マネーボイス:円安に対抗するならスイスフランがベスト。直前に迫った米国ドルの基軸通貨からの陥落=吉田繁治氏2022年9月15日より転載します。
 
貼り付け開始

https://www.mag2.com/p/money/1231885
 

1ドル140円台が定着してきましたが、これはエネルギー資源の高騰と、日本の貿易赤字が主因です。日米金利差は二次的要素でしかありません。米国ドルに対する世界の信用は落ちており、安定した通貨を求めるならスイスフランがベストです。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治氏)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年9月14日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

この記事の著者・吉田繁治さんのメルマガ

初月無料で読む

2022年のエネルギー・資源価格高騰

ウクライナ戦争にともなって、輸入資源が高騰した2022年には上期(6か月)の貿易収支は、7.9兆円という日本史上最大の赤字でした。

2022年の通期では、15兆円規模の貿易赤字でしょう。15兆円の貿易赤字は、「実需のドル買い15兆円/円売り15兆円」を示します。資源輸入の代金は、ドル建てで払うからです。「銀行でのドル買い/円売り→SWIFT(国際送金回線)での送金」になります。
参考:上半期貿易赤字、過去最大 原油高・円安で7兆9,241億円―22年上半期-JIJI.COM

エネルギーと資源価格の高騰による貿易赤字15兆円(=輸入物価+50%)が、「1ドル140円台」という、40年ぶりの円安の主因です。日米の金利差は二次的な要素です。

日本がほぼ100%を輸入するエネルギー・資源価格の高騰が収まっていけば、貿易赤字のための「ドル買い/円売り」は減って、「1ドル=120円台」には戻っていくでしょう。時期はいつか?

まだ、見通せない。

2023年中にあるとすれば、2023年の9月以降でしょうか。

西側世界が5%を超えるインフレ率の間、円が戻ることはないでしょう。

現在のドル高の性格

現在の円安・ドル高は「米国経済を背景にするドルが強い」ためのものではない。米国の8%台のインフレは、コロナ以降、4兆ドル(568兆円)増刷された米ドルの、価値下落を示すものです。

ドルの1単位の価値は、8%台のインフレによって下がっています。これが、逆のドル高になっているのは、ドル価値低下を補う「FRBの利上げ」が、世界からのドル買いを増やしているからです(海外通貨との金利差=イールドの増加)。

ドル安への転換が起こる原因は、米国の不良債権

しかし今度は、副作用として、

1)米国の利上げが負債(政府、企業、世帯)の不良債権化をも招くようになると、
2)FRBの利上げが逆に「ドル安」の要因になって行きます。

米国の負債は、コロナ危機の後、GDPの300%に増えています。リーマン危機のときの不良債権比率は、総負債の16%でした。これが金融危機です。

コロナ危機の2020年の、不良債権比率は6%に高まりました。ただし、FRBのドル増刷(4兆ドル)によって、米国のB/Sでの不良債権比率は、現在、4%台に下がっています。

株価・住宅価格下落と、不良債権の関係

1)年初来、約20%下がっている米国株があと25%くらい下がって住宅価格も下がると、
2)リーマン危機並みの、16%の不良債権(デフォルト債券)になり、米国の金融危機になっていきます。

重要な注)次回の米国不良債権の増加には、米ドルの基軸通貨としてのポジションの低下が伴います。

そのときは、リーマン危機並みのドル安/円高(34%の円高)に戻る可能性が高くなるでしょう(2008年:1ドル≒106円・・・2012年は1ドル≒80円)。

為替を決める要因は多要素です。どの指標が通貨投資家に重視されるかによって、レートが短期に変動します。現在は、日本の貿易赤字と日米の金利差です。

一方で、長期的な通貨レ-トは、各国の経常収支と、マネタリーベースの比較で決まって行きます。中央銀行によって増発される度合(ソロスチャート)の大きな通貨が、下がるのです。

なおドルの実効レートが高い間は「ドルの反通貨である金価格」は弱含みになります。金が高騰するのは、米ドルが下落したときです。

これから数年のスパンでいえば、経常収支が構造的な赤字を拡大しているドルは、急落するでしょう(2022年は、歴史上最大の、8,778億ドル(124兆円)の赤字です)。米ドルの暴落は、インフレが収まり、ドル金利が下がる2024年に迫っているかもしれない。

米国の経常収支の赤字は、対外的なドルの増発(銀行の信用創造)でファイナンスするしかないからです。
参考:アメリカの経常収支の推移-世界の経済ネタ帳

円安から避難するならスイスフラン

長期的には、円安からのドルへの避難より、経常収支が構造的な黒字のスイスフランが推奨できます(GDP比6.3%という大きな黒字:2022年)。

スイスフランの金利は、インフレ対応の0.5%の利上げ後も、マイナス0.25%と、日本より低い。金利の逆に、預金手数料を徴収されます。ところが世界の富裕者マネーはスイスフランに集まっています。

ロシア・中国からも、スイスフラン買いが多い。他方、日本からのスイスフラン買いは少ない(ゼロに近い)。分散投資されるべき金融資産(預金)のポートフォリオでは、日本人は円に集中しすぎです。世界市民として、円建て50%、外貨建て50%でなければならない。

スイスフランが長期的に強い原因は、スイスの経常収支(所得収支+貿易収支)の黒字が続くことです。物価は、世界1高い。スーパー(ミグロ)で、少しの食品を買っても1万円を超えます。世帯所得も世界1(平均世帯年収1400万円:日本は552万円(中央値は437万円):2018年)。

日本は、今後、GDPで一回り大きなスイスを、目指さねばならない。技術資源と高い品質への価値観は残っています。残念ですが、MMTにより約10年、信用通貨の隘路に嵌まっていました。

米国政府・FRBは、日本の銀行にドル国債、債券、株を買わせるために、円安になる日銀のMMTを推奨してきたのです。2011年以降は円安になると輸出は増えず、ドル買いが増えるからです。

経常収支の赤字が約1兆ドルのドルが、なぜ高いのか?

経常収支が構造的に赤字のドルは、海外からのファイナンス(=ドル買い)が必要な通貨です。米国にとって、円安にしてドル買いを促すMMT(国債のマネタイゼーション)は、最適な通貨政策でした。
(注)MMTには増発した通貨のレートが下がる外為論(ソロスチャート)が欠落しています。

経常収支の黒字(2,497億ドル=35兆円:2022年)が、中国(2,133億ドル)より大きくても、ドイツは、ドル国債買いはしません。ドルは、赤字国の通貨であり、いずれは暴落する時期が来ると知っているからです。

海外からの買いによって、米ドルのレートが支えられています。海外からの買いがなくなって、FRB が放置すれば米ドルは8,778億ドル(125兆円:2022年)の赤字である経常収支がバランスするまで、下がります(輸出価格低下で資源が輸出増になるまで)。

2012年からドル高になっているのは、経常収支の赤字以上の、海外からのドル買いの超過(国債、債券、株の買い)があるからです。国で言えば、中国、日本、産油国、ユーロのドル買いです。

1970年から50年間、騰落を繰り返して下がって来たドルの実効レートのグラフパターンから、2024年からのドル安が予想できます。以下のグリーンのグラフが、ドルの実効レート:平均12年で、ピークアウトしています。
参考:実効為替レートの推移(日本・米国・ユーロ圏・中国)-社会実情データ図録

米国を破産させるのに、核兵器は要らない。金融戦争として世界がドル買いをやめ、手持ちのドル国債、債券、株を売ればいい。

米国の軍事費(財政支出で8,000億ドル:113兆円=日本の一般会計(110兆円)と同じ金額)は、海外がファイナンスしているのです。

ローマ帝国末期に類似している米国

米国の軍産医薬共同体、CIA、及びNY連銀が君主であるウォール街の金融共同体は、このことを、知っています。

海外が米ドルをファイナンス(=ドル買い)しないと、古代ローマ帝国の没落のようになっていくのが、1990年以降の金融のローマ帝国を作ってきた米国です。

ローマ帝国は、周辺国からの徴税が減り、財政予算(王の予算)が組めなくなり、軍事と公共事業ができなくなって滅びました。

海外からのドル国債・債券・株の買いは、通貨が金貨だったローマ帝国の徴税に当たります。政府が、信用通貨の国債を発行するのは、政府の債務に形を変えた、徴税です。政府が「未来の税収」から借りることです。国債の純償還(借換債の発行停止)が負債の返済です。

世界が、純額で1年1兆ドル(142兆円)のドル買いの超過を止めると、国債が売れ残る米国の金利は高騰し(既発国債と債券価格は下落)、株価は下がって、経常収支が赤字の米国政府は、連邦予算が組めなくなるのです。
(注)米国の財政赤字は、経常収支の赤字と同じ金額の1兆ドル(142兆円)です。

ドル暴落はいつ始まるのか?

その時期は、ドル暴落のときです。概略の予想では、ドル高になった2012年から12年目の2024年から、暴落が始まります。あと2年2024年までは上がり(または維持し)、2024年の140でピークアウトする。

底値は、ドルの実効レートの下限を結んで延長した80付近(2030年)でしょう。
(注)ドル実効レートの底値は、1978年110→1990年100→2012年95…2030年80付近。

ピーク140からの下落ですから、マイナス43%でしょう。中国、日本、ユーロ、産油国のドルの売り超、つまり下落が明確になった2026年頃には、ドル通貨圏の協調によるドルのリセット(第二のプラザ合意)があるかもしれません。

米ドルを基軸通貨(他の外貨にするときの媒介通貨)と決めているのは、米国FRBではない。ドルを買って使う、西側と中国の外為銀行です。日本、中国、ユーロ、産油国の銀行が米ドルを買わないと、ドルは基軸通貨ではありえないのです。

金価格、高騰の時期

金価格は、ドルの実効レートが暴落するとき、1980年のように買いが殺到して多分数倍の高騰をします。過去の金の高騰は、1980年(イラン革命=第二次石油危機)、次は、1998年以降の12年間でした。世界の中央銀行の、準備通貨としての金買いの超過によるものです。

4大通貨の、実効レートを1時間くらい眺め、経常収支とマネタリーベースのデータと合わせて、レートの長期変動の原因を考えた人は稀でしょう。ジョージ・ソロスくらいか──

続きはご購読ください。初月無料です。
 

貼り付け終わり、