比マイナスとなっています。
現在の税金だけではとても足りず、将来世代の納税分も先取りして大規模に使ってくれましたが、目に見えた経済効果はあがっていません。
Next: 国民の金を政治家のものと勘違い。予備費・基金が重要の言い訳
予備費・基金が重要の言い訳
これを象徴するような事案が先の補正予算で露呈しました。
補正予算で実弾を28.9兆円用意しましたが、その資金使途を見ると、4.7兆円が「予備費」で、8.9兆円が「基金」に充当されると言います。実に補正予算で用意した資金の47%が、具体的な使途の決まらない予備費、基金に回ると言います。
つまり、補正予算規模を大きくするために、何に使うかもわからないまま規模を拡大したことが露呈しています。
そもそも20年度から22年度当初予算までで、「コロナ予備費」に約20兆円が充てられました。このうち、使われたのは12兆円で、8兆円は使われていません。さらに、使われた12兆円についても、日経新聞が追跡したところ、医療検疫体制向けに4.08兆円、地方創生臨時交付金に3.87兆円が充てられた形ですが、12兆円のうち9割がどう使われたのか、使途が追えなかったと言います。
また使い残しが多いため、このコロナ予備費からガソリン価格補助金に回す話まで出ていました。
もともと補正予算では何にいくら使うかの具体的な予算審議がほとんどなされないまま規模が決まりますが、多額の使い残しがあり、何に使ったのかわからないような状況では、経済支援、コロナ支援の効果も推して知るべしです。
総理は予備費、基金への積み上げが重要と言いますが、あまりにいい加減な財政政策にあきれてものが言えません。
国民の金を政治家のものと勘違い
政府には財政資金は政府の金で、国民から税金を預かっている、という意識がありません。
税金として取ったらもう政府の金だと思っています。それを極端に言えば領収書もいらず、フリーハンド゙で使える官房機密費(年間約12億円)のように使いたい。安倍政権でも「もり・かけ・桜」に象徴された安倍総理の支援者、友人への優先利用が批判されました。
国会で審議せず、政府の裁量で自由に使える「予備費」「基金」はまさに政府にとっての「貯金箱」のようなもので、国民に諮らずに使いたい時に自由に使えるファンドです。
そして「政府支援」という名のもとに、恩着せがましく一部の人々に給付金を支給しますが、これも元々は国民の金で、政治家が自腹を切るものではありません。
少なくとも、今の政権与党の政治家を見ていると、「公僕」として国民に使える意識を持った人は皆無で、政治権力を利して蓄財に励む輩が多すぎます。信用できない政府に140兆円にも上る多くの金を預けるわけには行きません。
Next: 年明けにも総選挙?国民のために汗をかく政府が望まれるが…
年明けにも総選挙?国民のために汗をかく政府が望まれるが…
今から400年近くも前の話になりますが、1657年に江戸で「明暦の大火」と言われる大火事がありました。本郷から出た火は江戸中を焼き払い、江戸城も天守閣、二の丸、三の丸が焼け落ちる大火でした。
この大災害時に陣頭指揮を執ったのが会津藩主の保科正之でした。彼は将軍が城外に逃げるのを思いとどまらせ、天守閣の復興を後回しにして、1日千俵の粥の炊き出しを1週間以上続け、焼け出された江戸町民に救援金として16万両を支給しました。周囲からは政府のご金蔵がなくなるとの懸念の声が上がりましたが、幕府の貯蓄はこういう時に庶民を安心させるために使うものと言って実行しました。
コロナ危機、経済危機に際しては、歳費を削ってでも国民のために汗をかく政府指導者はいないのでしょうか。
今の政府に心を入れ替えてもらうのが難しければ、年明けにも総選挙となる可能性があり、国民が今度こそ国民のために汗をかいてくれそうな候補者を選べるかがカギとなります。国民の真価がいま問われます。
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予算膨張でも景気を支えず
政府の機能不全を象徴するものとして、政府予算膨張の一方で、政府支出はGDP(国内総生産)の成長に寄与していないことがあります。国民の税金を大規模に使う割に、景気支援につながっていません。特に直近では政府支出が4四半期連続で実質で前年比マイナスとなっています。
日本の予算は「危機」ごとに水準を高め、その後元に戻らないまま、次の「危機」でまた跳ね上がります。例えば、補正後の一般会計予算の推移を見ると、まず「リーマン危機」を契機に、2009年度予算は100兆円に乗せましたが、その後危機が一巡しても水準は元に戻らず、100兆円予算が続きました。
そして次の「コロナ危機」で予算規模は急膨張しました。
コロナ危機に襲われた2020年度予算は、時短、休業協力金、医療費などで予算が前年度から5割近く拡大して147.6兆円に一気に膨張しました。
しかし、米国のトランプ政権が米国民1人ずつに600ドル、1,200ドル、1,400ドルと重ねて小切手を送ったうえに、手厚い失業給付金上乗せにより、個人消費が急回復したのに対し、日本は主に企業に協力金が支払われるに留まったことから、消費を中心に景気は大きく落ち込みました。
大規模な予算を手当てしながら、経済支援の形にはつながりませんでした。予算は年間50兆円近く増加したのですが、政府支出は20年度に3.0%の増加にとどまり、民間需要は消費を中心に大きく落ち込みました。
支援の先が米国の個人に対して、日本は企業に向けられた違いはありますが水漏れも多く、財政支援の成果は日米で大きな差が出ました。
さらに、日本ではこの大盤振る舞いが既成事実化し、危機が一段落しても予算規模は縮小しませんでした。2021年度予算は補正後で144.6兆円、そして22年度予算は140.1兆円と、水準が切りあがったまま、高止まりしています。
直近の補正予算でも「昨年30兆出したから今年も」、と理由にならない理由で規模だけ膨らみました。
これだけ予算の膨張が続いても、21年度の公的需要はマイナス0.0%で、22年度に入っても直近4四半期の公的需要は実質ですべて前年比マイナスとなっています。
現在の税金だけではとても足りず、将来世代の納税分も先取りして大規模に使ってくれましたが、目に見えた経済効果はあがっていません。
Next: 国民の金を政治家のものと勘違い。予備費・基金が重要の言い訳
予備費・基金が重要の言い訳
これを象徴するような事案が先の補正予算で露呈しました。
補正予算で実弾を28.9兆円用意しましたが、その資金使途を見ると、4.7兆円が「予備費」で、8.9兆円が「基金」に充当されると言います。実に補正予算で用意した資金の47%が、具体的な使途の決まらない予備費、基金に回ると言います。
つまり、補正予算規模を大きくするために、何に使うかもわからないまま規模を拡大したことが露呈しています。
そもそも20年度から22年度当初予算までで、「コロナ予備費」に約20兆円が充てられました。このうち、使われたのは12兆円で、8兆円は使われていません。さらに、使われた12兆円についても、日経新聞が追跡したところ、医療検疫体制向けに4.08兆円、地方創生臨時交付金に3.87兆円が充てられた形ですが、12兆円のうち9割がどう使われたのか、使途が追えなかったと言います。
また使い残しが多いため、このコロナ予備費からガソリン価格補助金に回す話まで出ていました。
もともと補正予算では何にいくら使うかの具体的な予算審議がほとんどなされないまま規模が決まりますが、多額の使い残しがあり、何に使ったのかわからないような状況では、経済支援、コロナ支援の効果も推して知るべしです。
総理は予備費、基金への積み上げが重要と言いますが、あまりにいい加減な財政政策にあきれてものが言えません。
国民の金を政治家のものと勘違い
政府には財政資金は政府の金で、国民から税金を預かっている、という意識がありません。
税金として取ったらもう政府の金だと思っています。それを極端に言えば領収書もいらず、フリーハンド゙で使える官房機密費(年間約12億円)のように使いたい。安倍政権でも「もり・かけ・桜」に象徴された安倍総理の支援者、友人への優先利用が批判されました。
国会で審議せず、政府の裁量で自由に使える「予備費」「基金」はまさに政府にとっての「貯金箱」のようなもので、国民に諮らずに使いたい時に自由に使えるファンドです。
そして「政府支援」という名のもとに、恩着せがましく一部の人々に給付金を支給しますが、これも元々は国民の金で、政治家が自腹を切るものではありません。
少なくとも、今の政権与党の政治家を見ていると、「公僕」として国民に使える意識を持った人は皆無で、政治権力を利して蓄財に励む輩が多すぎます。信用できない政府に140兆円にも上る多くの金を預けるわけには行きません。
Next: 年明けにも総選挙?国民のために汗をかく政府が望まれるが…
年明けにも総選挙?国民のために汗をかく政府が望まれるが…
今から400年近くも前の話になりますが、1657年に江戸で「明暦の大火」と言われる大火事がありました。本郷から出た火は江戸中を焼き払い、江戸城も天守閣、二の丸、三の丸が焼け落ちる大火でした。
この大災害時に陣頭指揮を執ったのが会津藩主の保科正之でした。彼は将軍が城外に逃げるのを思いとどまらせ、天守閣の復興を後回しにして、1日千俵の粥の炊き出しを1週間以上続け、焼け出された江戸町民に救援金として16万両を支給しました。周囲からは政府のご金蔵がなくなるとの懸念の声が上がりましたが、幕府の貯蓄はこういう時に庶民を安心させるために使うものと言って実行しました。
コロナ危機、経済危機に際しては、歳費を削ってでも国民のために汗をかく政府指導者はいないのでしょうか。
今の政府に心を入れ替えてもらうのが難しければ、年明けにも総選挙となる可能性があり、国民が今度こそ国民のために汗をかいてくれそうな候補者を選べるかがカギとなります。国民の真価がいま問われます。
(続きはご購読ください。 初月無料です)
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